6 / 7
おそかった
しおりを挟む
高富は正人の近所を毎日かかさず見張っていた。心配で仕方ない。
「今日は遅いな。」
車の中でうっかり居眠りをしてしまった。救急車やパトカーの音で目が覚めた。おそかった。
音や光のある神社の方へ急いで向かった。
正人の意識はなくぐったりしていた。母親らしき人が横で泣きじゃくっている。
あいつは全く同じように鳥居に正人を釣りさげた。後追い自殺を想定させてるのだろう。
父親も駆け付けて来た。そのとき高富は父親の後ろをついてきた女の子に目を疑った。
紗季にそっくりだった。自分はおかしくなったと思った。すぐまた探したがもういなかった。
付近にいたあいつはすぐ捕まった。思った通りだ。しかしこの状況で何も自慢できない。わかっていたのに、すぐそばにいたのに、油断しなければ助けられたのに、悔しくてしかたない。
「どうか無事でいてくれ。」
犯人は生徒にだけは人気のある先生、柏木だ。女性の先生からも評判が悪いので、あいつが一番働いては駄目な職場である。
柏木は生徒に人気の先生だ。一度決めたことにまじめに取り組む。言い方を変えれば執着心がとても強い。
勢いのある熱血な性格で、それでいて明るい。容姿もモテるタイプだ。
とりわけ麻実が気に入っている。
いつものように麻実を見つめていると、紗季の気を失わさせてしまった。
罪をなかったことにするため、何とかしなければいけないと考えた。
柏木は自分の正義、麻実のためなら紗季の命など大したモノではない。
様態が、命に影響を及ぼす程度なのかなんてどうでもよかった。
少しの汚点もつけてはだめだと思った。
紗季を麻実が隠れていたところに寄せて、車に乗せる準備を始めた。
何食わぬ顔で段ボールと台車を用意して運んだ。
自殺に見せかけるため、紗季の家の付近を物色していたら鳥居が目に入る。
「雰囲気もちょうどいいじゃないか。」
体格がよく、力も強いのですぐに終わった。
正人は両親が近くにいる中、生死をさまよっている。
紗季は、とてもそばでは見てられないという理由にして、人目のあるときは病院にいかなかった。
夜、一般の面会時間が終わり、そっと紗季が来た。
ちょうど三人そろったとき、正人の心臓が止まった。蘇生が始まる。
「俺、死んだっぽいな。」
紗季には当然のように見えている。いたたまれないふりをして紗季は飛び出した。正人に手招きをして。
「そうね、幽霊カップル誕生ね。」
「俺たちカップルだっけ?」
「あほ、最後くらい感動的に分かれましょ。」
じっと正人を見つめて、無駄口のような会話から、声の調子を変えた。
「私ね、恩返しできるくらい力がついたみたいよ。」
「おいそれって。」
「そう、忙しい別れになっちゃったね。時間がない。さようなら。楽しかった。」
正人が瞬きをして目をあけると、両親が嬉しそうに自分を見つめている。
母親が言った。
「さっき紗季ちゃんがたまらず部屋を出て行ったのよ。呼んでくるわね。喜ぶわよ。」
二人になった時、父親が言った。
「お前もさすがに自分が一回死んだときくらいは泣くんだな。」
正人は初めて紗季を思って泣いた。
「今日は遅いな。」
車の中でうっかり居眠りをしてしまった。救急車やパトカーの音で目が覚めた。おそかった。
音や光のある神社の方へ急いで向かった。
正人の意識はなくぐったりしていた。母親らしき人が横で泣きじゃくっている。
あいつは全く同じように鳥居に正人を釣りさげた。後追い自殺を想定させてるのだろう。
父親も駆け付けて来た。そのとき高富は父親の後ろをついてきた女の子に目を疑った。
紗季にそっくりだった。自分はおかしくなったと思った。すぐまた探したがもういなかった。
付近にいたあいつはすぐ捕まった。思った通りだ。しかしこの状況で何も自慢できない。わかっていたのに、すぐそばにいたのに、油断しなければ助けられたのに、悔しくてしかたない。
「どうか無事でいてくれ。」
犯人は生徒にだけは人気のある先生、柏木だ。女性の先生からも評判が悪いので、あいつが一番働いては駄目な職場である。
柏木は生徒に人気の先生だ。一度決めたことにまじめに取り組む。言い方を変えれば執着心がとても強い。
勢いのある熱血な性格で、それでいて明るい。容姿もモテるタイプだ。
とりわけ麻実が気に入っている。
いつものように麻実を見つめていると、紗季の気を失わさせてしまった。
罪をなかったことにするため、何とかしなければいけないと考えた。
柏木は自分の正義、麻実のためなら紗季の命など大したモノではない。
様態が、命に影響を及ぼす程度なのかなんてどうでもよかった。
少しの汚点もつけてはだめだと思った。
紗季を麻実が隠れていたところに寄せて、車に乗せる準備を始めた。
何食わぬ顔で段ボールと台車を用意して運んだ。
自殺に見せかけるため、紗季の家の付近を物色していたら鳥居が目に入る。
「雰囲気もちょうどいいじゃないか。」
体格がよく、力も強いのですぐに終わった。
正人は両親が近くにいる中、生死をさまよっている。
紗季は、とてもそばでは見てられないという理由にして、人目のあるときは病院にいかなかった。
夜、一般の面会時間が終わり、そっと紗季が来た。
ちょうど三人そろったとき、正人の心臓が止まった。蘇生が始まる。
「俺、死んだっぽいな。」
紗季には当然のように見えている。いたたまれないふりをして紗季は飛び出した。正人に手招きをして。
「そうね、幽霊カップル誕生ね。」
「俺たちカップルだっけ?」
「あほ、最後くらい感動的に分かれましょ。」
じっと正人を見つめて、無駄口のような会話から、声の調子を変えた。
「私ね、恩返しできるくらい力がついたみたいよ。」
「おいそれって。」
「そう、忙しい別れになっちゃったね。時間がない。さようなら。楽しかった。」
正人が瞬きをして目をあけると、両親が嬉しそうに自分を見つめている。
母親が言った。
「さっき紗季ちゃんがたまらず部屋を出て行ったのよ。呼んでくるわね。喜ぶわよ。」
二人になった時、父親が言った。
「お前もさすがに自分が一回死んだときくらいは泣くんだな。」
正人は初めて紗季を思って泣いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる