6 / 150
保護魔法
しおりを挟む「お兄様!おはようございます!」
私はお兄様が食堂にいると聞いて、急いで支度すると食堂へ向かった。
「おはよう、エミィ。今日は早いね。」
「えぇ。だって早くお手紙をお渡ししたくて。」
昨日の計画通り、今日は朝早く起きてルカ様に渡す手紙を書いた。後はお兄様に託すだけ。
「もうかい?昨日の夜、話したばかりなのに・・・。ちゃんと眠ったかい?無理してない?」
もう、お兄様は心配性なんだから。
「大丈夫です。もう、ぐっすり眠りましたわ。」
「ならいいんだけど・・・。」
お兄様は手紙を受け取ると、自身の侍女に渡す。
私はお兄様の向かい側の席に着いて、朝食を食べ始めた。
サクサクのクロワッサンにトロトロのスクランブルエッグ。このミルクスープも美味しいのよね。
「お嬢様、サラダも残さず食べてくださいね。」
「わかってるわよ!」
好き嫌いして残すほど、中身は子どもじゃないんでね!サラダも美味しくいただくわよ!
「エミィ、偉いね。ちゃんと野菜を食べてるじゃないか。」
「私だって、いつまでも好き嫌いをするお子様じゃないんですよ!」
ぷくっと頬を膨らませて抗議する。こんな顔をできるのは今だけね。
「僕にとってはいつまで経っても、可愛いお姫様さ。さて、そのお姫様の願いを叶えに行かなくちゃね。今日は出かけるから、1人でもいい子にしていなくちゃダメだよ?」
「もう!また子ども扱いして!」
「違うよ。お姫様扱いさ。じゃあね。」
優雅に食堂を立ち去るお兄様。
・・・私と2歳しか変わらないのですよね?前世を合わせると私の方がかなり年上のはずなのに、お兄様には一生勝てない気がするわ。
それより、お兄様はもう渡しに行ってくださったから、後はルカ様から返事が来るのを待つだけだわ。おそらく直接渡しに行ったのだから、早ければ今日中にもらえるかもしれないわね!
脳内も口の中も幸せで、私は明日死んでもおかしくないかもしれない。・・・ごめんなさい、大袈裟に言ったわ。ルカ様から返事が来るまで死ねない。というか死なないために手紙を送ったのよ。
「ご馳走様。今日の料理も美味しかったと料理長に伝えてね。」
近くにいた給仕のメイドに声をかけて、私も食堂を後にする。
わざわざ料理長に直接言わずに、メイドを介するのは計算です。悪役令嬢の印象を少しでも払拭しようと思いまして。ほら、本人から言われるよりも他人から言われた方が信憑性増すじゃない?それを狙ってます。
さぁさぁ、今日はお兄様もいませんし何をしましょうか?昨日買った絵本を読み返すのもアリよね・・・。だって、推しからもらった本ですもの。一言一句、台詞を間違わないくらいには読み込みたくなりまふよね。推しの子ども時代に会えるだけで鼻血ものですが、その幼い推しに選んでいただいた本。推しが好きな本。大切にしないわけがないわ。
そうだ!傷がつく前に保存魔法をかけてもらわなきゃ。
「ラナ、今日、お父様はお忙しいかしら?」
「昨日、お嬢様からいただいたお土産の効果で書類処理が早くて助かるとシンが言っておりました。」
シンは若くて優秀な、お父様の補佐官。
うさぎの文鎮が思った方向とは違いそうですが、役に立ってるならよかったです。
「お父様にお話があるの。行っても大丈夫かしら?」
「旦那様は、お嬢様ならいつでも喜んで受け入れてくださると思いますよ?」
嬉しいこと言ってくれる!でも、お仕事の邪魔はしたくないのよ。我儘を言って困らせる気もね。そんなことしたら、死亡フラグに近づきそうじゃない。
プレゼントをあげた昨日の今日でお願いごとなんて、なんだかうさぎさんが賄賂みたいで申し訳ないけど背に腹は変えられません。行きましょう、お父様の執務室に。
★★★
コンコンッ!
「どうぞ。」
お父様の許しを受けて、部屋に入る。
「おや、どうしたんだい?珍しいお客様だね。」
「お父様、お願いがあるのですが少しよろしいでしょうか?」
「ちょうど休憩を入れようと思っていたところだ。シン、お茶を用意して。」
「少しだけですからね。」
シン、いつも苦労かけてます・・・。
シンが近くのメイドにお茶を頼んでくれたので、すぐに用意してもらえました。
「それで、小さなお客様は何をお望みかな?」
なんだかこの言い回し、お兄様にそっくりね。いや、お兄様がお父様にそっくりなのか。
私は部屋から持ってきた2冊の本をテーブルに置いた。
「この本に保護魔法をかけたいのです。気に入っているので、傷をつけたくなくて。」
「それは、昨日買った本かい?」
「はい、お兄様に買っていただきました。」
ここで、ルカ様に選んでいただきました!なんて言ったらかけてもらえない気がします。
「ふむ・・・いいだろう。それくらいお安いものだ。本に興味を持ってくれたのも、私は嬉しいからね。」
そう言って絵本を手に取ると、お父様の手からキラキラした風がふわっと吹いた。その綺麗な風が本を包んでいく。その時間、1分もなかっただろう。見惚れていた私には、その時が一瞬に思えた。
「はい、完了。」
「お父様、すごいです!」
保護魔法はいわば守る魔法。使える人は少ない設定だったはず。
「お姫様に喜んでもらえて光栄さ。はい、どうぞ。」
「ありがとうございます!」
ルカ様に選んでもらった本だけど、お兄様に買ってもらってお父様に保護魔法をかけてもらって。これは本当に一生モノですね。大切にします!
