婚約破棄されることは事前に知っていました~悪役令嬢が選んだのは~

haaaaaaaaa

文字の大きさ
90 / 98

82

しおりを挟む
国民の胃袋が先だと判断したスザン王子だったが、王宮の料理も少しずつ改善されつつある。今日は今までになかった前菜が付いたのだ。誇らしそうに前菜を見つめる王子にアンヌも満足したように口を開いた。

「随分王子らしくなってきましたね」

話しかけられ顔をあげたスザン王子は、もうアンヌを睨むこともない。

「ああ、アンヌの教育が良かったのだろう。流石にこの年でお尻を叩かれたときには驚いたがな」

「言っても分からない人間は何歳でもお尻叩きの刑です。100回まで叩くつもりでしたが、余りにも必死にシャルル様がお止めになるので諦めましたけど。王子はいい部下をお持ちですね」

「そうだな。私が未熟なせいで散々苦労させたからな」

「いえ。私がお止めする役目だったのに自分を過信し、王子の立場を悪くさせたのです。これぐらいのことは苦労とは言えません」

「ふっふっふ。今のおふたりならもう道を外すことはないでしょう」

親として教えるべきものを教えてこなかった陛下も大いに反省しているが、一番喜んでいるのも陛下だろう。嬉しそうに3人の会話を聞いている。

「それでシェドへは誰が行くのか決まったのですか?」

1カ月後のレイシャルとウエン王子の結婚式が迫っていた。

「色々考えたがせっかくの結婚式に、ミリュー王族が顔を出せば台無しになるだろう。彼方もそれを心配していると思う。そこで私の願いを聞いて欲しい」

「願い?」

「ああ、アンヌが代行として行ってもらえないだろうか?」

「私がですか?」

「初めての国に突然行けと言われて戸惑うだろうが、私が信頼している其方に使者として親書を持って行って欲しいと思っている。願いを聞いてもらえないだろうか?」

「それは面白いですわね。実はあの国に知り合いがいるので、丁度いいかもしれませんね。息子をお供に連れて行ってもいいでしょうか?」

「子供がいるのか?アンヌは一体何歳なのだ」

「まあ、女性に年を聞くものではありませんよ」

「あっ、すまない。余りにも細いので子供を産んだ女性には見えなくてな」

「それは誉め言葉として取っておきましょう」

「陛下もそれでいいですね?」

「ああ、もちろんだ」

「それで母上はまだ起きれないのですか?」

王妃が普段座る椅子を見てスザン王子が質問すると、陛下も空き席を見てため息をついた。

「ああ、アンヌの尻叩きが効いているようだ、100回も叩かれたのだからな」

王妃は税金が集まりだすと勝手に馴染の業者を呼んでドレスを新調しようとしていたのをアンヌに見つかり、100叩きの刑を味わったのだ。

『王族に手を挙げれば死刑よ』と騒いでいたが、誰も王妃をかばってくれなかったようだ。お尻が焼けたように熱いと昨日から部屋に籠っている。

「私は25回でも相当きつかったですからね。100回は想像しただけで恐ろしい」

「わしは48回で済んだが、当面椅子に座れなかったからな」

スザン王子は癇癪で物を投げて、陛下は夜中にキッチンに忍び込んで食材を漁っているところを見つかった。お尻を叩くアンヌは容赦がなかった。あの細い腕でどうやってそこまで力が出るのか不思議でたまらないと首を傾ける。

未だに状況が理解できない王妃にふたりはため息をつく。

(以前まで全く同じことをやっていたに少しは成長したようね。それにしてもこのタイミングでシェドに行くとは思わなかったわね。この機会にキースのことも片付けてしまいしょう)
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

離宮に隠されるお妃様

agapē【アガペー】
恋愛
私の妃にならないか? 侯爵令嬢であるローゼリアには、婚約者がいた。第一王子のライモンド。ある日、呼び出しを受け向かった先には、女性を膝に乗せ、仲睦まじい様子のライモンドがいた。 「何故呼ばれたか・・・わかるな?」 「何故・・・理由は存じませんが」 「毎日勉強ばかりしているのに頭が悪いのだな」 ローゼリアはライモンドから婚約破棄を言い渡される。 『私の妃にならないか?妻としての役割は求めない。少しばかり政務を手伝ってくれると助かるが、後は離宮でゆっくり過ごしてくれればいい』 愛し愛される関係。そんな幸せは夢物語と諦め、ローゼリアは離宮に隠されるお妃様となった。

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

虫ケラ扱いの男爵令嬢でしたが、牧草風呂に入って人生が変わりました〜公爵令息とはじめる人生の調香〜

もちもちしっぽ
恋愛
男爵令嬢フレッチェは、父を亡くして以来、継母と義妹に粗末に扱われてきた。 ろくな食事も与えられず、裏庭の木の実を摘み、花の蜜を吸って飢えをしのぐ日々。 そんな彼女を、継母たちは虫ケラと嘲る。 それでもフレッチェの慰めは、母が遺してくれた香水瓶の蓋を開け、微かに残る香りを嗅ぐことだった。 「あなただけの幸せを感じる香りを見つけなさい」 その言葉を胸に生きていた彼女に、転機は突然訪れる。 公爵家が四人の子息の花嫁探しのために催した夜会で、フレッチェは一人の青年に出会い、一夜をともにするが――。 ※香水の作り方は中世ヨーロッパをモデルにした魔法ありのふんわり設定です。 ※登場する植物の名称には、一部創作が含まれます。

処理中です...