ひとりぼっちの私のもとに現れたのは魔法使いでした。

月瀬そら

文字の大きさ
10 / 11
第三章 とつぜん

3ー2

しおりを挟む
 ルーナが目を覚ます。
 そこは暗闇に包まれていて、部屋のようです。
 朦朧もうろうとする意識の中で、僅かに光が漏れているのを発見します。
 意識がはっきりしてくると、左肩に痛みを感じます。

 「い、痛い」

 思わず声が出てしまう。
 痛む左肩を押さえながら起き上がる。
 (ここは何処なのだろうか?)
 この場所は湿っぽく、カビのような匂いがし、なんともいえない怖さを感じた。
 反対側を向くと鉄格子が現れる。
 (どうやら牢屋に入れられているようである)

 「シャルル様」

 ルーナは今にも泣きそうな声でシャルルの名前を呼ぶ。
 牢屋の外の僅かな光を頼りに鉄格子に手を掛けるが、びくともしません。
 何度も試しましたが、開くことはなく途方にくれてしまいます。
 (怖いよ、早くここから出たいよ……)
 心のなかで何度もシャルルの名前を呼ぶ。
 遠くから階段を下りてくる足音が聞こえ、ロウソクの光が地面を照らすのが牢屋の外から見える。
 もしかして迎えに来てくれたのではないか、ルーナはそう思った。

 「シャルル様ー」

 大きな声でシャルルの名前を叫ぶルーナであったが、残念ながらシャルルではない別の人のようである。
 シャルルではない知らないひとりの男性が牢屋に近づいてくる。
 服装は、マントを羽織っている。
 
 「ローズ姫、お目覚めになりましたか?」

 (ローズ姫?)

 「今朝もお話しましたが、私のことをなぜ拒絶するのですか?ローズ姫」

 (どういうことなの?この人は誰かと勘違いしているの?)

 「わ、私は、ローズ姫ではありません」 
 
 ルーナは男性の言葉に戸惑ってしまう。

 「何をおっしゃっているのですか、ローズ姫、私が何のためにドラゴンを倒したとお考えですか?」

 (ドラゴン?倒した?)

 ルーナは一度、自分が置かれている状況を整理していく。
 (もしかしてこの男性は、さっき読んでいた物語に出てきた勇者なのだろうか?でも、確かお姫様はドラゴンになってしまったはずではなかっただろうか…)

 「ですから私は、ローズ姫では……」

 しかし何度違うと説明しても勇者は、ルーナの言葉を聞いてくれないのです。
 (どうすればよいのだろうか?)
 考えたルーナは一か八かローズ姫になりきることにしたのです。
 (話を聞いてもらえないのであれば、私がローズ姫になりきるしかない)

 「勇者様、ここから出していただきたいのでございます」

 必死に勇者に懇願するローズ姫(ルーナ)。

 「それは出来ません。ローズ姫」
 「何故なのですか?」
 「私と結ばれることを承諾してくださらないからではありませんか。私は、心苦しいのでございます。私の話を聞いてくだされば、ここから出ることが出来るというのにあなたは、ずっと拒否し続けておられる」

 ルーナは必死に考えます。
 (でもその条件を認めてしまったら、もうこの物語から出られず戻れなくなってしまうかもしれない)

 「お父様、お父様をお呼びくださいませんか?」
 「それは、出来ませんローズ姫」

 勇者はローズ姫(ルーナ)にいう。

 「なぜなのですか?」
 「王様は、すでに私たちの結婚を認めてくださっています」

 (そんな、どうすれば……)
 ルーナは、一生懸命に考える。
 ここから出ていける方法を、出るためのアイデアを絞り出していく。
 (そうだ)
 良いアイデアを思い付いた。
 上手くいくかは分からないが、試してみることにした。
 そしてルーナは、さっきまでの弱気な話し方から強気な話し方で勇者にまた話しかける。

