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あやしや菓子屋にいらっしゃい
しおりを挟む「本当にこの店、開いてるのか…?」
気になって思わず近くに来てしまったものの、怪しさ満点の店に入る勇気が起きない。そもそも、毎日通る道なのに気づかないとかあるか?俺は酒に酔った勢いで狐にでも化かされてるんじゃないのか?
看板をジロジロと、色んな方向から眺めてみる。が、本物にしか見えない。
「最近の狐はこんなにすごいのか?まぁ、化かされたことないから昔を知らないけど。」
入り口は…ここか。入り口だけ見ると普通の居酒屋なんだよなぁ。
扉についている窓をそっと覗くが、真っ暗で何も見えない。
あれ、閉店しちゃったか?いやでも看板は出てるしな。しまい忘れか?
恐る恐るドアノブに手をかけると、するっと回った。
開いてる…よし、中で人が倒れてるかもしれないからな。ほら、だから看板を閉め忘れて鍵も開いてるとか、有り得ない話じゃないだろ。…うん、様子を見るだけ。
自分に言い聞かせながらそぉっと扉を開けると、店内は昼間のように明るかった。しかも中は見た目と違って、ザ駄菓子屋!と言った店構え。いよいよ狐に化かされたと思った。
「いらっしゃい。」
鈴が鳴るような、綺麗な声が聞こえて驚いた。
声がする方を見ると、髪の長い女の人が立っていた。
「初めましての方ね。驚いたでしょう。ようこそ、あやしや菓子屋へ。」
「…どうも。」
失礼かと思ったが、この人が狐かもしれないと上から下まで見てしまった。
黒い胸元まであるストレートな髪、白い半袖シャツ、膝下まである紺色のスカート、白い靴下に下駄。少し和風な格好だが、この店には合っている。
「えっと、お一人でこのお店を?」
「えぇ、そうですよ。何か買っていかれますか?お酒はありませんが、様々なお菓子を置いてますよ?」
そう言われて店内を見渡すと、なるほど確かに懐かしいお菓子たちが並んでいる。会社と家とコンビニを往復してる今の俺には馴染みのないお菓子たち。
コの字に並んだ陳列棚に店内真ん中に置かれた机。どちらにも並ぶお菓子たち。少し見えている奥の和室は、住居か事務所か。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ…。そうだ、金平糖ありますか?」
「はい。ございますよ。」
店主はそう言うと、左側の棚から小さなカプセルを一つ手に取った。
「こちらです。」
あぁ、懐かしい。確かにこれだ。まぁるい底に薄い蓋がついていて、すぐに食べ終わってしまうようなサイズ。
「これ、小さい頃から好きで。」
「あら、私も金平糖、大好きです。甘くて、お星様みたいで。」
そう、俺も星みたいだと思っていた。
俺は夜空を見上げるのが大好きな少年で、父に星が欲しいと強請ったことがある。よし、取ってきてやろう!と父が翌日持ってきたのが金平糖だった。
初めて食べた時は騙されてたなぁ。「お星様ってこんなに甘いんだね」って。
「2つもらってもいいですか?」
「もちろんです。」
支払いを済ませると「また来ます」と言い残して、お店を出た。数歩歩いて後ろを振り返るが、お店が消える様子はない。
俺は狐に化かされた訳ではなかったのか。
もしかしたら、最近できたお店なのかもしれない。申し訳ない勘違いをしてしまった。
2つの金平糖を手に、ほっこりした気持ちで家に帰った。
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