1 / 5
プロローグ
しおりを挟む「お疲れーー!!」
「またなー!」
繁華街は夜でも明るい。もう深夜だというのに、店の灯りで昼間みたいだ。声だって、普通はこの時間にこの音量で話すなんてしたら近所の人に怒られてしまうだろう。
「お前、1人でちゃんと帰れるか?」
「だいじょおぶだよ。帰れる帰れる。」
そうは言ったものの、今日は飲みすぎてしまったかもしれない。久しぶりに会う人たちだらけで、ついいつもより飲んでしまった。
「ほんとかよ。俺、明日のニュースでお前の名前、見たくないからな。」
「怖いこと言うなよ。俺も嫌だよ。」
軽く睨むと、例えばの話だなんて言って誤魔化された。
「じゃあ、俺こっちだけど、本当に何かあればすぐに電話してこいよ!」
心配症な友だちと別れると、なんだか少し寂しくなった。
終電は既にない。タクシーに乗るお金もない。よって、気が向く方にフラフラと歩いていた。
大学3年になってお酒を飲める様にはなったのは嬉しいが、憂鬱に感じることも増えた。
ただお酒を楽しみたい俺にとって、酒を使ったコミュニケーションとやらは苦手だ。大抵、飲みたいものを好きなペースで飲ませてもらえない。
あと、この歳にもなると現実味を帯びた将来の話をすることが増えた。誰かと付き合えば結婚が付き纏い、子どもを産んで育てるまでがワンセット。ただ好きだからそばにいたい、では済まされずに相手の人生を背負うことを強要される。
俺だって、結婚したくないわけではないし彼女だってほしい。でも、まだ相手の人生を背負っていいと思えたことがない。自然と2人の未来を考えられるような相手に、出会えていないだけだ。
フラフラとした足取りで、近くの公園に立ち寄った。昼間と違ってガランとした空間が広がっている。
なんとなくジャングルジムに登って、腰を下ろした。ふわふわした頭で登るのは危険だと理解しているが、この景色を見たくなった。
公園を見渡してみる。小さい頃は、ここに登ると強くなれた気がした。公園はもっと広く見えたし、ここから見る景色は輝いていた。だからなんとなく、登れば気分が晴れる気がしたんだ。
思惑と違って、心は晴れないままだった。
月に近くなったと思っても、掴めはしないし。
冷たい風に当たったことで、少し酔いが覚めた。我に返った俺はジャングルジムを降りる。
あれ、あんなお店あったっけ?
ベンチに腰を下ろした、ちょうど向かい側。細い路地に看板が見えた。
まだ少し酔っていたからかもしれない。妙にその看板が気になって、お店に立ち寄ることにした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる