憧れの騎士は幼馴染

都築稔

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「ここ?」

「そう。さぁ、どうぞ。」

…とっても可愛い外装のお店ね。男性1人では入りづらそうな。

ここ、本当にリートのおすすめ?本当にここに来たの?

まぁでも、リートは昔からモテたしな。ここにだって、彼女と来たことがあるのかも。婚約者がいなくたって、彼女の1人くらいは今までいただろうし。

「さ、座って。俺が好きなのはここのシュークリームなんだけど、パンケーキも美味しいって聞いたんだ。だから前から食べてみたいなって思ってて。」

あ~、そういえば昔から甘党だったな。

“聞いた”って言葉に、思わず誰にか聞きたくなってしまったけど我慢、我慢。私はただの幼馴染よ。聞いてどうするの?

「ほら、これとか好きなんじゃない?このイチゴと生クリームのやつ。チョコソーストッピングしても美味しそうだよ。」

う~ん、こいつ本当に女たらしというか。慣れてやがる。

「どうかした?」

「いや…なんでもない。それ、確かに美味しそうだね。」

「でしょ?」

「うん、これにしようかな。」

「OK!じゃあ俺は…このバナナのにしようかな。」

「いいね。」

「本当にどうかした?」

「え?」

「なんか、よそよそしい。」

「そう?」

「うん。俺に猫被る必要ある?」

「別に、猫被ってなんかないわよ。」

「え~、なんか違うよ。」

「何年も会ってなかった人に、最近の私を語られたくないわよ。」

「…そうだな。ごめん。調子乗った。」

「え…あ、うん。」

え、え、そんな傷ついた顔されると思ってなかったんだけど。え、この空気どうしたらいいわけ?

「…楽しみにしてたんじゃないの?」

「え?」

「ほら、さっき“食べてみたかった”って。そんな顔して食べたら、せっかくの美味しいものも美味しくなくなるわよ?」

わかってる。そんな顔をさせたのは自分だって。でも、思いつかなかったんだもの。私たち、本当にお互いの最近のことを知らな過ぎるのよ。

「それもそうだね。」

「あ、謝らないでね。私が余計なこと言ったんだから。」

「ありがとう。」

「お礼を言われることでもないわ。」

「いいから。受け取っておいてよ。」

調子狂うなぁ。幼馴染と話すのはこんなに疲れるものだったかしら。なんだか、別人と話してるみたいよ。

「お待たせしました!」

「わぁ!可愛い!美味しそう!」

「うん…可愛い。」

「そうよね!って、本当にパンケーキ見てた?」

「さぁ、どうかな?」

「どうかなって…他に可愛い物でもあったの?」

「ナイショ。」

「なにそれ。」

「いいから。アイスが溶けちゃうよ?」

誤魔化された気がする。というか、確実に誤魔化されたよね、今。

「…むかつく。」

「なんか言った?」

「なんにも。」

「こっちも食べる?」

「いいの?食べたい!」

「もちろん。ほら、あーんして。」

「あー…ん!美味しい!」

「だろ?俺にも、そっちちょうだい。」

「ちょっと待って。ほら、あー。」

「ん、うまい。」

「そうだよね。」

この美味しいパンケーキに免じて、今日のところは誤魔化されてあげるか。

能天気な私は、今日の出来事が彼による策略だなんて考えてもいなかった。
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