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第1章
手の温もり
しおりを挟むジェイドに連れられてお茶屋さんにやって来た。もらったごま団子に合うお茶を探すために。
日本茶系か茉莉花茶があればいいんだけど、茶葉を見ただけで判別つかないし・・・。そんなにお茶に詳しいわけじゃないからなぁ。
それっぽいのを試飲できるか聞いてみよっと。
「すいません。これとこれとこれを試飲できますか?」
「試飲ね。ちゃっと待ってな。」
恰幅の良いおばちゃんが、奥に入って行った。
とても話しやすくて、大阪のおばちゃんって感じの人だ。
(大阪の生まれじゃないから、勝手なイメージだけど。)
ジェイドは隣のコーヒー店で豆を選びに行ってしまった。
それにしても、さっき食べた屋台のご飯はどれも美味しかった。ジェイドなんか、ちゃっかりオススメを買ってきてくれるし。学生時代はこの辺りに住んでたって言ってたから、きっと何度も通ったところだよね。そういうの、教えてもらえるの嬉しいな。学生時代のジェイドも可愛かったんだろうな。
1人で思想をトリップさせていると、ついさっきのことを思い出した。ソースを拭ってくれた時のこと。
うわぁぁぁ!!そんなことまで思い出さなくていい!折角、忘れかけてたのに!
まず、口にソースをつけていたということだけで恥ずかしい。それをジェイドが素手で拭ったのは意味がわからなくて、その指を舐めちゃうとか、もう。もう!キャパオーバーだよ!!
さらっとするくらいだから、そういうことに慣れてるのかもしれない。直ぐに顔をそらされちゃって確認できなかったけど、耳が赤かったのは、きっと私があんまりにも顔を赤くするから移ってしまったとかだろう。
だって、あの顔だよ?女の子がほっとくわけがない。性格だって良いし。
学生時代、同じクラスにジェイドがいたら私も憧れただろうな。少なくとも目の保養に、癒しにしていただろう。同じクラスだった人が羨ましいな。
「ほら、持ってきたよ。そこ座りな。持っていってあげるから。」
おばちゃん店主が奥から出てきた。手には湯呑みを3つ乗せたトレイを持っている。
「ありがとうございます。」
「熱いから気をつけてなよ。」
店の端に置いてあるベンチに腰掛ける。
隣に置いてもらったトレイから、1番手前の湯呑みを手にした。
見た目は薄茶色。匂いは・・・少し香ばしい。
「これは何茶ですか?」
「それはね、コキの根のお茶だね。便秘にもいいんだよ。」
へぇ、ごぼう茶みたいな感じかな。
この世界は基本的に現世と同じ食べ物が存在しているが、存在しない食べ物もある。
コキってどんな食べ物だろう。後でジェイドに聞いてみようかな。
一口飲んでみると、少し苦くて土っぽい。
うーん、これじゃないなぁ。
次に、隣の湯呑みを手に取って飲んでみた。
うん、美味しい。
「これは?」
「それはコーンのヒゲでできたお茶だよ。」
コーン茶ね。これは買っておこうかな。
最後の一つを手に取って匂いを嗅ぐ。
いい匂い!これは日本茶だ!
「それは若いお茶の葉っぱからできたものよ。」
やっぱり!
