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「お嬢様、おはようございます」
「おはよう・・・」
昨日は侍女からマッサージを受け、疲れていたせいか寝落ちしてしまった。
長く感じた旅も今日で終わりだ、やっとシェドの王都に到着する。
「ウエンは待っていてくれているかしら」
思わず言葉が声に出てしまった。
「ああ、王宮の正門にまで迎えに来そうな勢いだと思うよ」
部屋に入ってきたのはミカエルだ。
「あら珍しいわね・・・ワイアット様は」
「え、えっと。アイツは早朝にシェドに向かった」
ワイアット様は私の身の安全とシェド側の代表としてウエンが寄越した人物だが、本来は王宮の近衛兵隊長を務めている。お礼も言えなかったな、なんて思いながら宿の1階にある食堂に向かった。
「何あれ?」
食堂に向かうと、やけに目立つ集団が朝食を食べていた。花の妖精に扮した衣装に、獅子や鹿の被り物をかぶっている男性もいる。それにあれは、海賊船の船長だろうか。コンセプトがめちゃくちゃだ。
「あっ、お嬢様!」
ボディーペイントや派手な化粧で気づかなかったが、よく見るとうちの従業員ではないか。
「・・・な、何をしているの?」
「これ、みんなで夜中に準備したんです。はい、お嬢様の衣装です」
「・・・・・・」
これは妖精の国の女王様?今日のために用意をしたシンプルなドレスはどこにいたのか、レースが増やされ派手ではないが十分に目立つ。それに頭に飾る花や手に持つ杖まで渡された。
「これなら、レイシャルお嬢様のイメージにぴったりですね!」
アンネッタが嬉しそうに受け取ると部屋に戻って行った。
(あーーーー!いらんことを言い過ぎたか)
昨日話をしているときに『妖精ってなんです?』『妖精は何を着ているのです?』とやたら食いつきがいいと思った。私もみんなに会えてテンションが高かったせいか、聞かれるままにベラベラしゃべっていた気がする。
「パレードのコンセプトはオズの魔法使いです」
(はあ、全部ごちゃごちゃになっている)
***
「では、王都に向けて出発です!」
先頭を走る馬車が動き出した。
泊まった宿で支払いを済ませていると、私を見てうっとりしていた女性たちが『こんなに近くでパレードの方を見れて感動です』と喜んでいたし、『いい宣伝になります。次回は割引をするのでぜひうちをご贔屓に』と亭主も売り込みを忘れていなかった。
(完全にパレードの人になってるけど)
衣装に着替えて外に出ると、誰が作ったのか馬車の屋根にお立ち台?ができていた。護衛役のミカエルも一緒に台に立つと馬車が動き出した。
「ミカエル・・・王都が混乱しないかしら?」
「ああ、不味いな・・・でもワイアットがウエン王子に知らせに行ったから警備でも増やすだろう」
「ただでさえ迷惑をかけているのに、合わせる顔がないわ・・・」
「そこは気にするな。それより俺の格好に何か言うことはないのか」
「えっ?何が」
「俺の格好だよ!おかしいだろ、なんで俺だけ女装なんだ!」
ミカエルは不思議の国のアリスの衣装だった。整った顔立ちのせいか、どこから見ても可愛い女の子だ。
「いいえ、そんなことより私たちが最後よね。全員無事なのかしら」
「さらっと、流しやがったな・・・。無事だよ、名簿で到着を確認している」
王都に入るとき検問の騎士達が、何事かと集まって来たけど私がいると聞くと快く通してくれた。王都に入れば街の人は興味津々に、私たちを見ている。
最初は馬車が珍しのか驚いていたけど、それ以上に私たちの衣装を見て目を丸くしていた。従業員が用意したお菓子や果物を配り始めると、噂を聞きつけ更に人が集まる。
集まった群衆を見ると、もう街中の人がここにいるのではないかと思うほどだ。
「王宮までまだ距離があるわね・・・」
「おう、笑顔で顔が引きつりそうだ」
ゴールは丘の上に建つ王宮だ。この速度だといつ着くことやら・・・。
私は笑顔で手を振っているけど、予告もなしにこんなことを始めてウエンに怒られないか少々不安だ。
馬車の上から見るシェドの街は異国情緒に溢れ、子供の頃に記憶している街の光景そのままだ。ウエンと一緒に食べたパイナップル屋さんも残っていた。
(懐かしいわね・・・)
それにしても一晩で良くここまで準備したものだ。
疲れているはずの従業員達が、プレゼントを配ったり、演奏をしたり忙しそうに走り回っている。みんな疲れを感じさせない笑顔だ。
それに、生産者への餞別代りにいつもより多く仕入れをしたことも役に立った。ダンの言う通り腐らせて廃棄するより、街の人にもらってもらう方がよっぽどいい。
シェドの子供たちが楽しそうに音楽に合わせて踊っている姿に、思わず笑顔がこぼれる。
連絡を受け駆け付けた到着組の従業員が手伝い始めるとプレゼントを渡す効率が上がり、いろいろな場所で歓声が上がっていた。
パレードは最高の盛り上がりをみせている。
「これがきっかけで、私たちとシェドの人々と新たなつながりができればといいわね」
「ああ、そうだな」
恰好つけたセリフを言ってみたが、さきほどからお腹の虫が鳴っている。上手く群衆の声でかき消されているが、お腹の音を聞いてミカエルが呆れた顔をしていた。
「お腹が空いた・・・」
獅子の被り物をかぶったサマリが、景気づけにまとめてお菓子をばらまいたのでまた大きな歓声があった。レイシャルの声は誰にも聞こえていなかった。
(パレードが終わったら、1週間は休みたいわね)
王宮がすぐそこに見えている。もうすぐウエンに会える。
