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第1章
新しい日常の始まり〜ジェイドsaid〜
しおりを挟む彼女の名前はアカリというそうだ。なんだか、ピッタリの名前だと思った。
アカリは、自分が数日眠っていたと聞いて驚いてるようだ。すぐに慌ててシャワーを浴びたいと言い出したんだけど、あれだけ体調を崩した後なんだからと断った。代わりに桶に温かいお湯を入れて、新しいタオルと一緒に持っていった。服は、とりあえず僕が昔着ていたものを着てもらおう。
着替えている間に、何か作っておこう。この数日間、何も口にしてないんだ。当然、お腹が空いているだろう。
ミルク粥を作ることにした。
消化の良いものを作ろう。そして、数日分の栄養を少しでも補えるようなものがいい。そう考えて、思いついたのがミルク粥だった。
完成したものを手に持って、扉をノックした。
まだ着替えてるかもしれないからね。
「お腹空いてない?」
そう尋ねると、彼女の顔が少し緩んだように見えたのでサイドテーブルにトレイを置いた。
「空いてます。・・・いただきます。」
モグモグと食べ進める彼女を見守った。
そりゃあ、お腹空いてるよな。
すると、ポロリと彼女の瞳から涙が溢れた。
ポロリ、ポロリと。
「どうしたの?・・・大丈夫?」
「え?」
自分が泣いていることに気付いていないようだ。
そっとハンカチを差し出してもよくわかっていないようで、頬に落ちた涙を拭いた。そこで、やっと彼女も自分が泣いているとわかったようだ。それでも涙はとまらない。むしろ、自覚して余計に溢れてくるようになった。
なにかあったんだろうな。
じゃなければあんな状態でここにくるはずがない。
側に置いていた椅子に座り、彼女の背中をさすった。
大丈夫。もう、大丈夫だよ。という気持ちをこめて。
今まで、どれだけ涙を堪えていたのだろう。
こんな細い体から、どうやったらそんなに出てくるんだろうってくらい彼女は泣いた。
泣いて、泣いて、泣いて。
そして泣き疲れた彼女は、プツリと糸が切れたように眠ってしまった。
そっと布団をかけて、起こさないように部屋を出た。
何が彼女をあんなに泣かせたのか。
辛いのか、寂しいのか。僕には何の情報もない。
ここに来た理由はわからないけど、ここにいる間はたくさん笑ってもらおう。
まずは美味しいご飯からだな。
明日の朝は何を作ろうか。
長年、1人でここに住んでいる。この家で誰かに料理を振る舞う機会はそんなにない。
食器を洗いながら、明日からのことを思って頰が緩めた。
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