軽音部の恋物語は音を奏でるだけでは成立しない?

ど~はん

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6.強弱

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あれから次の日―。

放課後の音楽室には、今日も音色が響く。

「ちょっと待ったぁ~」

ピアノが美しく広がるイントロ部分が終わり、Aメロに入ってボーカリストである千瀬が演奏を止めた。

「どうした?」

「成羽、イントロ部分はそれでいいけど、Aメロ入ったら少し優しく弾いてもらえる?」

千瀬が指摘したのは、
イントロ部分はピアノメインなため問題ないが、Aメロ部分に入ると、この曲はボーカリストの優しくかつ美しい声の広がりが重視された曲。
マイクは使っているものの、優しく美しい歌声を響かせるには、アップテンポとは違い、控えめな声量で歌うことになる。
なのでAメロ部分でキーボーディストが目立ってしまっては、ボーカリストがピアノに負けてしまう可能があるのだ。

男性がピアノを弾くと、元々手の力が強いこともあり、ドラムやギターなどがいる場においては、それらに負けずに音を届けることができる。

だが、この場はキーボーディストとボーカリスト。
しかもアップテンポではないスローテンポの曲である。
そして成羽は、今までアップテンポを主として弾いてきている。

自然と強く弾いてしまっているのは、無理もない。

「ではもう一度…。えーと、最初からいきましょうか」

成羽は再びイントロを弾く。

ピアノの鍵盤を押すのは力強い。
でも、そこから作り出される音はひとつひとつが絡み合い、美しい音色を奏でる。

そしてAメロ。

ここからはボーカリストが交代でメインとなり、優しく美しい歌声を聴くものに届ける、

のだが………。

「ストーーップ!」

6小節ほどいったところだろうか。
再び千瀬が演奏を止めた。

「えーとさ、確かに弱くって言ったけど限度があるでしょ~」
 
今度は先ほどとは逆。

弱いことを意識しすぎて、弱くなりすぎていた。

「これは弱すぎ!?」

「弱すぎ」

歌詞と歌詞の間を、この場合は指定がない限り曲を途切れさせずに繋いでいくのは紛れもなくキーボーディスト。

しかし、今の成羽は弱くなりすぎてしまい、聴き手側歌詞と歌詞の間が物足りないという曲になってしまっている。
スローテンポの曲は、簡単に言うとすべてゆっくりな流れで構成されているため、その強弱と、ボーカリストとスムーズにバトンを繋ぐことが重要である。

「このくらい?」

「もう少し大きく」

「こう?」

「それは大きい。少し小さく」

「難しい!」

練習は日没寸前まで続いたのだった―。
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