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つかの間の自由
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「今日はもう暇なの?」
「三限があるだけ。バイトまで暇だから気が向いたら勉強でもするかなぁ」
「バイトしてるんだ、えらいね」
高橋さんは実家通いだから、バイトはしないでお小遣いの範囲でどうにか過ごしているらしい。サークル費だけは出してもらってるとか。サークルって結構お金かかるよね。内容に寄るだろうけど、テニスだったらユニフォームにラケットのメンテナンス、遠征費とかかなりかかりそう。俺の飲み会代だけとはえらい違いだ。
「バイトはどんなとこ? 飲食店っぽい」
「当たり。新宿の駅ビル分かる? そこに入ってるイタリアン。賄いが美味しいからそこにした」
「え、あそこ! 分かる分かる。随分便利な所にしたね~、でも混むから大変そう」
「確かにすごい混む。ただ、席数が決まってるから、満席にはなるけどレジに列ができるほどじゃないし、ホールだから作る必要無いからマシかな」
「そっか~」
そう言いつつ、最初はかなり焦る毎日だった。大きなミスはしなかったけど、料理持っていくテーブル間違えたこともあった。ジュースを飲んでいた高橋さんが少し前のめりになった。オレンジジュース好きなんだね。
「ね、帰りちょうど新宿行くから、行きだけ一緒に行ってもいい? 一人だから話し相手がいると嬉しいなぁなんて」
「いいよ。お昼食べたらいつでも」
「ありがと! じゃあ午後一に門の前で」
こっちもバイトまでのいい暇つぶしになる。それにしても由奈以外の女の子と電車って久しぶりかも。少なくとも、大学に入ってからはないと思う。サークルのメンバーと飲み会は行くけどいつも大所帯だった。
三限は単位取るための歴史学だった。ギリシャがどうの。全く分からないけど、出席してレポート出せばテストが散々でも単位をくれるって教授が言ってた。優しい。成績悪くても単位取れるなら神様です。
お昼はラーメンにした。昨日よっしーが食べてたからそのお腹になっていた。専門店に比べたら落ちるけど十分美味しい。ごちそうさま。
「お~い、こっちこっち」
のんびり門に向かって歩いていたら声をかけられた。まだ余裕あると思ってたけど女の子を待たせちゃった。でも、高橋さんは嫌な顔せず手を振ってくれる。イイコだ。
「変な時間だから電車空いてていいね」
「うん」
電車内は立っている人が数人いるだけで、俺たちは運よく座ることができた。よく考えずとも昨日が初めましてなので、お互いのことやよっしーのことを話す。共通の友人がいるのは大きい。人見知りはしないけど、昨日知り合った人と何も情報が無いまま三十分も会話盛り上げられるか不安だし。
それにしても、高橋さんこそ俺でよかったのか。まあ、暇人同士予定が合ったってとこかな。こんなところ由奈が見たら勘違いしそう。あっちはまだ大学の時間だしあり得ないな。
駅に着いて一緒に降りる。ところで高橋さんはどこに行くんだろう。
「俺は駅ビルだから東口出たらすぐだけど、高橋さんはどこの改札から出る?」
「私も東。文房具と服見るだけだから、せっかくだし私も駅ビルにする」
「ここなら何でも揃うから便利だよね。俺も早く着いたし何か見よ」
そう、駅ビルに着いてもまだバイトまで一時間以上もあった。さすがに早く着き過ぎた。
「見よう見よう!」
高橋さんも迷惑じゃなさそうだしご一緒させてもらおう。
雑貨屋と服屋を見て回る。大学が同じだから会話も弾む。大学生っぽい。いや、今の俺は本当に大学生だな。会社と由奈の往復だった昔とは大違い。
――た、楽しい……!
そうだよな。本来買い物って楽しいものだった。由奈の機嫌を窺いながら由奈の好きなお店に行って、俺の欲しいものは買えず、帰宅してからネットで買うっていうのはやっぱりおかしかったんだ。他の人と出かけてみて改めて実感する。
買う気がなかったアウターを買い、バイトまであと十五分というところで高橋さんと別れた。ちゃんと改札がある二階まで送った。えらいぞ俺。由奈のおかげで女子に気を遣うことを体が覚えている。
「送ってくれてありがとう」
「いやいや、こっちこそ楽しかったよ」
「バイト頑張って」
「うん」
あっさり別れてエレベーターに逆戻りする。うーん、何もかもが由奈と違う。実に新鮮。
あ~なんか充実した一日だった。寝坊したのは死ぬほど焦ったけど、終わりよければ全て良しって言うし。バイト頑張るぞ。
平日なのでそれなりな混雑の四時間を働き終え、一人暮らしの部屋に戻った。由奈からはバイトお疲れ様のメッセージのみ。
うんうん、実に順調。LIME地獄も無い。土曜のデートも当たり障りなく、そして由奈にとってはなんとなくつまらないものになるよう努力しよう。俺は日本一つまらない男になる。
明日も自由に過ごせるから何しようかな。ゲームはほどほどにしないと。買い物楽しかったし、今度は一人で行ったことないラーメン屋でも行くか。家系かガッツリ系か。どっちも捨てがたいな。一人じゃなくてよっしー誘ってもいいかも。山田はダメだ。謝ってくれたら許す。
ピコン。
由奈からおやすみスタンプが着た。こっちもスタンプで返す。
