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いつもの日常
しおりを挟むこの時の私は控えめに言っても浮かれていた。油断していた。
「ルカ様、今日もお昼はご一緒できそうですか?:
「もちろんだよ。ごめんね、最近一緒にいられない時があって。」
「仕方ないですわ。魔塔のお仕事ですもの。ルカ様がいないと困るでしょう?」
ここしばらく、私の問題で魔塔の仕事を放棄していたらしいルカ様。そのツケが回ってきてるんです、と以前ラーヤ様が言っていた。ルカ様本人は私に罪悪感を抱かせるようなことは言わない。
まぁ、とにかくそのお陰で一緒にお昼がとれない時があった。そう言う時、私はカエラとご飯を食べる。それはそれで楽しい時間なんだけど、私と過ごす時間が減るのが嫌だからとルカ様はできるだけ夜や早朝にお仕事をされる。
カエラによると、最近ルカ様に会うとじっとり睨まれるそうだ。
自分が仕事だからとエミィを放置しているくせに、嫉妬なんて女々しいわね。
なんて言っていたけど、彼が仕事しないとこの国の安全にも関わりますからね。許してあげてください。ルカ様は許されるなら、いや、機会があれば仕事なんて放置して私と過ごそうとするはずなんだから。
「今日はリアの好きなものをたくさん用意したから楽しみにしててね。」
「あら、なにかしら?とっても楽しみです!」
なんて言ってるけど、彼が私の嫌いなものを用意するはずがない。私も覚えてない、ちょっと苦手だなって思った味のものも全部記憶してるんだから。
「ねぇ、リア。」
「はい?どうしましたか?」
「今日の放課後は空いてる?」
少し不安そうな顔で私を伺い見る。
「えぇ、もちろん。」
例え他の予定があっても、ごめんなさいするからそんな不安そうな顔することないのに。
「よかった。」
ゲーム内では暗い笑顔しか見せていないルカ様の、こんな明るい笑顔を初めて見た時は感動したな。
「連れて行きたいところがあるんだ。」
あぁ、推しのこんな顔が見れるなんてこの世界最高すぎる。
「ほら、あの子だわ。」
ふと聞こえてきた声の方をチラリと見ると、噂話の標的はアメリア様だった。
彼女が私と同じ境遇の人ではなかったから、私の身の安全が保証された。とは言っても、やはりできるだけ関わりたくはない。
「リア、行こう。」
私の視線の先に気づいたルカ様が先を促した。
「そうですね。」
私はゲーム内で悪役令嬢だ。少なくとも学園を卒業するまでは気を抜かないでおきたいとは思っている。
と言っても、ゲームから完全にかけ離れたストーリーになった今、そんなに気にしなくてもいいんじゃないかとも思っている。
「気になる?」
あ、ルカ様といるのに考え事をしてしまったわ。もしかして、彼の話を無視したりしてしまったかしら。
「い…」
いいえと言おうとして、黙り込んでしまった。
ルカ様、そのお顔はどう見ても「殺ってようか?」と言ってるようにしか見えないです。罪を犯していない令嬢を殺ったらさすがの王子でもただでは済みませんからやめましょうね??
「…ルカ様がお側にいてくださるのでしょう?」
「もちろんだよ。」
「なら、大丈夫です。」
「そう?何かあれば抱え込む前に言うんだよ。」
「もちろんです。」
そう言ったけど、SOSを言う時は言葉に気をつけよう…。
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