ごま団子にはコーン茶の方が合いそうだけど、日本人として煎茶も欲しいな。
「アカリ、決まったかい?」
「ジェイド!」
手に紙袋を持ったジェイドが、お店に入って来た。
「いらっしゃい。」
「えーと、煎茶とコーン茶をください。」
「はいよ。」
おばちゃん店主は、それぞれ缶に茶葉を詰めてくれた。
「ライナ、アールグレイとルイボスの茶葉ももらえるかい?会計は一緒でいいよ。」
あ、ライナさんって言うんだ。
「もちろんさ。いくらでも買っておくれ。オマケもつけておくからさ。」
手際良く茶葉を缶に入れると、紙袋にまとめて渡してくれた。
袋から、茶葉のいい匂いがする。
「ありがとうございます。」
「また来てね。」
「はい!」
餡子にはやっぱりアジア系のお茶よね。お店に置いてあってよかった。
ほっこりした気持ちでジェイドの後ろを歩いた。
★
中世のヨーロッパ風な街並みは、歩いているだけでもテンションが上がる。
あそこは骨董品屋かな。日本ではあんまり見かけなかったな。
窓から少し見えた商品は、年代物の食器や人形が並んでいた。
年代物の人形は・・・ちょっといらないかな。怖いし。
あ、あそこは化粧品店ぽい。ボディクリームとか売ってるかな?化粧水とか欲しいなぁ。でも、この世界で化粧品が高かったりしたらどうしよう。欲しいと言えばジェイドは買ってくれるだろうけど・・・。街にいる女性はあんまりメイクとかしてないから、庶民的な品じゃない気がするんだよな。
あそこはアクセサリー店かな?あぁ、手を繋いだカップルが入って行く。指輪でも買うのかな?こっちに、指輪の文化があるのかわからないけど、2人とも幸せそうな顔だったな。
「何か気になる店あった?」
「ううん、別にいいかなぁ。」
「そう?じゃあ、僕の買い物に付き合ってもらえる?」
ジェイドの買い物?なんだろう。
「もちろん!」
ジェイドが私の左手を握って、Uターンする。
え、戻るの?通り過ぎる前に言ってくれたらよかったのに。
そんな私の戸惑いを放置して、どんどん歩いていってしまう。
「え、ここ?」
連れてこられたのは、先ほどの化粧品店。
ここで何を買うんだろう・・・。
「いらっしゃいませ。」
長い髪を後ろで1つにまとめた女性店員が近づいて来た。ジェイドの顔を見て、少し頬を赤らめている。
「すいません、彼女に肌のケアセットを買ってあげたいんですがよくわからなくて。」
「彼女さん・・・ですか?」
「はい。」
ちょっと、ジェイドさん??言い方を考えないと店員さんが勘違いを起こしている気がするのですが・・・。
「少々お待ち下さいね。」
ガッカリした顔で店員さんが私の方にやって来る。
「少し手を触ってもいいでしょうか?」
「え?はい、どうぞ。」
空いている左手を差し出すと、何かを確かめるように手の甲を触る店員さん。
肌質の確認かな?触っただけでわかるものなの?
「そう・・・ですね。うん、いくつか候補を持って来ますね。」
さすが化粧品店。ケアセットにも何種類かあるみたいだし、あれだけで候補を絞れるなんて。
「どれもお客様の肌に合うと思うのですが、右からしっとり系、さっぱり系、その中間のものになります。お好みございますか?」
うーん、現世ではこだわってる時間がなくて、結局肌がボロボロだったからな。
「お悩みでしたら、間をとってこちらにしましょう。しばらく試してみて、決めるといいかと思います。」
「なるほど。」
さすが店員さん。
「もし使っていて、肌に違和感があれば使わないでくださいね。違う新しいものをお届けしますので。」
え、新しいのを?!そんな申し訳ないことできないよ。
「肌が炎症を起こしてしまったら大変ですからね。こちらが選んだもので炎症を起こしてしまうなど、信用問題ですから。」
過去にクレームをつける人でもいたのかもしれないな・・・。
店員さんチョイスのケアセットと薄ピンクの口紅を1つ購入することにした。
私のものばっかりで、ジェイドになんだか申し訳ない。どうにかして私もお金を稼ぐ方法を考えた方がいいかもしれない。
ただ、ありがとうとかごめんと言ってもジェイドは受け取ってくれない。だからせめて、嬉しいって気持ちを表すために大切に使わせてもらおう。多分、その方が喜ぶ。
さすがにこれ以上何かを買ってもらうわけにはいかないので、渋るジェイドを馬車に押し込んで帰宅した。
あー、疲れたけど楽しかった!
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