明日は……二限からだ。よかった。二限なら寝坊のしようがないや。
「三限があるだけ。バイトまで暇だから気が向いたら勉強でもするかなぁ」
「バイトしてるんだ、えらいね」
高橋さんは実家通いだから、バイトはしないでお小遣いの範囲でどうにか過ごしているらしい。サークル費だけは出してもらってるとか。サークルって結構お金かかるよね。内容に寄るだろうけど、テニスだったらユニフォームにラケットのメンテナンス、遠征費とかかなりかかりそう。俺の飲み会代だけとはえらい違いだ。
「バイトはどんなとこ? 飲食店っぽい」
「当たり。新宿の駅ビル分かる? そこに入ってるイタリアン。賄いが美味しいからそこにした」
「え、あそこ! 分かる分かる。随分便利な所にしたね~、でも混むから大変そう」
「確かにすごい混む。ただ、席数が決まってるから、満席にはなるけどレジに列ができるほどじゃないし、ホールだから作る必要無いからマシかな」
「そっか~」
そう言いつつ、最初はかなり焦る毎日だった。大きなミスはしなかったけど、料理持っていくテーブル間違えたこともあった。ジュースを飲んでいた高橋さんが少し前のめりになった。オレンジジュース好きなんだね。
「ね、帰りちょうど新宿行くから、行きだけ一緒に行ってもいい? 一人だから話し相手がいると嬉しいなぁなんて」
「いいよ。お昼食べたらいつでも」
「ありがと! じゃあ午後一に門の前で」
こっちもバイトまでのいい暇つぶしになる。それにしても由奈以外の女の子と電車って久しぶりかも。少なくとも、大学に入ってからはないと思う。サークルのメンバーと飲み会は行くけどいつも大所帯だった。
三限は単位取るための歴史学だった。ギリシャがどうの。全く分からないけど、出席してレポート出せばテストが散々でも単位をくれるって教授が言ってた。優しい。成績悪くても単位取れるなら神様です。
お昼はラーメンにした。昨日よっしーが食べてたからそのお腹になっていた。専門店に比べたら落ちるけど十分美味しい。ごちそうさま。
「お~い、こっちこっち」
のんびり門に向かって歩いていたら声をかけられた。まだ余裕あると思ってたけど女の子を待たせちゃった。でも、高橋さんは嫌な顔せず手を振ってくれる。イイコだ。
「変な時間だから電車空いてていいね」
「うん」
電車内は立っている人が数人いるだけで、俺たちは運よく座ることができた。よく考えずとも昨日が初めましてなので、お互いのことやよっしーのことを話す。共通の友人がいるのは大きい。人見知りはしないけど、昨日知り合った人と何も情報が無いまま三十分も会話盛り上げられるか不安だし。
それにしても、高橋さんこそ俺でよかったのか。まあ、暇人同士予定が合ったってとこかな。こんなところ由奈が見たら勘違いしそう。あっちはまだ大学の時間だしあり得ないな。
駅に着いて一緒に降りる。ところで高橋さんはどこに行くんだろう。
「俺は駅ビルだから東口出たらすぐだけど、高橋さんはどこの改札から出る?」
「私も東。文房具と服見るだけだから、せっかくだし私も駅ビルにする」
「ここなら何でも揃うから便利だよね。俺も早く着いたし何か見よ」
そう、駅ビルに着いてもまだバイトまで一時間以上もあった。さすがに早く着き過ぎた。
「見よう見よう!」
高橋さんも迷惑じゃなさそうだしご一緒させてもらおう。
雑貨屋と服屋を見て回る。大学が同じだから会話も弾む。大学生っぽい。いや、今の俺は本当に大学生だな。会社と由奈の往復だった昔とは大違い。
――た、楽しい……!
そうだよな。本来買い物って楽しいものだった。由奈の機嫌を窺いながら由奈の好きなお店に行って、俺の欲しいものは買えず、帰宅してからネットで買うっていうのはやっぱりおかしかったんだ。他の人と出かけてみて改めて実感する。
買う気がなかったアウターを買い、バイトまであと十五分というところで高橋さんと別れた。ちゃんと改札がある二階まで送った。えらいぞ俺。由奈のおかげで女子に気を遣うことを体が覚えている。
「送ってくれてありがとう」
「いやいや、こっちこそ楽しかったよ」
「バイト頑張って」
「うん」
あっさり別れてエレベーターに逆戻りする。うーん、何もかもが由奈と違う。実に新鮮。
あ~なんか充実した一日だった。寝坊したのは死ぬほど焦ったけど、終わりよければ全て良しって言うし。バイト頑張るぞ。
平日なのでそれなりな混雑の四時間を働き終え、一人暮らしの部屋に戻った。由奈からはバイトお疲れ様のメッセージのみ。
うんうん、実に順調。LIME地獄も無い。土曜のデートも当たり障りなく、そして由奈にとってはなんとなくつまらないものになるよう努力しよう。俺は日本一つまらない男になる。
明日も自由に過ごせるから何しようかな。ゲームはほどほどにしないと。買い物楽しかったし、今度は一人で行ったことないラーメン屋でも行くか。家系かガッツリ系か。どっちも捨てがたいな。一人じゃなくてよっしー誘ってもいいかも。山田はダメだ。謝ってくれたら許す。
ピコン。
由奈からおやすみスタンプが着た。こっちもスタンプで返す。
明日は……二限からだ。よかった。二限なら寝坊のしようがないや。
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