将来、悲運な結末を迎える令嬢は幸せに生きる

都築稔

文字の大きさ
138 / 150

追求4

しおりを挟む

眞梨有こと俺、利木りき有眞ゆうまは名前からご察しの通り男だ。

俺には5歳離れた姉がいて、望まなくても周りに少女じみたものが溢れていた。
その影響か、物心ついた頃から夢は少女漫画家だった。

当然、周りからは変わり者を扱いされた。
「なんで少年漫画じゃないの?」なんて直接聞いてくる人はマシな方で。
男女だの女々しいだの言われたい放題。特に、好きな人からキモいと言われたのは堪えた。

男が少女漫画を描いたらダメ、なんて法律は聞いたことがない。応募規定にも書いていない。つまりは、なれないことはないはず。

幸い、俺の家族は反対しなかった。母なんかは、やれるだけやってみたらと言ってくれた。だからこそ、俺は心折れずに夢を目指すことができた。ありがたいと思っている。

テスト勉強の間をぬって漫画の投稿。
勉強を疎かにしないことが両親との約束だった。
それだけで好きなことをさせてもらえるならと、文句はなかった。それに、勉強と漫画を描く時間を作るのが精一杯で友だちがいなくても困ることがなかった。

大学は美術を専攻できるところに行き、その頃には友人と呼べる人にも出会えた。
友人には、1人でばかりいたら分からない
世界もあると色んなところに連れて行ってもらった。物語を描くためにも、多くの世界を知っていた方がいいと言われ、それは確かにと友人に言われるがまま連れ回してもらった。彼には本当に感謝している。

それでも俺の漫画が賞をとることはなかった。

持ち込みで出版社に行ってみたりもしたが相手にされず。見てもらえることもあったが、やはり「今の状態では難しい」とアドバイスをもらえる程度で終わる。

俺には才能がないのだろうか。

そう諦めかけていた頃、姉から異世界モノが流行っていることを教えてもらった。

「まずは物語を売り出して、反響があれば漫画にする形はどう?最近はネットで投稿ができるらしいじゃない。私はそういうのもありだと思う。」

なんて姉の言葉にのせられ、しばらくはライトノベルをネット投稿を続けた。
無名なりに反響はあったと思う。それでも大ヒットと呼べるものはなかった。

大学を卒業して、24時間向き合う時間ができたというのに芽が出ない。

出かけるといえば、大学時代の友人と遊びに出かけるくらい。それ以外はずっとパソコンの前で睨めっこを続けていた。

「そういえば有眞って物語かけたよな?」

「もちろんかけるけど…今更どうしたんだよ。」

いつもの如く、友人のヒカルとファミレスでダラダラしていた。
俺は就職していないので、あまりお金を持っていない。それにヒカルが合わせてくれていた。

「俺、今ゲーム作ってるんだよね。」

「ゲーム?」

「そう。乙女ゲームなんだけどさ、乙女な物語書けるやつが周りにいないのよ。だから、有眞書いてくれないかな~って思ってさ。」

乙女ゲームか。俺もしたことはないけど、勉強のために読んだライトノベルの中に乙女ゲームを舞台にしたものがあった。

「でも、俺なんかでいいのか?」

環境が整っていても、未だに成果と呼べるものが1つもない。そんな自分が書いてもがっかりさせるだけではないだろうか。

「有眞がいいの。そう難しく考えずにさ、一度書いてみてよ。」

「わかった。そこまで言うなら、書くだけ書いてみるよ。」

なんて軽い気持ちで書いた物語は、一発で採用された。といっても、細かいところはヒカルのアイデアをもらって書き直したりしたが。

今は“悪役令嬢”が”ざまぁ“されるのが流行りらしい。ゲームだし、悪役はいた方がいいだろう。あとは攻略対象にはコンプレックスを持たせて、ヒロインが攻略する糸口を作る。
悪役令嬢に仲間を作ったのは、俺のちょっとした罪悪感を減らすため。悪者が1人というのは可哀想な気がしたというか。

俺の思いつきで書いた物語はヒカルの手によって昇華され、ゲームは気づいたらシーズン2を出すほどの大ヒットゲームとなっていた。

「な?だから、有眞がいいって言ったんだ。」

「いや、ヒカルがいなきゃ物語は完成しなかったよ。」

「そんなことないよ。シーズン2も好評だし、そろそろ3の制作にかかるか。こういうのは、飽きられないように新しいものをどんどん出さないとな。」

「そういうものか?」

「そういうものさ。というわけで、先生原稿の方よろしくお願いします。」

「はいはい、わかりましたよ。今月中に一度見せれるように、明日から家に引き篭もるわ。」

「了解。その間のことは任せて。今のところバグとかの報告は受けてないし。」

「よろしく頼んだ。」

いつものファミレスを出てヒカルと別れると、俺は真っ直ぐ家に帰った。

ヒカルは俺の恩人だ。親友とも言える。彼が彼がいなければ今の自分はなかった。

もちろん、当初の夢とは違う。それを気にしたヒカルが、このゲームを最終的には漫画にもしようと言ってくれている。
本当にいい奴だ。俺には勿体ないくらい。

つい最近までと180度違う生活を送れている。
本当はヒカルと会うのだって、もうファミレスじゃなくてもいい。2人ともそれはわかっているけど、お互い口には出さなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………

naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます! ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話……… でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ? まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら? 少女はパタンッと本を閉じる。 そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて── アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな! くははははっ!!! 静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します

凛 伊緒
恋愛
伯爵令嬢へレア・セルティラス、15歳の彼女には1つ下の妹が出来た。その妹は義妹であり、伯爵家現当主たる父が養子にした元平民だったのだ。 自分は『ヒロイン』だと言い出し、王族や有力者などに近付く義妹。さらにはへレアが尊敬している公爵令嬢メリーア・シェルラートを『悪役令嬢』と呼ぶ始末。 このままではメリーアが義妹に陥れられると知ったへレアは、計画の全てを阻止していく── ─義妹が異なる世界からの転生者だと知った、元から『乙女ゲーム』の世界にいる人物側の物語─

本の通りに悪役をこなしてみようと思います

Blue
恋愛
ある朝。目覚めるとサイドテーブルの上に見知らぬ本が置かれていた。 本の通りに自分自身を演じなければ死ぬ、ですって? こんな怪しげな本、全く信用ならないけれど、やってやろうじゃないの。 悪役上等。 なのに、何だか様子がおかしいような?

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

処理中です...