将来、悲運な結末を迎える令嬢は幸せに生きる

都築稔

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マトフォーリオ・キュラシオ

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「せ~んぱいっ!今日はお一人ですか?珍しいですね!いつもは僕と目が合っただけで番犬がすごい顔で睨んでくるのに。」

「おはようございます、マト様。」

このきゅるきゅるした可愛い男の子はマトフォーリオ・キュラシオ。1つ歳下の後輩-最後の攻略対象だ。

ピンクの髪に水色の瞳。背は低めで、ブレザーの代わりにパーカーを着ている。彼も生徒会のメンバーなのにきちんと制服を着なくても大丈夫なのかと聞きたくなるが、そこはゲームの設定。誰も突っ込まないし、私はこの世界で初めてパーカーを見て懐かしく思った。

なぜ彼に懐かれているかはさっぱりわからないが、嫌われてバッドエンドを迎えるよりかはいいかと思っている。

「ルカ様はしばらくお仕事でお忙しいそうです。」

「へぇ・・・、さっすが最高の魔導士だね!」

手に持っているペロペロキャンディを舐めながら、さほど興味がないような返答をされる。

彼はこの可愛い見た目に反して、ものすごく腹が黒いらしい。前世ではあまり興味なかったので友だちから聞いた情報なのだけど、可愛いものが大好きな彼は自分のゴツメの名前があまり好きじゃないらしい。全員にマトと呼ばせていて、マトフォーリオと呼んだ人をメモっているらしい。いつか何か仕返しする為にだそうだ。ちなみに、私が初めて彼の名前を聞いたときにマトリョーシカが頭に浮かんだ。

「じゃあさ、お昼は先輩1人で食べるの?」

「カエラと食べようかと思っています。」

「あ~、カエラ先輩かぁ。」

少しガッカリしたような顔をされたが、ルカ様にもマトには気をつけるように言われている。

「ラト様!私、クッキーを焼いてきたのですがいかがですか?」

「え~、本当?嬉しいなぁ。ありがとう!」

彼が廊下でご令嬢に話しかけられたので、そのまま放置して教室に向かう。彼はいつもご令嬢方にお菓子をもらっている。甘いものが好きらしいが、カエラが言うには食べずに処分させているらしい。

まぁ、あれでも侯爵家の跡取りだしね。変な物を入れる人もいるだろうから、危機管理的には正しいと思う。(そう言ったらカエラに残念そうな顔をされたけど。)




現在の生徒会は王太子のライト様、副会長のお兄様、会見のマト様、書記のハオ様、あとリアン様とジオル様で構成されている。そう、攻略対象が集まっているのだ。私もお兄様に誘われたが、そんな危ないところに行けるわけがない。

「あら、今日は殿下と一緒じゃないの?」

考え事をしていたら、いつの間にか教室に着いていたらしい。カエラに声をかけられた。

今日も黒い髪の毛をクルクルに巻いていて、制服を着ているのが逆に色っぽい。

「そうなの。魔塔のお仕事だとかで、急に。しばらくはご一緒できないそうなの。」

「珍しいこともあるのね。あの、何がなんでもエミィと一緒にいたがりそうな人が。」

「私も今朝言われて、びっくりしちゃった。」

「じゃあ、お昼は一緒に食べるわよね?」

「もちろん。そう言おうと思っていたの。」

カエラはルカ様がいない時に一緒にいてくれる。今年はリアン様も同じクラスなのに、隣に座っているところをあまり見ない。仲は良いみたいなんだけど。まぁ、リアン様だしね。

「ねぇ、今日はうるさい人がいないわけだし、街に行きましょうよ。流行りのカフェがあるの。」

「いいわね。雑貨も見たいわ。」

「好きねぇ。なら、私はアクセサリーが見たいわ。」

「明日も行くことになりそうね?」

「いいんじゃない?それでも。楽しそうじゃない。」

クスクスと笑っていると、授業の鐘がなる。

キーンコーンって日本のやつじゃないのよ?本当に鐘を鳴らしているの。カーン、カーンと重厚な音が鳴って、日本じゃないことを思い出す。

ルカ様にこんなことを言ったら拗ねられちゃいそうだけど、カエラと過ごす時間も楽しくて好き。やっぱり、友だちと過ごす時間も必要よね。

カエラも攻略対象の婚約者。全く関係のないモブではないけど、ゲームとか悪役令嬢とか忘れられる。

『私が服を選んであげるわ』

私のノートの端にカエラが書いた。私はありがとうの意味を込めて、その言葉の上にハートマークをつけた。
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