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第3章
童話〜ノアsaid〜
しおりを挟む従業員をいつものようにアカリちゃんの元へ行かせていた。大抵、帰ってきた従業員は手紙も一緒に届けてくれる。今日も、従業員が手紙を届けてくれていた。
「へぇ、あいつらまた街に来てたんだ。」
ジェイドはアカリちゃんにアクセサリーをあげたらしい。なんであんなにされて気づかないのかわからないけど、彼女はジェイドの好意に全く気づいていない。
手紙に書かれた内容だけでも、想像したら口から砂糖が出そうだ。
「『竜と運命の乙女』か・・・」
じいさんが亡くなってから、その話はあまりしなくなった。話さなくなっただけで忘れたことはないけど。
『ワシはまだ竜がこの世にいると思っとる。』
そう初めて言われた時は、そんなことないだろ、あれはお伽噺だって行った覚えがある。
嫌がるジェイドを連れて、家より山頂に近い方角にほこらがあるか探しに出かけたこともあったな。結局、見つからないどころか遭難しかけてじいさんにめちゃくちゃ怒られた。じいさんが見つけてくれなければ、冗談じゃなく死んでたな・・・。
じいさんとの思い出に浸りながら、アカリちゃんの刺繍が入ったハンカチを見つめた。
彼女がジェイドの元に来てくれてよかった。じいさんが亡くなって酷く落ち込んだ彼を見てると、じいさんだけじゃなくて親友まで失うんじゃないかと本気で心配した。だから今の生き生きした彼を見ると、自分のことのように嬉しい。
恋愛経験は俺の方があるが、人生を変えるような出会いはまだない。アカリちゃんが来てからまだ1度しか2人そろって見ていないのに、知らないジェイドばかり見ている気がする。
多分この世界で1番、2人の幸せを願っているのは自分だと思う。じいさんが生きてたら、じいさんに負けてたかもしれねぇけどな。
アカリちゃんが刺繍したハンカチは、どんどん人気が上がっている。噂が人を呼んで謎の美女が作っただの、これを想い人にプレゼントしたら上手くいくとか色々言われている。・・・本人は知らないけど。村や街で野菜を卸しているジェイドは耳にしているだろう。
それにしても、嵐の日に突然やって来たなんてアカリちゃんは運命の乙女みたいだよな。どこから来たかは教えてくれなかったけど、物語みたいなことがそうそう起こるわけがない。どこか違う国から逃げ出してきたとか、そんなとこだろう。他国では奴隷売買をしてるところもあるらしい。そこから逃げて、この国で働いている人もいると聞く。大抵、元奴隷だったことを隠しているから実際に誰かは知らないけど。アカリちゃんも1週間寝込んだって言ってたし、こき使われてたんだろうな。
お互い出会えてよかったって思えるような関係を、ずっと続けていってほしい。俺にできることなら、何でも手伝ってやるよ。なんて本人には絶対言ってやらないけど、本当に思ってる。
「あら、今日も素敵なハンカチね。私、アカリちゃんに刺繍を習いに行こうかしら。」
「ハハッ。きっと喜んで教えてくれるよ。」
姉もアカリちゃんを気に入っている。ジェイドのことだって。
さぁ、手紙の返事はなんて書こう?
2人の生活が垣間見えるこの手紙を、僕がどれだけ楽しみにしていることか。きっと2人は知らないんだろう。
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