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助けて
いつかの倉の中
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「大したもん出せなくてすみません」
「有難う御座います。こちらこそお邪魔してすみません」
由里子たちの前にお茶と茶菓子が差し出される。
「妻は出かけちゅうがです。やき、何でも自由に質問してください」
素直になった里原からいつもの覇気は感じられない。肩を前に窄めて、俯きがちに苦笑いしていた。それを由里子は悲しげに見つめた。
「では里原さん。さっそくお聞きします。あの石は元々あそこにあったものですか?」
「はい、そうです。ずっと昔からあったと聞いています」
由里子はあることを思い出した。
「それは、倉に置かれていたということですか」
「はい」
「あれ、倉のことご存知だったんですか。こっちはネットでいろいろ調べている中で知ったんですけど」
片山が不思議そうに尋ねる。不動産屋で教えてもらったことを伝える。
「なるほど、まあ他にも調べる方法はいくらでもありますから、秘密にされることでもなかったですね」
鞄から紙を数枚取り出し、片山がテーブルに載せた。
「さて、では本題といきましょう」
紙を捲り、そのうちの一枚を上に置いて右手で指し示した。
「こちらはインターネット上に落ちていた倉の中の画像です。暗くてあまり分からないかと思いますが、石とその横に小さな人形が置かれているのが見えますか?」
由里子が上半身を乗り出して確認し、里原はちらちら覗いた。
「言われてみれば、確かに人形に見えます」
「里原さんも分かりますか」
「……はい」
「私の予想では、小松さんのお宅が今この人形をお持ちでは?」
里原が驚愕の表情で片山の顔を見た。
「貴方はどこまで知っちゅうがですか!」
ぶるぶる震える拳に、片山がへらりと軽い笑いを浮かべる。
「いえ、知っているわけではありません。人よりちょっと視えるというだけで。先日、道で偶然巾着袋を持っている方を見かけたんです。そこから霊気を感じたものですから、恐らくはと思った次第です」
里原は大きく息を吐き、片山に向かって頭を下げた。
「大声を出して失礼しました。片山さん、力のある霊能者とお見受けしました。どうか、この町を救ってくださいませんか」
片山は腕組みをして、由里子に目を向ける。
「私は宮下さんと契約を結んでいます。その支払いを町の方で持ってくださるなら、できる限りのことをしましょう」
「もちろんです! このことは町の人間全員困らされちゅうがです……」
二人が盛り上がる中、由里子は出されたお茶を気まずそうに飲んだ。
「それでは、ここに人形を持ってきていただけますか?」
「舟子ですか……はい、分かりました」
おもむろに立ち上がり、固定電話の子機を持ってきて電話をかける。コール音の後に元気な声が耳に当てていない二人にも届いた。
「まだ早いけんど、舟子を回収してもえいか?」
『まあまあ、いつでもえいちや。今から来るが?』
小松の明るい声色は、舟子の存在の重さを理解するには十分だった。
「ちっくとばぁ待っちょってください」
言うが早いか、由里子たちの返答を待たずに里原は出ていった。二人して目を丸くさせる。
「あまり親しくない人間を自宅に置いていくなんて、里原さんは大らかですね。私だったら泥棒されるんじゃないかと気が気じゃないですよ」
「それくらい町長も慌てているんじゃないでしょうか」
ものの数分で大きな足音が帰ってきた。
「お待たせしましたッ」
肩を上下させて里原が部屋に入ってくる。その手には巾着袋が握られていた。由里子が顔を顰めて見つめる。
「そこに人形が入っているんですね」
「はい」
巾着袋を差し出され、片山が素手で受け取る。
「名前が付いているんですね」
「はい。お舟の子どもやき、舟子といつからか呼ばれるようになったと聞きました」
「有難う御座います。こちらこそお邪魔してすみません」
由里子たちの前にお茶と茶菓子が差し出される。
「妻は出かけちゅうがです。やき、何でも自由に質問してください」
素直になった里原からいつもの覇気は感じられない。肩を前に窄めて、俯きがちに苦笑いしていた。それを由里子は悲しげに見つめた。
「では里原さん。さっそくお聞きします。あの石は元々あそこにあったものですか?」
「はい、そうです。ずっと昔からあったと聞いています」
由里子はあることを思い出した。
「それは、倉に置かれていたということですか」
「はい」
「あれ、倉のことご存知だったんですか。こっちはネットでいろいろ調べている中で知ったんですけど」
片山が不思議そうに尋ねる。不動産屋で教えてもらったことを伝える。
「なるほど、まあ他にも調べる方法はいくらでもありますから、秘密にされることでもなかったですね」
鞄から紙を数枚取り出し、片山がテーブルに載せた。
「さて、では本題といきましょう」
紙を捲り、そのうちの一枚を上に置いて右手で指し示した。
「こちらはインターネット上に落ちていた倉の中の画像です。暗くてあまり分からないかと思いますが、石とその横に小さな人形が置かれているのが見えますか?」
由里子が上半身を乗り出して確認し、里原はちらちら覗いた。
「言われてみれば、確かに人形に見えます」
「里原さんも分かりますか」
「……はい」
「私の予想では、小松さんのお宅が今この人形をお持ちでは?」
里原が驚愕の表情で片山の顔を見た。
「貴方はどこまで知っちゅうがですか!」
ぶるぶる震える拳に、片山がへらりと軽い笑いを浮かべる。
「いえ、知っているわけではありません。人よりちょっと視えるというだけで。先日、道で偶然巾着袋を持っている方を見かけたんです。そこから霊気を感じたものですから、恐らくはと思った次第です」
里原は大きく息を吐き、片山に向かって頭を下げた。
「大声を出して失礼しました。片山さん、力のある霊能者とお見受けしました。どうか、この町を救ってくださいませんか」
片山は腕組みをして、由里子に目を向ける。
「私は宮下さんと契約を結んでいます。その支払いを町の方で持ってくださるなら、できる限りのことをしましょう」
「もちろんです! このことは町の人間全員困らされちゅうがです……」
二人が盛り上がる中、由里子は出されたお茶を気まずそうに飲んだ。
「それでは、ここに人形を持ってきていただけますか?」
「舟子ですか……はい、分かりました」
おもむろに立ち上がり、固定電話の子機を持ってきて電話をかける。コール音の後に元気な声が耳に当てていない二人にも届いた。
「まだ早いけんど、舟子を回収してもえいか?」
『まあまあ、いつでもえいちや。今から来るが?』
小松の明るい声色は、舟子の存在の重さを理解するには十分だった。
「ちっくとばぁ待っちょってください」
言うが早いか、由里子たちの返答を待たずに里原は出ていった。二人して目を丸くさせる。
「あまり親しくない人間を自宅に置いていくなんて、里原さんは大らかですね。私だったら泥棒されるんじゃないかと気が気じゃないですよ」
「それくらい町長も慌てているんじゃないでしょうか」
ものの数分で大きな足音が帰ってきた。
「お待たせしましたッ」
肩を上下させて里原が部屋に入ってくる。その手には巾着袋が握られていた。由里子が顔を顰めて見つめる。
「そこに人形が入っているんですね」
「はい」
巾着袋を差し出され、片山が素手で受け取る。
「名前が付いているんですね」
「はい。お舟の子どもやき、舟子といつからか呼ばれるようになったと聞きました」
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