1 / 1
プロローグ
しおりを挟む「ありがとうございました!」
引越し業者の人たちが、トラックに乗って帰って行く。それを窓を開けて見ていた。
久しぶりに来たこの部屋は、昔も今も変わらない。いや、私自身が大きくなった分、部屋が小さく感じてはいるけど。
祖父母が住んでいた家。定食屋を営んでいた場所。ここから私が生きる場所。
深呼吸を数回。気合を入れた。
早速、段ボール箱を開けて決めた位置へものを収納していく。
ふとアルバムが目にとまった。なんだか懐かしくなってアルバムを見返してみた。個人的なアルバムにも、高校時代までの卒業アルバムにも彼の姿がある。
あの時、私は彼の気持ちを疑った。信じることができなかった。彼は彼なりに私と向き合ってくれていたのに。
戻りたいとは思わない。後悔もしていない。過去に戻っても、私は同じ選択をする。それでも、こんなに切なくなるのはなんでだろうか。
もしあの時、私が彼を選んでいたらどうなっていたんだろう。彼の隣に、今も私は入れただろうか。
自分の気持ちをハッキリとさせないまま、彼の気持ちもハッキリとわからないまま。苦しさから逃げる為に、自分から距離をとった。
私は卑怯だ。臆病者だ。
傷つく勇気もなく、人を愛そうとした。そして怖くなって、自分勝手に逃げた。
それなのに、私は今でも彼の姿を追ってしまう。まだ高校生だったあの頃も、共通の友人経由でSNS上に彼を見かけた。そこで彼が私が行きたいと言っていた場所に別の人と行ったことを知った。逃げたのは自分なのに、悲しい気持ちになる私はずるいね。
泣きそうになって、アルバムを閉じた。
きっと、こんな感傷的になってしまうのはここに戻ってきたからだ。少し怖気づいてるんだろう。
大丈夫。彼は今、ここにいない。
「ダメだ!こんなことしてたら、いつまでも終わらないよね。」
頬を数回叩いて、気持ちを入れ替えた。
アルバムは全部まとめて小さめの段ボールに入れて、押し入れの奥に仕舞った。これで荷解きが終わるまで見ることはないだろう。
桜のほのかな香りが、風に乗って部屋に届いた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる