7 / 21
6.強弱
しおりを挟む
あれから次の日―。
放課後の音楽室には、今日も音色が響く。
「ちょっと待ったぁ~」
ピアノが美しく広がるイントロ部分が終わり、Aメロに入ってボーカリストである千瀬が演奏を止めた。
「どうした?」
「成羽、イントロ部分はそれでいいけど、Aメロ入ったら少し優しく弾いてもらえる?」
千瀬が指摘したのは、
イントロ部分はピアノメインなため問題ないが、Aメロ部分に入ると、この曲はボーカリストの優しくかつ美しい声の広がりが重視された曲。
マイクは使っているものの、優しく美しい歌声を響かせるには、アップテンポとは違い、控えめな声量で歌うことになる。
なのでAメロ部分でキーボーディストが目立ってしまっては、ボーカリストがピアノに負けてしまう可能があるのだ。
男性がピアノを弾くと、元々手の力が強いこともあり、ドラムやギターなどがいる場においては、それらに負けずに音を届けることができる。
だが、この場はキーボーディストとボーカリスト。
しかもアップテンポではないスローテンポの曲である。
そして成羽は、今までアップテンポを主として弾いてきている。
自然と強く弾いてしまっているのは、無理もない。
「ではもう一度…。えーと、最初からいきましょうか」
成羽は再びイントロを弾く。
ピアノの鍵盤を押すのは力強い。
でも、そこから作り出される音はひとつひとつが絡み合い、美しい音色を奏でる。
そしてAメロ。
ここからはボーカリストが交代でメインとなり、優しく美しい歌声を聴くものに届ける、
のだが………。
「ストーーップ!」
6小節ほどいったところだろうか。
再び千瀬が演奏を止めた。
「えーとさ、確かに弱くって言ったけど限度があるでしょ~」
今度は先ほどとは逆。
弱いことを意識しすぎて、弱くなりすぎていた。
「これは弱すぎ!?」
「弱すぎ」
歌詞と歌詞の間を、この場合は指定がない限り曲を途切れさせずに繋いでいくのは紛れもなくキーボーディスト。
しかし、今の成羽は弱くなりすぎてしまい、聴き手側歌詞と歌詞の間が物足りないという曲になってしまっている。
スローテンポの曲は、簡単に言うとすべてゆっくりな流れで構成されているため、その強弱と、ボーカリストとスムーズにバトンを繋ぐことが重要である。
「このくらい?」
「もう少し大きく」
「こう?」
「それは大きい。少し小さく」
「難しい!」
練習は日没寸前まで続いたのだった―。
放課後の音楽室には、今日も音色が響く。
「ちょっと待ったぁ~」
ピアノが美しく広がるイントロ部分が終わり、Aメロに入ってボーカリストである千瀬が演奏を止めた。
「どうした?」
「成羽、イントロ部分はそれでいいけど、Aメロ入ったら少し優しく弾いてもらえる?」
千瀬が指摘したのは、
イントロ部分はピアノメインなため問題ないが、Aメロ部分に入ると、この曲はボーカリストの優しくかつ美しい声の広がりが重視された曲。
マイクは使っているものの、優しく美しい歌声を響かせるには、アップテンポとは違い、控えめな声量で歌うことになる。
なのでAメロ部分でキーボーディストが目立ってしまっては、ボーカリストがピアノに負けてしまう可能があるのだ。
男性がピアノを弾くと、元々手の力が強いこともあり、ドラムやギターなどがいる場においては、それらに負けずに音を届けることができる。
だが、この場はキーボーディストとボーカリスト。
しかもアップテンポではないスローテンポの曲である。
そして成羽は、今までアップテンポを主として弾いてきている。
自然と強く弾いてしまっているのは、無理もない。
「ではもう一度…。えーと、最初からいきましょうか」
成羽は再びイントロを弾く。
ピアノの鍵盤を押すのは力強い。
でも、そこから作り出される音はひとつひとつが絡み合い、美しい音色を奏でる。
そしてAメロ。
ここからはボーカリストが交代でメインとなり、優しく美しい歌声を聴くものに届ける、
のだが………。
「ストーーップ!」
6小節ほどいったところだろうか。
再び千瀬が演奏を止めた。
「えーとさ、確かに弱くって言ったけど限度があるでしょ~」
今度は先ほどとは逆。
弱いことを意識しすぎて、弱くなりすぎていた。
「これは弱すぎ!?」
「弱すぎ」
歌詞と歌詞の間を、この場合は指定がない限り曲を途切れさせずに繋いでいくのは紛れもなくキーボーディスト。
しかし、今の成羽は弱くなりすぎてしまい、聴き手側歌詞と歌詞の間が物足りないという曲になってしまっている。
スローテンポの曲は、簡単に言うとすべてゆっくりな流れで構成されているため、その強弱と、ボーカリストとスムーズにバトンを繋ぐことが重要である。
「このくらい?」
「もう少し大きく」
「こう?」
「それは大きい。少し小さく」
「難しい!」
練習は日没寸前まで続いたのだった―。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる