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第3章
アカリの過去3
しおりを挟む「・・・ごめん。ちょっとお手洗いに行ってくるね。」
「あっ、はい、どうぞ。」
個人経営の店だ。お手洗いはそこまで広くない。長居したら怪しまれるだろう。
町田は彼氏はいないと言ってた。彼氏とは言ってないけど、彼女と行ってました!的なこと?
それとも、副業でアルバイトしてたとか?うちの会社、副業アリだっけ?だから隠してるのかな。
果穂はそんなことしないと信じられるのに、町田ならありえるかもしれないと考えてしまう自分が嫌だ。
町田が嘘をついていたとして、何の利益がある?
果穂を貶める理由は?
わからないことが多すぎてパンクしそうだ。
コンコンコンッ!
「瑞田さん!大丈夫ですか?」
え、そんな待たせたっけ?
「っうん!大丈夫・・・じゃない!予定外にきちゃってどうしようかと思ってたところ。」
「えぇ、生理ですか?私も今持ってないし・・・買ってきます!ちょっと待っててください。」
パタンッと扉が閉まる音がする。
危なかった。なんとか誤魔化せたし、町田が帰ってくるまで時間が稼げる。嘘をついたのは悪いと思ってるけど、この際仕方ない。
私が気になっているのは彼女の指についたリング。左薬指についていたように見えた。なのに・・・。
どうしよう・・・。
こんな時に頼りになる男性の知り合いはいない。
そうだ!果穂!果穂に連絡を入れてみよう。
『ねぇ、横領した同期と最近会ったのっていつ?』
お願い、早く返信して。電話だと町田が戻ってきた時に困るから。
『どうかした?』
『同期会に参加した時にあっちが参加してたら会ってるんじゃない?』
うん、これは会ったことも認識できてないね。果穂は人の顔も名前も覚えるのが不得意だから、営業は絶対無理!って言ってたもんな。
『果穂って彼氏できた?』
『え、ほんとにどうした?』
『彼氏がいないのなんて明里が1番知ってるじゃん。』
『最後に1つ』
『去年のクリスマスはどうしてた?』
『去年のクリスマス?』
『そんなの、コンサート一択なんだけど』
メッセージと一緒に写真が送られてきた。去年のクリスマスの日付が書かれてあるコンサートチケット。
やっぱり、私の勘は外れてない。
『ありがとう』
『また後で説明する』
コンコンコンッ!
「瑞田さん!買ってきました!」
間一髪じゃん!
ケータイを両手で握りしめて、小さく息を吐いた。
「あ、ありがとう!上から投げてくれない?」
「わかりました。」
上から小さな紙袋が投げ入れられる。それをキャッチして、封を開けた。
「つけたら戻るから、先に戻ってていいよ。」
「いえ、すぐですよね?待ってますよ。」
え、なんで?食事の席でわざわざトイレについて来て待つ人なんて居なくない?
水を流す音を出しても、封を開ける音は完全には消えない。開けなかったらバレるかもしれない。
仕方なく、下着にナプキンを取りつける。
待ってると言っていたが、物音が1つもしなくて怖い。この間、町田は何してるんだろう。
個室から出ると、町田は洗面所の前で待っていた。
「大丈夫ですか?服とか、汚れてませんか?」
「大丈夫!あれ?と思ったタイミングですぐに来たからセーフだった。」
「ならよかったです。戻りましょうか。」
「うん。」
手を洗っている間に、町田は先に戻っていった。
服が汚れてないか確認するために残ってくれたのかな?勝手に怖くなって申し訳ない。
テーブルに戻ると、何点か料理が届いていた。食欲は少し失せているが、出された料理に罪はない。ぎこちなく食べる私に町田は無理しないでと言ってくれるが、生理のせいではない。勘違いしてくれてよかったけど。
最小限の会話をして店を出た。町田は駅まで一緒に行くと言ってきたが、遅いからとタクシーに乗せて帰らせた。
タクシーが見えなくなってから、ケータイを取り出す。通知を確認して、果穂に電話をかけた。
『もしもし?』
「あ、果穂?遅くにごめんなんだけど、今から会えない?どっちかの家がいいんだけど。」
『あー、じゃあ私、お風呂入っちゃったから明里が来て。』
「わかった。今から行くね。」
電話を切って、駅へ向かった。果穂の家はここから一駅だから終電に間に合う。
町田がいないからと警戒を解いていた私は、後ろにつけている人間がいるなんて思わなかった。
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