「さぁ、お嬢様の用事は済みました。スチュワート様はお仕事にお戻りください。」
「お前は鬼だな。娘との時間も与えてくれんとは。」
「スチュワート様が僕にばかり押しつけず、早く処理してくださればお嬢様との時間もとれますよ。」
仕事が進んでると聞いて来たのだけど、お邪魔だったのかしら?
少し心配していると、メイドがケーキを持ってきた。シンがティーワゴンを受け取り、私に給仕してくれる。
「お嬢様、心配なさらなくてもゆっくりしていってくださって大丈夫ですよ。スチュワート様はすぐにサボろうとしますから、急ぎでなくても急かさないと仕事をなさらないんです。」
サーブする際、小声でこっそり教えてくれる。
なんだ、ならお言葉に甘えてゆっくりさせてもらおう。1人でティータイムは味気ないもの。
「シンもいかが?」
「では、お言葉に甘えておひとつだけいただきます。」
「お前、ズルいぞ!私には仕事をさせておいて!」
「いつもは私が押し付けられてるんです。自業自得ですよ。」
向かいに座ったシンをまじまじと見つめる。
柔らかな茶色の髪にエメラルドのような瞳。甘いマスクに落ち着いたこの態度。絶対モテるよな、この人。若くして辺境伯家の補佐官だもんな。きっと、お兄様の代でも働いてくれるだろう。シンと結婚したいと言う人はたくさんいるだろうに、浮いた話を聞いたことがない。
「僕の顔に何かついてますか?」
「ええ、とっても魅力的な瞳が。」
私の返答にお父様はガタンッ!と音を立てて立ち上がり、シンはきょとんとした顔をしている。
その顔もいいですね。ルカ様がいなければ、シンを推してたかもしれません。
「お前・・・娘はやらんぞ!」
お父様、気が早すぎます。私は貴族ですが、さすがに6歳で結婚は聞いたことがありませんよ?それに、私が結婚するのはルカ様です。
「ふふっ、ありがとうございます。」
あら、シンさん。お父様を完全スルーしましたね。まぁ、相手するのは面倒くさそうですもんね。
2人で見つめ合って笑う状況を前に、お父様がぷるぷると震えてます。可哀想だけど、大の大人がそんな反応をするなんて少し面白い光景ね。お父様をからかうの、クセになりそうです。シンも同じ気持ちなのかもしれません。ある意味、私たちは相性抜群ですね。
お父様が「エミィが・・・」と涙目になり始めた頃、これ以上すると仕事が手につかなくなると判断した私とシンは解散。私は笑顔で退室、シンは何事もなかったかのようにティーセットを片付けた。
朝ご飯食べてあまり時間が経たないうちにケーキを食べてしまったものだから、お腹がパンパンです。お部屋で本を読んでお腹を落ち着かせたら、散歩でカロリーを消費することにしましょう。太った状態でルカ様に会いたくはないですから。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。
しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。
断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します
凛 伊緒
恋愛
伯爵令嬢へレア・セルティラス、15歳の彼女には1つ下の妹が出来た。その妹は義妹であり、伯爵家現当主たる父が養子にした元平民だったのだ。
自分は『ヒロイン』だと言い出し、王族や有力者などに近付く義妹。さらにはへレアが尊敬している公爵令嬢メリーア・シェルラートを『悪役令嬢』と呼ぶ始末。
このままではメリーアが義妹に陥れられると知ったへレアは、計画の全てを阻止していく──
─義妹が異なる世界からの転生者だと知った、元から『乙女ゲーム』の世界にいる人物側の物語─
十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。
あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。
宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。
対極のような二人は姉妹。母親の違う。
お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。
そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。
天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。
生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。
両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。
だが……。運命とは残酷である。
ルビアの元に死神から知らせが届く。
十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。
美しい愛しているルビア。
失いたくない。殺されてなるものか。
それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。
生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。
これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。
本の通りに悪役をこなしてみようと思います
Blue
恋愛
ある朝。目覚めるとサイドテーブルの上に見知らぬ本が置かれていた。
本の通りに自分自身を演じなければ死ぬ、ですって?
こんな怪しげな本、全く信用ならないけれど、やってやろうじゃないの。
悪役上等。
なのに、何だか様子がおかしいような?
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる