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第二章
新たな攻略対象1
しおりを挟む楽しい楽しい休日も終わり、私はといえばげんなりした顔をしながら学校へ向かっていた。
また学校が始まってしまう。ラルクやユリウス以外の攻略対象に出会ってしまうかもしれないのだ。
はぁと小さくため息をつく。
「エミー様?」
私と二人きりの時だけ私のことを愛称で呼ぶようになったアルが、ため息をついた私を心配し顔をのぞき込む。
「うーん、少し私の中でまとめる必要があると思ったのよね」
「…?お手伝いは必要でしょうか?」
「その時はまたお願いするわ」
「左様でございますか、その時がきたら私はエミー様を全力でお支え致します」
アルにありがとう、と伝え私は少し目を閉じた。
まずはあれよね。
攻略対象たちの情報を整理しないといけないわ。
_________________
まずゲーム内の1番人気は、この国の第二王子アーサーね。
この国の王位継承権は、国王が優秀だと思った者に与えられるからアーサーも王位継承権は持っているの。またこの王子、完璧なのよ。頭脳明晰で剣術も最たるものをもってる。文武両道男。でも性格は最悪。女は『来る者拒まず、去るもの追わず』の精神のお持ちで、毎日女を取っかえ引っ変え。確かに容姿は、金髪に赤い瞳でものすごく色っぽい男なんだけど、超のつく俺様なのだ。
シナリオとしては、アルをいじめて(女みてーな奴だな、とか言ってて私には腐的なものにみえた。ごめんね、アル)いたところをアリスが割って入って、あまりに普通の女と違うアリスに対して「おもしれー女」となるような感じだった。
だけど、アルがこうなった以上いつどこで出会うか分からないからな。まあ私に実害はないし、アリスと出会ったことで結果的にアーサーが国王になってしまう訳だけど、まあいいだろう。
次に人気なのが、この前出会ったユリウスね。
ユリウスはアーサーと違って、とても穏やかで優しい方(でもくっそ腹黒)。当時ファンの間でアーサーユリウス戦争なんて起こったりしたのよね、懐かしいわ。私もユリウス推しだったから、参戦したのよね。燃えたものよ。
それで、シナリオは木の下で眠っているユリウスを見かけたアリスが、悩んだ挙句彼にハンカチをかけてあげるの。私もえ?ハンカチ?て感じだったんだけど、ユリウスもそうみたいで…要するに「おもしれー女」なわけよ。
これも私に実害はないし、まあいいわね。
次はラルクだったかしら。この辺から曖昧なのよね。まあ、ラルクは前にも整理したし、いいわね。
1番危惧してるのはラルクだけど、あのアリスが私を裏切るなんて考えられない。最もゲームでは裏切ることもあるわけだけど…ここは、ゲームじゃないもの!大丈夫よ…!大丈夫よね?アリス!
ちなみにこの3人は私やアリスよりも上級生。マリーが悪役として出てくるのは意外だけどユリウスのシナリオなのよ。あ、今私マリーと仲がいいからユリウスシナリオでももしかしたら私になにか起こるのかも…。気をつけないと。
次に同級生として入ってくるリカルド。リカルドは騎士団団長の息子。剣術も長けてて、将来騎士団に入るんだけど、そこには弊害があるのよ。ラルクっていうね。前にも言ったけど、騎士団団長お墨付きのラルクがいるわけだもの。ラルクとリカルドはライバル同士なわけよね。
リカルドはものっごい生真面目で、女遊びしてるくせに剣術で父親に認められたラルクが許せないのよ。確か初めての出会いは、リカルドとラルクが言い争ってる場面だったわね。そこから、リカルドシナリオかラルクシナリオかに分かれるのよ。
ラルクシナリオにはいられたら困るから、要注意よね。
ここからは、年下組。
だから来年の話になるし、今はまだ大丈夫だけれどいずれはまとめておかないとね。
宰相の息子のレオナルドと、第三王子のアイザン。そういえば、このゲーム第一王子は出てこなかったのよね…。第二王子以下は出てくるのになんでなんだろ。
__________________
ふと、目を開けるとアルは目を伏せ何かを読んでいた。ノートのようなそれは、何かの文脈から察するに観察日記のようだった。
私が覗いていることに気づいたアルが、にっこり笑いながらそのノートを勢いよく閉じた。
「ご、ごめん…中見て…」
「何か分かります?」
「いや、何かまでは…。観察日記みたいなものかしら?」
「そんなところです」
なんのだろう、とは思ったがそれ以上は問わない。昔より表情は穏やかになったものの、にっこり笑った時の穏やかじゃない様子は変わらない。こんな時、何も突っ込まない方が身のためだと私は学んでいる。
「ところでアル、貴方この国の第一王子をみたことある?」
ノートをなおし、アルは私を見る。緑色の瞳が少し揺れた。それを隠すようにアルは目を伏せる。
「…さあ、見たことはありませんね」
アルの仕草が気になったが、気のせいだろうと私は続ける。
「生きてはいるのよね?」
「それも、私は存じ上げませんね。何故そのようなことを気にするのですか?」
「なんとなく…私第二王子や第三王子は知っているけれど、第一王子に限っては名前も知らないのよ。それがとても気になっちゃって」
「…気にしなくてもいいと思いますよ」
そう笑うアルは、昔と変わらない冷たい目をしていた。何がアルをそうさせるんだろう、と気になったがそれ以降のアルは口を閉じ、私とは目も合わせなくなってしまった。こうなったらアルは何も話してくれないんだよな。
もしかしたらアルは、第一王子の何かを知っているのかもしれない。カーチス家は執事の名門家。確かアルの父親は今も国王に仕えているはずだ。
「何か知っているのね、アル」
「……いえ」
「いいのよ、今は。話したくないのなら構わないわ。けれど、いつか話したくなったならその時はわたくしにも教えてちょうだいね」
そっと、アルの頬に触れた。ひんやりとした頬に触れるとアルの肩がぴくりと揺れる。
アルとの間に秘密はないと思っていた。少なくとも今までは。けれど、秘密にされたことに対してこんなにも切ない思いを抱くだなんて思いもしなかった。
「…貴方がわたくしを支えたいと願うように、わたくしも貴方を支えたいと願っているのよ。それだけは忘れないでちょうだいね」
まるで、恋人同士のようなセリフだな、と他人事のように思った。そのままアルは何も言わなかったけれど、じんわりと温かくなってきた頬を両手で触れてアルの感触を味わう。
そうなのね、エミリー。
私は、アルのことがこんなにも好きだったんだわ。
きっとゲーム内のエミリーは、ラルクが好きだったからアリスとも敵対するエンドを目指すのね。私もそうだわ、もしアルが攻略対象でアリスがアルを選んだのならきっと敵対もするわね。今ならエミリーの気持ちも少しだけわかる気がした。
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