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第3章
アカリの過去2
しおりを挟む経理部に戻ると果穂も町田も普通に働いていて、さっきの話は嘘なんじゃないかという気持ちになる。
そういえば、さっきの女性の名前を聞いていない。
「明里!遅かったね。そんな顔して・・・あ、もしかしてお腹でも壊した?」
「もう、違うよ。」
戻ってきた私に気づいて、果穂が声をかけてくる。本当に彼女が相手だったのだろうか。
確実なことがわからないうちは、前と変わらない態度を心がけないと。
私の席と果穂の席は近い。といっても、向かい側の2つ隣なのですぐ話せるってわけでもない。私が1番端の席なので、通りかかるときによく話しかけてくるのだ。ちなみに町田は私の隣に座っている。
「・・・あの、瑞田さん。」
「ん?どうかした?」
パソコンを起動させていると、町田が声をかけてきた。
「今日なんですけど、仕事終わりにご飯行きませんか?少し相談したいことがありまして。」
声のトーンを抑えて話してくるところからして、果穂のことだろうか。
「わかった。今日の仕事終わりね。」
「ありがとうございます。」
他部署の女性から話を聞いた後に町田から相談があるなんて、タイミングが良すぎる。その時の私はそんなことに気づかなかった。
定時で仕事を終わらせて、今日は先約があると果穂に伝えて会社を出た。町田が会社から一緒に行かずに、会社から一駅先で待ち合わせしたいと言ったからだ。何かあった時、私に相談しているとバレないようにするためだろう。
「ごめん、待たせた?」
「いえ、大丈夫です。瑞田さんは辛いもの食べられましたっけ?」
「うん、大丈夫。」
「じゃあ、韓国料理でオススメの店があるのでそこにしましょう。この近くなんです。」
駅の近くにある路地を、町田の後に続いて歩いた。仕事を終えたビジネスマンだろう。駅近はスーツを着た人で溢れかえっていた。
「ここです。」
「いらっしゃいませ。2人?こちらの席どうぞ。」
「ありがとうございます。」
韓国人の夫婦が営む店のようで、店内のポスターやTVに流れる映像も韓国のものだった。ここまで本格的な韓国料理店は初めてかもしれない。
「すいません!ニラチヂミとチャプチェ、キンパ、トッポギ・・・瑞田さんは何食べます?」
「えっと、サムギョプサル食べたいかな。」
「あとサムギョプサルください!飲み物はマッコリで・・・」
「私も同じので。」
「マッコリ2人分で!」
「は~い!ありがとうございます!」
注文の仕方が慣れている。本当によく来るのだろう。
しばらくすると2人分のマッコリが運ばれてきた。
「乾杯!」
「・・・うん、美味しい。」
私の言葉に微笑みを返して、町田は姿勢を正して座り直した。それを見て、本題に入りたいのだと察する。
「あの、ですね。今日お話ししたいのは三村さんのことでして・・・」
やっぱりか。
「私、見ちゃったんです!三村さんが男の人からアクセサリーをもらっているところを。」
言い出しにくそうに、それでも私の目を見て話してきた。
「・・・それはいつの話?」
「確か・・・去年のクリスマスのことです。」
町田は手を顎に当て、少し考え込んでから答えた。
「クリスマス?」
果穂に恋人がいたなら、クリスマスは確かにアクセサリーをもらうにはピッタリの日だろう。しかし去年のクリスマスとなると少しおかしい。確か去年のクリスマスは私と飲みに行こうとして、お店が空いていなかったから私の家で宅飲みをすることになったのだ。
「リア充は爆発しろー!」
なんて果穂が言うのを笑って聞きながら。
24.25日と両方を過ごしたわけじゃないから、片方は彼氏と過ごしていたかもしれない。でもあの言葉が嘘だとは思えない。
「どこで見たの?」
「会社の最寄駅近くのビル内にあるフレンチレストランですよ。あの最上階にある・・・」
「町田にも彼氏がいたのね。」
「え?」
「だって、フレンチレストランで見たんでしょう?」
「違いますよ~!私が見たのはそこに入って行くところです。私に彼氏なんていません。」
ん??レストランに入ってないのにプレゼントを渡すところは見たの?どこでプレゼントの受け渡しをしてたんだろう。店の前ではしないだろうし。
「プレゼントを渡すところを見たのよね?」
「そうです。・・・もしかして、私のこと疑ってます?そりゃ、瑞田さんは三村さんと仲が良いから信じたくないでしょうけど・・・。」
しょげた風に話す町田を見ても、どこか本当のことに思えない。"仲がいいから"なんて贔屓目を抜いても、なんだか違和感を感じている。
そもそもあのビルは最上階にはフレンチレストランしかない。彼女が見た"入っていくところ"とはエレベーターのことだろうか?いや、でも"そこに入っていくところ"を見たって言ってるし。"そっち方面に行った"ところではないんだよな。
拗ねた表情を続ける町田に謝ってなだめてはいるが、心がざわざわしていて頭はそれどころじゃない。
すると、ふと思い出した。先程顎に手を当てた時に見えた町田の指を。
町田って普段からアクセサリーつける人だっけ?
そう考えた先に行き着いた答えが恐ろしくて、笑顔を保てなくなった。
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