契約に失敗した俺は……。

ど~はん

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47.相手は……

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「ねぇ…………真希……私だよ?」

俯いて言った沙夜の声は、震えていた。
震えでも、それは恐怖や怒りなどの感情が混じったものだった。

「無理ですよ、沙夜。あなたも気づいているはずですよ。」

「わ……わがってるわぁよ…………。けど……けどっ!」

真希から黒いオーラが出始めた時に、沙夜はもうすでに気づいていた。
最悪な展開になると……。

幸田たちはこんな事になるなんて、作戦の時点では考えもしていなかった。

「沙夜……、遊ぼう?」

「真希っ、相手が違うって!」

そんな沙夜の言葉は届くはずもなく……。

『オマエタチハ、ワレワレノテキ。コロス。』

サタナエルは強者ばけものに変わっていた……。

真っ赤に輝く2つの目。
ドラゴンのような大きく鋭い翼。
そう簡単には折れそうにない太く長い角が2本。
斬り刻まれそうに鋭い爪。
牙を見せる口からは、呼吸似合わせて息が白く広がる。

それを視界に入れたブリュンヒルデは……、

「北欧神話  ワルキューレの一角、

名はブリュンヒルデ、

神聖なる槍よ、

進むべき道をその先に示せ!」

そう唱える。
すると伸ばした右手に、周辺から姿を表した光が集まり始めた。
その光は一本の長い槍を作った。

「制裁の槍……。」

ブリュンヒルデは、その槍をそう名付けた。

「ブリュン……ヒルデ?」

契約者の沙夜でさえも、その槍を見るのは初めてのようだ。

「本当は……使いたくは……なかったのですが。」

制裁の槍を握る右手は震えていた。



場面は真姫の方へ。

「あっははっはははは!面白いわねぇ。友人同士の殺し会い、いいわねぇ~。」

沙夜と真希の事を見て、真姫は笑っていた。

「さぁ、あんたの相手は俺だ。」

真姫を止めるのは元航空自衛隊 一等空佐 仲部。

「あなたが私の相手……ですって?…………、死んでも知らないわよ。」

そんな仲部の言葉に、先ほどの笑顔とは一転、冷たい声でそう返した真姫。

「サハクィエル……。」

仲部はサハクィエルにそう言った。

「はい、わかりました。」

その言葉だけで通じるくらいに、噛み合っているのか……作戦を立てていたのかは定かではないが、
サハクィエルは【真実を射抜く弓矢】を構えた。

「あ~、怖い怖い。いきなりそんなの構えられてもねぇ~。逃げよっ!」

真姫はそう言って、仲部とサハクィエルから距離を取り始めた。

「ふっ……。」

仲部はそれをすぐには追わなかった。
その理由は……、

「忘れてもらっては困るな。お前の相手は俺とサハクィエルだけじゃない。少なくとも元一等空佐だぞ?」

「なっ!」

真希が気づいた。

「アズラーイール!」

咄嗟にそう叫ぶ真姫。

「さすが、頼りになる奴らだぜ。」

そう言った仲部の視線の先にあるのは、

「くっ!!」

大きな破裂音に衝撃。
黒い煙と赤い閃光に包まれた真姫とアズラーイールだった。

『現地に到着。目標に被弾した模様。』

真姫の敵は仲部とサハクィエルの他に、

『こちら陸上自衛隊。救援到着、目標に被弾を確認。』

航空自衛隊と陸上自衛隊も相手だったのだ。
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