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第1章
初デート〜ジェイドsaid〜
しおりを挟む僕は今、猛烈に悩んでいる。
手を握りたい。握ってもいいだろうか。
迷子にならないようにとか、はぐれたらいけないから、とか言えば納得してもらえるだろう。でも、それじゃ気持ちは届かない。
手を繋いで、なんでもないフリをするか?そうすることがあたかも当たり前のように。いや、でも聞かれたらなんで答えたらいい?絶対、はぐれないようにって言っちゃうやつだ。
堂々と繋ぎたかったって言ってしまう?いや、それは早い。もうちょっと覚悟決めてから言いたいな。
うわぁぁあ!!どうするよ?!
アカリは、隣でキョロキョロと辺りを見回している。きっと僕が悩んでるなんて気付かないだろう。
キラキラした顔で笑いやがって。可愛いぞ、このやらう。
・・・・・・はぁ。一時休戦しよう。
「アカリ、お腹空いてないか?」
「言われてみれば、空いてますね。」
「よし、このまま真っ直ぐ行くと大広場に出るんだけど、そこに屋台が並んでるんだ。ゆっくり選びながら食べないか?」
「いいですね!行きましょうっ!自覚したら、途端にお腹空いてきました。」
「えっ!!」
にっこりと笑ったアカリは、僕の手を引いて走り出した。
え!え!え!
まさか、アカリから繋いでもらえるなんて。
あぁ、走るなんてもったいない。早く着いてしまうじゃないか。
「いい匂いしてきましたね。」
「そうだね。」
ポーカーフェイスを装って、徐々にスピードを落とす。そうすると、僕のスピードが落ちたことに気が付いたアカリも落としてくれた。
「どうしたんですか?」
って聞かれたら
「ぶつかると危ないだろう?」
と答えるつもりだったが、聞かれなかった。
作戦成功だな。これで、もう少しだけ手を繋いでいられる。
「ここですか?」
「あぁ、こっちから順に見ていこうか。気になるところがあれば言って。」
「わかりました。」
僕の思惑なんて知らないアカリは、手を繋いだまま歩いてくれる。
もしかして、誰かと手を繋いだことがあるのだろうか。
慣れているのか、僕が相手にされてないだけか。
どっちだったとしても、ちょっと悲しいな・・・。
「どれも美味しそうですね。・・・あ。私、あれ食べたいです。」
「串焼き?」
「いいね、買おう。すいません、肉串を2本と海鮮焼をいただけますか?」
「はいよ。500ディールね。」
「ありがとうございます!・・・うわぁ、美味しそうですね!」
アカリは串を受け取って、嬉しそうに笑っている。
「あっちにベンチがあるんだ。あそこに座って食べよう。」
手が離れたことを少し淋しく思いながら、ベンチへ向かう。
「先に食べておいて。飲み物を買ってくるよ。直ぐ戻る。」
「あ、ありがとうございます。」
さて、どこで買おうかな。そうだ!あの店の蒸しまんが美味しかったな。そこで飲み物も買おう。
ベンチの正面方向、噴水の向こう側にある屋台へ向かう。学生時代、よくここの蒸しまんを食べた。
「おじさん、蒸しまん2つと飲み物を2つもらえるかい?」
「ジェイドじゃねぇか!久しぶりだな。おまけにこれ持ってけ。新商品のスイーツ饅頭だ。」
「ありがとう。これは・・・ごま?」
「そうだ。中に餡子が入っててな、甘くて美味いんだ。」
「へぇ、ごまと餡子って合うんだ。」
「だろ?リラル発祥のスイーツだ。」
「ふぅん。連れが甘いものが好きだから、助かるよ。じゃあ、おじさんまたね。」
「おう!また来いよ。」
ごまのスイーツ饅頭か。面白いものをもらえたな。
アカリは・・・あれ、まだ食べてない。待っててくれたのか。
「お待たせ。」
「お帰りなさい。飲み物、ありがとうございます!・・・他にも何か買ったんですか?」
「あぁ、学生時代によくいった屋台で蒸しまんをね。」
「ジェイドさんのオススメですか!」
アカリは嬉しそうに笑った。
「うん、どうぞ。熱いから気をつけてね。」
ここはいつも蒸したてをくれるから、知らずに食べると舌を火傷する。
「はぁい。いただきます・・・あつっ!」
「もう、ほら。言ったそばから。大丈夫?」
「大丈夫です。」
笑顔で答えてくれたけど、これは確実に火傷したな。
そう思って、冷たい飲み物を手渡た。これで少しは舌が冷えるだろう。
左手に肉串、右手に蒸しまん。
嬉しそうにもぐもぐと食べる様子はリスみたいだ。
そのうち尻尾と耳が生えてくるんじゃないだろうか。
・・・うん、久しぶりに食べたけど美味しいな。
ノアとも、じいさんとも思い出のある味。アカリとの思い出も作れた。
「あぁ、ソースついてるよ。」
「え、うそ!」
「違う、そっちじゃない。」
「っ!!!」
固まった、アカリの顔を見て思う。
あ、しまった。
口元を拭って、その指を舐めた。
アカリの顔は真っ赤だ。自分の顔も赤くなる予感がして、顔をそらした。
何気ないフリをして食事を再開するが、バレてるだろうか。
チラッと様子を伺うと、僕と少し反対方向に顔を向けて食べていた。耳はまだ赤い。
「海鮮焼もあるから、食べて。山では海鮮が獲れないから、さ。」
気まず過ぎて、話題を提供する。
「あ、ありがとう、ゴザイます。美味しそう・・・デすね。」
あっちも気まずいんだろう。カタコトになっている。
謝るのも、なんか違うしな・・・。
トレイに入れられた海鮮焼を2人で黙々と食べる。
あ、そうだ。
「さっきの店で、ごまのスイーツ饅頭をもらったんだ。」
「ごまのスイーツ饅頭?」
紙袋の口を広げて、中身を見せた。
「あぁ、ごま団子ですね。美味しそう。」
そう言って、何気なく答えるから驚いた。
「知ってるのか?」
「え、知らないんですか?」
「この街では、一般的ではないな。僕も初めて見た。」
それを聞いて、アカリも驚いている。あちらの世界では一般的に売られていたのだろうか。
「これ、中に餡子が入ってるやつですよね?」
「そうだな。」
「じゃあ、知ってますね。」
そうなのか・・・・・・。未知のスイーツを前に、2人で盛り上がれたら雰囲気も変わるかと思ったんだが。
「これ、帰ってから食べませんか?お腹いっぱいですし、これに合うお茶を買っていきましょう。」
「いいね、そうしようか。他に行きたいところを見かけたら、そこも寄って行こう。」
「はい。」
歩き出した僕に、アカリがするっと手を絡めてくる。思わず振り向いたら、笑顔を返された。
嘘だろ、可愛いぃぃ。何この生き物。
この後ずっと、ポーカーフェイスを保つのに必死になった。
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