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第一章
閑話sideアリス
しおりを挟むようやく出会えたわね、エミリー。私のお助けキャラ。
屋台に並ぶエミリーを私は見つけた。
私、アリス=ステューシーは転生者である。転生だと気づいたのは半年ほど前だ。気づいてからの私の行動は早いものだった。まず私があの方と出会うために、私はエミリーと仲良くならなくちゃいけなかった。
転生を自覚する前からもエミリーのことを私は知っていた。エミリーはよく『お忍び』と称してこの町へ訪れていた。だが、分かるのだ。エミリーから漂う気品で。庶民にしては全体的に小綺麗で、泥がついている日もあったが、わざと付けたことくらい私たちには分かる。それでも私たちがエミリーに何も言わなかったのは、領主様の娘であることもあったが、エミリーの人柄の良さに惚れ込んだからといっても過言ではない。
だから私もすぐにエミリーとは仲良くなれると思った。
なのに…。
ある日を境にエミリーはこの町へは来なくなった。噂によると怪我をしてしまい、療養中なのだそうだ。心配したが、私にはどうにもできない。次に会えるのは15歳だ。その日まで待つしかないのだろうか。
そんなふうに私は諦めていた。だが、私は今日見つけたのだ。いつもの庶民服ではなく、綺麗なドレスを着ていたが、間違いなくエミリーだった。
もしかしたら、エミリーに接触できるのはこの日が最後かもしれない。なんとなくそう思った私はエミリーに近づこうとした。
「あ、アルフレッド!?」
エミリーの隣にいる人物をみて、思わず名前を呼んでしまった。アルフレッドがその声に反応したのかキョロキョロと辺りを見渡している。
嘘でしょ、少なくとも50メートル以上は離れてのに…。それにしても何でアルフレッド?アルフレッドは確かにフォンテーヌ家にいるけど、なんで一緒にいるの?
「ヒッ…」
少し近づいて、アルフレッドから醸し出される殺気に思わず小さく悲鳴がでた。エミリーはあれを隣で感じて何も思わないのだろうか。なんでアルフレッドは、あんなことになってるんだ。元はと言えば総受けのはずでしょ?なんで人ひとり殺したことがありそうな雰囲気なんだよ。
その後も近づこうとするたびにアルフレッドが殺気を出すものだから、私は近づけなかった。
二人がサーカスの方へ行ったので、私は作戦をねることにする。優しいエミリーが少しでも私に目を向けてくれたらいいのだ。そうすれば、きっと私とエミリーは仲良くなれる、はずなんだけど…。アルフレッドの様子をみて私は自信をなくしていた。この世界はゲームの世界だと思っていたのだ。けれどもしかしたらここは、似ているだけの世界なのだろうか…。だとしたら、私に勝ち目がないような…。
こうなったら、と私はりんごを買った。そしてそのりんごをエミリーの足元に放り投げた。案の定、優しいエミリーはのりんごを拾ってくれたのだ。
「すみませーん!」
エミリーの瞳が、私を映す。隣にいるアルフレッドの殺気が尋常ではないレベルで膨れているが、私はもう気にしない。とにかく、エミリーと仲良くならなくては。
___________________
エミリーと仲良くなり、私は満足してエミリーが拭いてくれたりんごをかじる。総受けアルフレッドがなぁ、あんな風になるのかぁ。私はしみじみとアルフレッドのことを考えていた。
私の知るアルフレッドは、やはり総受けなのだ。あんな殺気の出せる子ではない。はあ、転生する前は、アルフレッドでたくさんの同人誌を書いてたんだよね。もう今さら攻めなんてずるすぎるよ。
そういえば、仲が良くなったあの子にも同人書いてるって言ってなかったなぁ。あの日、本当はそれを打ち明けようと思ってたのに私死んじゃったしなぁ。
しゃくり、と音を立ててりんごをかじる。
私はふと、違和感のようなものを感じて、もう一度エミリーに出会うまでのことを振り返る。その違和感は、私の中でストンと落ち、あるひとつの可能性を示した。
アルフレッドは、もしかしてーーー……。
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