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犯行12
しおりを挟む「さぁ、私はもう協力者ですわ。事件の詳細をできるだけ教えてください。でないと私も必要な情報を伝えられない可能性がありますから。」
燃え尽きた契約書を一瞥して、アメリア様が情報を求めた。
「…それは脅しか?」
「とんでもないですわ。私は天才ではありません。言われてやっと思い出すことだってあります。それが事件の鍵となるかもしれませんでしょう?」
「ルカ様、すぐに信頼できないのは仕方ないかもしれませんが、契約までしたんですから。」
「…わかっている。」
眉を寄せ、不機嫌なご様子。
もう、元々はルカ様が彼女と話してほしいと言ったのに。
「それで、どなたなんですか?犯人は。」
「…マリアンヌ様です。」
「…え?マリアンヌ様って、ライト様の婚約者の?」
「はい…なにか心当たりはないでしょうか?」
「…まず、シグヌンド公爵家はシーズン2になってから初めて出てくるんです。でも出てくるのは公爵様だけ…ご令嬢がいるという情報はあるのですが、名前も顔も登場しません。」
アメリア様によると、シグヌンドという家名は聞いたことがあったけどエミリアの代わりを引き受けたモブと認識していたから特に気にしていなかったらしい。
「公爵の登場シーンは?」
「何度か登場するのですが…娘の話をしていたのは陛下との会話シーンですね。公爵様は娘を溺愛してますから、最愛を殺害した第三王子も犯罪を犯した娘の兄も娘の婚約者にするのは遠慮したい。本当は第一王子に嫁がせたかったが、ヒロインがその場に収まってしまったからできない。第二王子にも婚約者がいる。第一王子の時のようにチャンスを待っていたら娘が行き遅れてしまう。そこで公爵様は陛下に相談することにしたんです。お二人は学生時代の親友だとかで。」
公爵様と陛下の仲の良さは有名だ。確かに相談してもおかしくはない。
「なるほど、そこで隣国との婚約が出たのか。」
「殿下、正解です。ただし、ストーリーはこの婚約が履行される前の物語なので悪役令嬢として登場はしません。ヒロインが他の方と結ばれた時だけ、隣国の王子様と公爵家の娘が結婚したという情報が出てきます。」
なるほど、ヒロインとはさほど関係ない情報なのでイラストは無し、と。
「それにしても、よく覚えていますね。」
「やりこんでいましたから。」
「他に、関係のありそうな情報はないのか?」
「そうですね…あまり社交界には出ていなかったようでした。パーティーなどの際にマリアンヌ様のような見た目の方はいませんでしたから。」
「病弱だったということかしら?」
「というよりも、箱入り娘っていうイメージでしたね。才女で、小さい頃はお転婆だったからこそ心配なんだと言っていました。森で数日行方不明になったこともあるとかで、誘拐が疑われたらしいですよ。数日後に自分で戻ってきたらしいですけど。」
「そんな話、聞いたことないわ。」
「公爵家の娘だからな。あまり大事にして彼女が傷モノ扱いされないように揉み消したのだろう。」
「なるほど…。」
「にしても森か…。」
「少し疑問なんですけど、モブで顔も出てこない割には情報が出てきますね。」
「あぁ、この話はゲーム内じゃないんですの。公式の攻略本に番外編のように小説がついていたんです。」
「私は攻略本は読まないタイプでした。」
「私は攻略するのに必要としなかったけど、その番外編や隠れた情報を知らないというのが嫌で。…オタクのサガみたいなものですね。推しゲームだったので、少しの情報も取りこぼしたくなかったんです。」
アメリア様は前世はゲームオタクでしたか…協力者として最高ですね。
「あぁ、そういえば原作者の名前は眞梨有、通称マリア様と呼ばれていたわね。なんで彼女の名前を聞いた時に原作者を思い浮かべなかったのかしら?」
「なんだって?」
「え?ですから、原作者の呼び名はマリア様で…。」
「はぁ、なるほど。」
「…え、私、そんなに重要なこと言いましたか?私はただ、こんなに話が出てくるのに顔が出ないなんてと思っていたけど、原作者も物語の中で幸せになりたかったんだなと思って…噂では、原作者は隣国の王子推しという話がありましたからそういうことかと。」
「その物語を書いたときはそうかもな。」
私とルカ様の中で浮かんだ仮説は、きっと真実と遠くない。これはとんでもない扉を開いてしまったかもしれない。
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