深海

都築稔

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サッカーボール③

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同学年のサッカー部の子たちは、休みの日も集まってサッカーの練習をしていたらしい。
私がそれを知った頃には、すでにお荷物扱いされていた。

みんなが練習していると知らない私は、元々実力差があったのに本気で練習しなかった。だから、簡単に置いていかれてしまった。

ちゃんと考えたら、みんなが練習している云々を置いていても実力に差があったのだから必死に練習しないといけなかった。私だけ、放課後に楽しんでいたあの頃と変わらない気持ちで、気楽に続けていたのだ。

部内で唯一の女の子に、顧問の先生は甘かった。

1年生の夏。先輩たちの引退試合。

自分の実力的にも、試合の名目的にも、私は自分が試合に出るとは考えていなかった。普通は1年生は出ずにスタメンで挑む試合。地区のトーナメント制なので、この試合に負けたら3年生は引退、勝てたらもう少し部活動ができる。そんな試合だった。

「コートに入って。」

初めて本格的な試合を見るのも初めてだったから、先輩を応援しつつ勉強しよう。そんなつもりの私に顧問が告げたのは、そんな言葉だった。

「1年生は交代で入る。」

それを聞いた3年生は大反対。当たり前だ。

多分、私がいなければ1年生が試合に出ることはなかったのではないだろうか。そう思えた。

私も入りたくないと言った。

でも顧問は3年生に「刃向かうならコートに入れさせない、早く位置につけ」と告げた。

広くない運動場。この会話が聞こえない訳ない。相手もきっとこの試合に引退がかかっている。

当然のように私は狙われた。

「お前は立ってるだけでいい。邪魔だけはするな。」

先輩に言われたがそうもいかない。相手が私に向かってくるのだから。少しでも時間を稼いで、フォローを持つくらいはしないと。

自分の実力的に、相手を負かすなんて無理だとすぐに悟った。せめて邪魔にならないように。できるなら先輩の役に立ちたい。

そんな私の願いは当然叶わなかった。悟ったなんて言ってるけど、もっと必死に食らいついてもよかったんだ。そうしなかったのは私。

相手チームにバカにもされた。私にも聞こえるように「自分たちのチームじゃなくてよかった」とも言われた。

コートから出て他の1年生に交代したが、既に取られた点数を巻き返すことはできなかった。

惨敗した後の空気は居た堪れなかった。

消えてしまいたかった。

全員が私のせいだと思っていたことだろう。

顧問とは現地集合、現地解散だった。もし一緒に帰っていたら私たちの空気感に気づいてくれただろう。

「邪魔するなって言ったよな。」

部に入った時、唯一先輩の中で歓迎してくれたキャプテン。その人から言われた直球の言葉が1番キツかった。

「頑張ろうな。」

そう言ってくれた人を、私が傷つけた。裏切った。

泣きたいけど、私が泣いていい場面じゃない。泣きたいのは先輩たちだ。最後の試合をこんな形で終わらされたんだから。

自転車で列を作って帰る。

私を置いていこうとスピードを速める人、すれ違う時に嫌味を言っていく者。

全てを受け入れるしかない。

私がもっと練習していたらなんて、今考えても後の祭りだ。

その日から私は本格的に1人になった。
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