「おはよう・・・」
昨日は侍女からマッサージを受け、疲れていたせいか寝落ちしてしまった。
長く感じた旅も今日で終わりだ、やっとシェドの王都に到着する。
「ウエンは待っていてくれているかしら」
思わず言葉が声に出てしまった。
「ああ、王宮の正門にまで迎えに来そうな勢いだと思うよ」
部屋に入ってきたのはミカエルだ。
「あら珍しいわね・・・ワイアット様は」
「え、えっと。アイツは早朝にシェドに向かった」
ワイアット様は私の身の安全とシェド側の代表としてウエンが寄越した人物だが、本来は王宮の近衛兵隊長を務めている。お礼も言えなかったな、なんて思いながら宿の1階にある食堂に向かった。
「何あれ?」
食堂に向かうと、やけに目立つ集団が朝食を食べていた。花の妖精に扮した衣装に、獅子や鹿の被り物をかぶっている男性もいる。それにあれは、海賊船の船長だろうか。コンセプトがめちゃくちゃだ。
「あっ、お嬢様!」
ボディーペイントや派手な化粧で気づかなかったが、よく見るとうちの従業員ではないか。
「・・・な、何をしているの?」
「これ、みんなで夜中に準備したんです。はい、お嬢様の衣装です」
「・・・・・・」
これは妖精の国の女王様?今日のために用意をしたシンプルなドレスはどこにいたのか、レースが増やされ派手ではないが十分に目立つ。それに頭に飾る花や手に持つ杖まで渡された。
「これなら、レイシャルお嬢様のイメージにぴったりですね!」
アンネッタが嬉しそうに受け取ると部屋に戻って行った。
(あーーーー!いらんことを言い過ぎたか)
昨日話をしているときに『妖精ってなんです?』『妖精は何を着ているのです?』とやたら食いつきがいいと思った。私もみんなに会えてテンションが高かったせいか、聞かれるままにベラベラしゃべっていた気がする。
「パレードのコンセプトはオズの魔法使いです」
(はあ、全部ごちゃごちゃになっている)
***
「では、王都に向けて出発です!」
先頭を走る馬車が動き出した。
泊まった宿で支払いを済ませていると、私を見てうっとりしていた女性たちが『こんなに近くでパレードの方を見れて感動です』と喜んでいたし、『いい宣伝になります。次回は割引をするのでぜひうちをご贔屓に』と亭主も売り込みを忘れていなかった。
(完全にパレードの人になってるけど)
衣装に着替えて外に出ると、誰が作ったのか馬車の屋根にお立ち台?ができていた。護衛役のミカエルも一緒に台に立つと馬車が動き出した。
「ミカエル・・・王都が混乱しないかしら?」
「ああ、不味いな・・・でもワイアットがウエン王子に知らせに行ったから警備でも増やすだろう」
「ただでさえ迷惑をかけているのに、合わせる顔がないわ・・・」
「そこは気にするな。それより俺の格好に何か言うことはないのか」
「えっ?何が」
「俺の格好だよ!おかしいだろ、なんで俺だけ女装なんだ!」
ミカエルは不思議の国のアリスの衣装だった。整った顔立ちのせいか、どこから見ても可愛い女の子だ。
「いいえ、そんなことより私たちが最後よね。全員無事なのかしら」
「さらっと、流しやがったな・・・。無事だよ、名簿で到着を確認している」
王都に入るとき検問の騎士達が、何事かと集まって来たけど私がいると聞くと快く通してくれた。王都に入れば街の人は興味津々に、私たちを見ている。
最初は馬車が珍しのか驚いていたけど、それ以上に私たちの衣装を見て目を丸くしていた。従業員が用意したお菓子や果物を配り始めると、噂を聞きつけ更に人が集まる。
集まった群衆を見ると、もう街中の人がここにいるのではないかと思うほどだ。
「王宮までまだ距離があるわね・・・」
「おう、笑顔で顔が引きつりそうだ」
ゴールは丘の上に建つ王宮だ。この速度だといつ着くことやら・・・。
私は笑顔で手を振っているけど、予告もなしにこんなことを始めてウエンに怒られないか少々不安だ。
馬車の上から見るシェドの街は異国情緒に溢れ、子供の頃に記憶している街の光景そのままだ。ウエンと一緒に食べたパイナップル屋さんも残っていた。
(懐かしいわね・・・)
それにしても一晩で良くここまで準備したものだ。
疲れているはずの従業員達が、プレゼントを配ったり、演奏をしたり忙しそうに走り回っている。みんな疲れを感じさせない笑顔だ。
それに、生産者への餞別代りにいつもより多く仕入れをしたことも役に立った。ダンの言う通り腐らせて廃棄するより、街の人にもらってもらう方がよっぽどいい。
シェドの子供たちが楽しそうに音楽に合わせて踊っている姿に、思わず笑顔がこぼれる。
連絡を受け駆け付けた到着組の従業員が手伝い始めるとプレゼントを渡す効率が上がり、いろいろな場所で歓声が上がっていた。
パレードは最高の盛り上がりをみせている。
「これがきっかけで、私たちとシェドの人々と新たなつながりができればといいわね」
「ああ、そうだな」
恰好つけたセリフを言ってみたが、さきほどからお腹の虫が鳴っている。上手く群衆の声でかき消されているが、お腹の音を聞いてミカエルが呆れた顔をしていた。
「お腹が空いた・・・」
獅子の被り物をかぶったサマリが、景気づけにまとめてお菓子をばらまいたのでまた大きな歓声があった。レイシャルの声は誰にも聞こえていなかった。
(パレードが終わったら、1週間は休みたいわね)
王宮がすぐそこに見えている。もうすぐウエンに会える。
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