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第3章
贈り相手が不在のプレゼント
しおりを挟む今日は念願のベンチ受け取りの日。
これからは外でティータイムもできるし、アカリの仕事もできるようになる。でも、今の時期は暑すぎて外にずっといるのは心配だな。
「おはよう。」
「おはよう、アカリ。今日は何飲む?コーヒーでいい?」
「うん、お願い。」
アカリが席に着いたのを見て、コーヒー豆を挽き始める。
「今日、やっとベンチが家に来るよ。」
「あれ、今日だっけ?ごめん、刺繍のことで街に用事があって・・・」
なんだろう。ノア、なんか言ってたっけ?いやでも、個人的に買いたいものや見たいものがあるのかもしれないし・・・。
「わかった。コットさんには言っとくよ。」
「ありがとう。お礼を言っておいて。」
アカリがキッチンに来て、朝ご飯を運んでくれる。
今日の朝ご飯はパンケーキ。カリカリベーコンと目玉焼きを乗せてある。
「今日も美味しそうだね。」
「食べ始めてていいよ。」
「ううん、待っとくよ。」
いつも通り、コーヒーの雫が落ちるのはゆっくりだ。その間、アカリの顔を眺めるのが日課になっている。
ホットケーキが冷めちゃうな・・・。先に淹れておけばよかったかもしれない。
「あ、お昼は屋台で食べようと思ってるんだけど、もしかしてもう準備しちゃった?」
「いや、まだだよ。」
「そっか、よかった。最近、昼ご飯も作ってくれるからさ。」
まぁ、餌付け作戦中だしね。
「私、お昼作っちゃおうかな。冷蔵庫に入れておくよ。」
「やった、ありがとう。」
そういえば、アカリの手料理は久しぶりかもしれない。素直に喜んでおこう。
淹れ終えたコーヒーをテーブルに運ぶ。そして、今日の朝ご飯を食べ始めた。
★
お店に入ると、クマみたいな体躯の男性がカウンターから顔を出した。
「おう、坊主!来たか!」
「こんにちは。」
「ありゃ、嬢ちゃんは一緒じゃないのかい?」
「偶然、街に用事があるみたいで。」
「・・・お前、本当にその女の子は存在してるんだよな?」
失礼だな。僕をどんなやつだと思ってるんだよ。
「または、紹介できないような変な女に捕まってるんじゃないだろうな?」
「もう、違うよ!ノアなら彼女に会ったことがある。仕事もしてるから、確認したらいいよ。」
まだそんな顔して!コットさんはアカリ運がないんだよ。本当に偶然なんだから。または、日頃の行いが悪いんじゃない?
「それより、完成したんでしょ?」
「・・・あぁ、見せてやるよ。」
着いて行った倉庫に、アカリが描いた絵と同じモノが置かれている。
さすがコットさんだ。他の人じゃこうはいかないだろう。色もサイズ感もイメージ通りだ。これなら、きっと喜んでくれるはず。
「・・・すごいね。最高だよ!」
「あったりめぇよ。ハンパな仕事はしねぇ主義だからな。」
一応、動作の確認をして畳めるものは畳んでいく。
今日は荷馬車で来たから全部を一度に運べるはずだ。
コットさんと2人でなら、受け取り作業はすぐに終わった。
「お前、本当の本当に、次は嬢ちゃん連れてこいよ。」
「わかったって。」
「ほんとかぁ?」
うるさいなぁ。
軽く睨みつけても、コットさんは全然動じない。
お礼を言って、この場所から退散することにした。お礼の言葉が少し雑だったのは仕方がないと思う。
家に着いたのはお昼頃。
アカリはお昼を持って行ったし、帰ってくるのは夕方くらいだろう。
せっかくだから、受け取ったモノを立てて食べることにした。本当ならアカリと2人がよかったけど、先に試して不都合がないか確認しておこう。
そうは思っても、作ったのはコットさんだ。素材は木だが、丁寧にかけられたヤスリのおかげで表面は滑らかだ。トゲが刺さる心配はないだろう。折り畳むまでに着いた金具で指を挟む心配も、とりあえずしなくて大丈夫そうだ。
他にも色々想定して確認してみたが、安全が確認できただけだった。
昼食を食べ終え、畑に水をやる。今日、収穫した方が良さそうなものは晩ご飯用に採っておく。
家に僕がいて、アカリがいない状態はこれが初めてだ。ずいぶんと静かに感じる。別にアカリは騒がしいタイプでもないのに、いないだけでこんなに変わるんだな。
段々とその静けさに耐えられなくなって、室内をウロウロしてしまう。
そうだ!お菓子でも作って待っておこう。他のことをして気を紛らわせる作戦だ。
カスタードシュークリームにしよう。プリンもついでに。
これでアカリがいつ帰ってきても大丈夫!早く帰ってこい!!
・・・なんて思っていたのに、その日、アカリは帰ってこなかった。
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