月夜のモノガタリヒメ

たそかれぼたん生雨(きう)

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25 青瓢箪のROMANCE

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 葱花輦に飛びこみ,小さな体を抱き竦めたとき,雷電が歪な曲線を描きつつ目前の大木に直撃した。きな臭い爆風を起こしながら大木の幹が折れ,鬼殿全体を轟震に巻きこんでいく。
「月へ帰るならいっそ殺してくれるわ」
 喉もとに短刀が突きつけられる。
「おまえまで麻呂を捨てゆくなら息の根をとめてやるぞ。忘れるな――おまえは母さまを見殺すという大罪を犯したのだ。せめて償いとして一生主人に尽くさねばなるまい?」
「……御無事でございましたか。誠に宜しゅうございました」
 そう目礼をすれば,祐子内親王は短刀を握りしめる手を震わせたものの,青褪めた頰を硬化させ,人の肩越しを睨みつけた。
「望子さまをお放しくださいませ」
 振り返れば俊通が立っていた。
「青瓢箪!――い,いえ,どうしてあなたがいるのです?」
「権大納言殿のお屋敷より密かにお供して参りました。望子さまのことが案じられてならなかったのです! 関白左大臣殿は途中で帰られました! ですが,私は最後までお見送りするのです! 私は大切な女人を,お1人でお帰しなど致しませぬ!」
「このような折に何を申しておるのです。口を噤んでおいでなさい」
「いいえ,口を噤んでおる場合ではございませぬ。望子さまに降りかかる危険も災難も,私が振り払ってみせましょう!」
 つかつかと進みでるなり跪く。
「お手のものをお渡しいただきたく切に,切に願い奉りまする」
 内親王が短刀をおろし,俊通に近づいた。
「願いをお聞きいれいただき恐悦至極に存じまする」
月都げっとの使者め,モノガタリヒメを連れ戻しに参ったな――」
 内親王は無造作に片腕を払った。
 白銀さえ帯びる蛙腹の皮膚がさかれ,鮮血が飛び散った。
 俊通の顔が切られた!
 真紅に染まる顔面の両眼に,短刀を翳す内親王の姿が揺れる。とどめを刺すつもりなのである!
 俊通へおおいかぶさったが,私の体はひょいと回され,薄い胸のなかにおさまっていた。
 痙攣に襲われる。私を守る瘦身から伝播したのである。
「望子さまと永遠の命を紡いでいきたい……」
 唇から大量の血が溢れた。
「駄目よ,青瓢箪,いっては駄目……」
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