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追求4
しおりを挟む眞梨有こと俺、利木有眞は名前からご察しの通り男だ。
俺には5歳離れた姉がいて、望まなくても周りに少女じみたものが溢れていた。
その影響か、物心ついた頃から夢は少女漫画家だった。
当然、周りからは変わり者を扱いされた。
「なんで少年漫画じゃないの?」なんて直接聞いてくる人はマシな方で。
男女だの女々しいだの言われたい放題。特に、好きな人からキモいと言われたのは堪えた。
男が少女漫画を描いたらダメ、なんて法律は聞いたことがない。応募規定にも書いていない。つまりは、なれないことはないはず。
幸い、俺の家族は反対しなかった。母なんかは、やれるだけやってみたらと言ってくれた。だからこそ、俺は心折れずに夢を目指すことができた。ありがたいと思っている。
テスト勉強の間をぬって漫画の投稿。
勉強を疎かにしないことが両親との約束だった。
それだけで好きなことをさせてもらえるならと、文句はなかった。それに、勉強と漫画を描く時間を作るのが精一杯で友だちがいなくても困ることがなかった。
大学は美術を専攻できるところに行き、その頃には友人と呼べる人にも出会えた。
友人には、1人でばかりいたら分からない
世界もあると色んなところに連れて行ってもらった。物語を描くためにも、多くの世界を知っていた方がいいと言われ、それは確かにと友人に言われるがまま連れ回してもらった。彼には本当に感謝している。
それでも俺の漫画が賞をとることはなかった。
持ち込みで出版社に行ってみたりもしたが相手にされず。見てもらえることもあったが、やはり「今の状態では難しい」とアドバイスをもらえる程度で終わる。
俺には才能がないのだろうか。
そう諦めかけていた頃、姉から異世界モノが流行っていることを教えてもらった。
「まずは物語を売り出して、反響があれば漫画にする形はどう?最近はネットで投稿ができるらしいじゃない。私はそういうのもありだと思う。」
なんて姉の言葉にのせられ、しばらくはライトノベルをネット投稿を続けた。
無名なりに反響はあったと思う。それでも大ヒットと呼べるものはなかった。
大学を卒業して、24時間向き合う時間ができたというのに芽が出ない。
出かけるといえば、大学時代の友人と遊びに出かけるくらい。それ以外はずっとパソコンの前で睨めっこを続けていた。
「そういえば有眞って物語かけたよな?」
「もちろんかけるけど…今更どうしたんだよ。」
いつもの如く、友人のヒカルとファミレスでダラダラしていた。
俺は就職していないので、あまりお金を持っていない。それにヒカルが合わせてくれていた。
「俺、今ゲーム作ってるんだよね。」
「ゲーム?」
「そう。乙女ゲームなんだけどさ、乙女な物語書けるやつが周りにいないのよ。だから、有眞書いてくれないかな~って思ってさ。」
乙女ゲームか。俺もしたことはないけど、勉強のために読んだライトノベルの中に乙女ゲームを舞台にしたものがあった。
「でも、俺なんかでいいのか?」
環境が整っていても、未だに成果と呼べるものが1つもない。そんな自分が書いてもがっかりさせるだけではないだろうか。
「有眞がいいの。そう難しく考えずにさ、一度書いてみてよ。」
「わかった。そこまで言うなら、書くだけ書いてみるよ。」
なんて軽い気持ちで書いた物語は、一発で採用された。といっても、細かいところはヒカルのアイデアをもらって書き直したりしたが。
今は“悪役令嬢”が”ざまぁ“されるのが流行りらしい。ゲームだし、悪役はいた方がいいだろう。あとは攻略対象にはコンプレックスを持たせて、ヒロインが攻略する糸口を作る。
悪役令嬢に仲間を作ったのは、俺のちょっとした罪悪感を減らすため。悪者が1人というのは可哀想な気がしたというか。
俺の思いつきで書いた物語はヒカルの手によって昇華され、ゲームは気づいたらシーズン2を出すほどの大ヒットゲームとなっていた。
「な?だから、有眞がいいって言ったんだ。」
「いや、ヒカルがいなきゃ物語は完成しなかったよ。」
「そんなことないよ。シーズン2も好評だし、そろそろ3の制作にかかるか。こういうのは、飽きられないように新しいものをどんどん出さないとな。」
「そういうものか?」
「そういうものさ。というわけで、先生原稿の方よろしくお願いします。」
「はいはい、わかりましたよ。今月中に一度見せれるように、明日から家に引き篭もるわ。」
「了解。その間のことは任せて。今のところバグとかの報告は受けてないし。」
「よろしく頼んだ。」
いつものファミレスを出てヒカルと別れると、俺は真っ直ぐ家に帰った。
ヒカルは俺の恩人だ。親友とも言える。彼が彼がいなければ今の自分はなかった。
もちろん、当初の夢とは違う。それを気にしたヒカルが、このゲームを最終的には漫画にもしようと言ってくれている。
本当にいい奴だ。俺には勿体ないくらい。
つい最近までと180度違う生活を送れている。
本当はヒカルと会うのだって、もうファミレスじゃなくてもいい。2人ともそれはわかっているけど、お互い口には出さなかった。
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