 「いいでしょう。勇者様、あなたと結婚することを承諾いたしましょう。ですから、ここから出してくださいませんか?」
 「本当に良いのですか!ローズ姫」

 勇者が食い気味に相槌をして、心から喜んでいるのが伝わってきます。
 (どうやら勇者は、私の言葉を信じてくれている)
 ひとまずルーナは一つ目の問題を乗り越えることが出来たのでした。


 一方その頃、シャルルとエミリオは、城の中を歩き回り探していたのでした。
 シャルルとエミリオは、ある部屋に落とされていたのです。
 最初にシャルルが目を覚ましました。
 起き上がりシャルルは辺りを見回すと、シンプルな造りのベッドに机、洋服入れがあり、おそらく使用人が使っている部屋だと推測される。
 少し遠くにエミリオが倒れているのが見える。
 シャルルは、エミリオの近くに寄り、体を揺すり名前を呼び、エミリオを起こす。

 「エミリオ、エミリオ大丈夫か?」

 エミリオもシャルルの声が聞こえたのか目を覚ました。

 「シャルルか」
 「ああ。エミリオどこかケガしてないか?」
 「大丈夫だ」

 シャルルはエミリオを起き上がらせるために手を差し出します。
 エミリオは起き上がると少し頭を押さえた。
 シャルルに気を使って大丈夫と言ったがどうやら頭を打ってしまったらしい。

 「シャルルこそ大丈夫か?」
 「何ともないよ。それより、早くルーナを探しに行こう」

 シャルルとエミリオは、準備を整えるとその部屋を出たのでした。
 外まで出ると、シャルルは遠くに城の関係者らしき人が通るのを発見したのです。
 ここは、本の世界で見つかれば何をされるか分からないためふたりは声をかけずに静かにその人を見送ったのでした。
 だから、普段よりももっと慎重に行動をしなければなりません。
 二人は最初にいた部屋で、魔法が使えるか試しました。
 しかし残念ながら初級の魔法しか使えなかったのです。
 これでは、ルーナを探すのに時間がかかってしまいます。

 「ルーナは何処にいるんだ……」

 もどかしい気持ちを抑えてシャルルは灰色の薄暗い空を見上げ、何処かにいるはずのルーナを思うのでした。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。 だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。 失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。 どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。 「悪女に、遠慮はいらない」 そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。 「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。  王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」 愛も、誇りも奪われたなら── 今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。 裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス! ⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。

王女殿下のモラトリアム

あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」 突然、怒鳴られたの。 見知らぬ男子生徒から。 それが余りにも突然で反応できなかったの。 この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの? わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。 先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。 お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって! 婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪ お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。 え? 違うの? ライバルって縦ロールなの? 世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。 わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら? この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。 ※設定はゆるんゆるん ※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。 ※明るいラブコメが書きたくて。 ※シャティエル王国シリーズ3作目! ※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、 『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。 上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。 ※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅! ※小説家になろうにも投稿しました。

妹の身代わりだった私に「本命は君だ」――王宮前で王子に抱き潰され、溺愛がバレました。~私が虐げられるきっかけになった少年が、私と王子を結び付

唯崎りいち
恋愛
妹の身代わりとして王子とデートすることになった私。でも王子の本命は最初から私で――。長年虐げられ、地味でみすぼらしい私が、王子の愛と溺愛に包まれ、ついに幸せを掴む甘々ラブファンタジー。妹や家族との誤解、影武者の存在も絡み、ハラハラと胸キュンが止まらない物語。

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。

尾道小町
恋愛
登場人物紹介 ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢  17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。 ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。 シェーン・ロングベルク公爵 25歳 結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。 ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳 優秀でシェーンに、こき使われている。 コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳 ヴィヴィアンの幼馴染み。 アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳 シェーンの元婚約者。 ルーク・ダルシュール侯爵25歳 嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。 ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。 ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。 この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。 ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳 ロミオ王太子殿下の婚約者。 ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳 私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。 一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。 正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

【完結】逃がすわけがないよね?

春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。 それは二人の結婚式の夜のことだった。 何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。 理由を聞いたルーカスは決断する。 「もうあの家、いらないよね?」 ※完結まで作成済み。短いです。 ※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。 ※カクヨムにも掲載。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

処理中です...