将来、悲運な結末を迎える令嬢は幸せに生きる

都築稔

文字の大きさ
42 / 150

俺の主

しおりを挟む

俺の主人は変わり者だ。何処がって聞かれると全体的に。今まで何度も、俺は彼を選んでよかったのか?と自問自答している。まぁ、それなりに楽しませてもらってはいるけど。

コンコンコンッ

・・・カチャッ

「・・・どうかしたんですか?ラーヤ様」

「少し時間ありますか?」

目の前の侍女にそう聞くと、一度後ろの様子を伺い了承してくれた。

彼女は俺の主人の婚約者の侍女だ。濃い茶色の髪をきっちりとお団子にまとめ、濃紺の瞳はキリリと釣り上がった猫目。綺麗めの美人だ。

「お嬢様は湯浴みをされてますので、少しなら時間があります。」

湯浴み?1人でか?ご令嬢にしては珍しいな。まぁ、俺には関係ないか。

「これ、殿下からです。日記の内容を知りたいそうなので、エミリア様が日記を書いてる時にこっそり内容が見えそうな位置に取り付けといてください。」

もっと、ちゃんと説明しろよ。コイツ。というラナからの視線を軽く流して、魔道具を手の平に乗せる。

「じゃあ、そういうことで。」

「・・・着替えを覗くようなことしたら、八つ裂きにします。」

バタンッ!

・・・俺の知り合いはすぐに俺を八つ裂きにしたがるな。なんでそんなに血の気が多いんだ。それから訂正させてもらうと、覗くのは俺じゃない。殿下だ。そして俺が主人に逆らえると思ってるのか?

閉じられた扉の前で溜め息をついた。

さぁ、ここでこんなことしててもどうしようもない。戻ろっと。



俺の家は代々王家に仕えている家系だ。僕は王子たちが生まれる前から、彼らに仕えることが決まっていた。器用な僕は、求められればある程度のことは簡単にできた。

小さい頃は3人の遊び役として一緒にいた。でも、将来はこの中の誰か1人に使えることになる。その1人に王太子であるライト様を望まれている。家族にも王家にも。それはわかっていた。

『ラーヤはつまらなそうな人生を生きてるね。』

ある日、ルカ様に言われた言葉だ。

ムカッとした。その時の俺は、その道しかないと思ってたから。求められてるなら、そうするべきだと思ったから。こんなガキンチョに何がわかるんだ、と。

「ルカ様、ここにいらっしゃったんですか?」

寮の中でも最上級の部屋を与えられている殿下。1人部屋なのに通常より2倍くらいあるんじゃないかと思える部屋の広さ。小さなバルコニーまでついている。

いないと思ったら、大抵バルコニーにいる。今日もそうだった。

「温かい飲み物でも用意しましょうか?」

「いや、いい。紙を用意しといて。転写するから。」

「わかりました。」

殿下は王子の中で1番魔法の能力が高い。王太子の候補として担ぎ上げられたこともある。でも主人は自らその道を絶った。

『僕の能力は自分の為にしか使わない。国の為に使い続けるなんて、真っ平ごめんだ。』

後に主人はそう言っていた。

品行方正、正義の塊みたいなライト様には絶対出てこない言葉だ。

そんなルカ様の言葉に毒されていき、ロボットみたいに周りに従って生きていた人生を投げ捨てた。

「うーん、確かにこれは見たことない字だね。」

背後から殿下の手元を覗いてみる。

「うわぁ、これは複雑な文字ですね。」

殿下も俺も、仕事上様々な国の文字に目を通す。しかし、これは見たことがない。検討もつかない。

「これは・・・どうしましょうか?」

「はぁ・・・・・・最悪の手段を取るしかなさそうだ。」

「・・・休暇申請を出しておきます。」

殿下の行き先の検討はついている。ただ、正式な場所は知らない。この先も知ることはないだろう。殿下は1人でも自分の身を守れる。俺は察しの良さを買われてそばにいるため、こういう時に深掘りは絶対しない。

「・・・エミリア様にはなんと説明いたしましょうか?」

「魔塔の仕事とでも言っておいて。」

「ご自身でお伝えしないのですか?」

「明日の朝にはここを去るよ。これは早急に対処した方がいい気がするから。」

「かしこまりました。」

はぁ・・・なんて言ったけど、留守中に仕事を溜めるわけにはいかないからな。どうせ俺が処理することになるんだ。

自分の為に力を使うと言った主人。その割につまらなそうに生きていた子ども。そんな彼が見つけた、唯一の生き甲斐にしている婚約者のことだ。どうしたって俺が逆らうことなんてできない。

・・・つまらなそうな顔に笑顔が灯った時、俺だってそれなりに嬉しかったんだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………

naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます! ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話……… でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ? まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら? 少女はパタンッと本を閉じる。 そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて── アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな! くははははっ!!! 静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します

凛 伊緒
恋愛
伯爵令嬢へレア・セルティラス、15歳の彼女には1つ下の妹が出来た。その妹は義妹であり、伯爵家現当主たる父が養子にした元平民だったのだ。 自分は『ヒロイン』だと言い出し、王族や有力者などに近付く義妹。さらにはへレアが尊敬している公爵令嬢メリーア・シェルラートを『悪役令嬢』と呼ぶ始末。 このままではメリーアが義妹に陥れられると知ったへレアは、計画の全てを阻止していく── ─義妹が異なる世界からの転生者だと知った、元から『乙女ゲーム』の世界にいる人物側の物語─

本の通りに悪役をこなしてみようと思います

Blue
恋愛
ある朝。目覚めるとサイドテーブルの上に見知らぬ本が置かれていた。 本の通りに自分自身を演じなければ死ぬ、ですって? こんな怪しげな本、全く信用ならないけれど、やってやろうじゃないの。 悪役上等。 なのに、何だか様子がおかしいような?

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

処理中です...