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再びの包丁
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『新婦のお色直しが終わりました』
「はッ」
由奈の方を見る。空席だ。お色直し行ってたんだ、気付かなかった。再登場する由奈を温かい拍手で出迎える。うん。可愛い。若いからまともだった時期を思い出す。やべ、涙出そう。決して嬉し涙じゃない。
「どう?」
「赤だ。可愛いね」
「ありがと」
感想が「赤だ」って幼児に負ける語彙力を発揮してしまった。それでも笑ってくれる由奈はやはり可愛いし良い人なのかもしれない。それにきっとこのドレスも式の準備で見たよね。その上で「赤だ」はなかったわ。ごめん。堀塚蓮、三歳です。
由奈はヤンデレ通り越して単なる犯罪者だけど俺も大概だった。よくこんな俺のこと好きって言ってくれるなぁ……これが包丁出さずストーカーもせずサプライズで結婚式ぶっこんでこない子だったら好きでいたかも。全然高望みじゃないだろ、これ。全部犯罪だもんね。
会社に電撃訪問された時のことを思い出していたら、つつがなく式が終了していた。おめでとう、由奈。残念、俺。
両親やスタッフさんとのやりとりの後、二人して式場の外に出た。
「二次会行こ」
「うん」
――来た!!!
今回の俺は前回とは違う。三歳児だって学ぶ。
由奈と会話していたら、時間通りに例の爆音が聞こえてきた。
来た来た来た~~~~ッ。
「蓮君?」
「何?」
冷静な顔で暴走車が通る前に道路から敷地内に戻る。振り向くと、驚く由奈の顔があった。
「今の車危なかったね。もっと早く道路出てたら轢かれてたかも」
「まさかぁ。でも確かに危なかったね」
ふう……とりあえず最初の難関はクリアした。三度目になれば車を避けるくらい朝飯前だ。次は入り口横の地下への――ってあれ。入り口横両端に柵が出来てる。こんなの前回無かったぞ!?
あったらそもそも落ちなかったし。なんでだ。俺が落ちた後の未来なら分かるけど、この時点であるのはおかしい気がする。しかも、今は落下事故より四年前なのに。
俺がループしている中でこんなところにまで影響してるのか? それだったら、公共の場で変なことしたら大変だ。いや、でもなぁ。単純にスタッフの誰かが気付いただけかも。柵が無いって明らかに事故誘発案件だから。現に事故起きたから。
さすがに大学での行動だけでここまで変わらないだろ。じゃあ、すでにここで誰かが事故に遭ったのかな。瑕疵物件じゃん。
まあ、これで二件目も自動的に回避したわけだ。万歳万歳。違う!
死なないと過去に戻れないんだった! しまった!
し……死んでみる……?
でも、確実に戻れるかどうかは保障されていない。わざと死んで、万が一戻れなかったらどうする? というか意識無いままだから、成功したかどうかも分からないまま完全なる無に還るわけか。
――ツ、ツライ……!
さすがにそこまで冒険できない。過去に戻る手段が死ぬってヤバ過ぎでしょ。マンガではもっと簡単な感じだったよ。死ぬって無謀にも程がある。その上わざと死んだ場合はまだ分からないし。
止めとくか!
うん。とりあえず死ぬのはよそう。今後のことはおいおい考えるとして、まずは平穏に今日を終わろう。
すごい疲れた。包丁直後に結婚だもんな。心臓がいくつあっても飛び出しちゃう。
「うわぁぁぁぁ!」
「なんだ!?」
急にどこからか大声が飛び込んできた。
人通りの少ない静かな場所だからとても目立つ。しかも切羽詰まったような、焦っているような。
「誰だ?」
式場の外なので余興の声でもない。こんな絶叫が余興の一部だったら怖い。
声のした方を眺める。頼りない髪の毛を振り乱したおっさんが包丁を持ちながらこっちに走ってきていた。
「あああああ! 逃げろ!」
「きゃあああああ!」
なんでここに来てまで包丁がぁ!
そして人がいない所で通り魔ってどういう思考回路なんだ! 人が多い場所でもやっちゃいけないけど! 犯罪ッダメッ絶対!
「はッ」
由奈の方を見る。空席だ。お色直し行ってたんだ、気付かなかった。再登場する由奈を温かい拍手で出迎える。うん。可愛い。若いからまともだった時期を思い出す。やべ、涙出そう。決して嬉し涙じゃない。
「どう?」
「赤だ。可愛いね」
「ありがと」
感想が「赤だ」って幼児に負ける語彙力を発揮してしまった。それでも笑ってくれる由奈はやはり可愛いし良い人なのかもしれない。それにきっとこのドレスも式の準備で見たよね。その上で「赤だ」はなかったわ。ごめん。堀塚蓮、三歳です。
由奈はヤンデレ通り越して単なる犯罪者だけど俺も大概だった。よくこんな俺のこと好きって言ってくれるなぁ……これが包丁出さずストーカーもせずサプライズで結婚式ぶっこんでこない子だったら好きでいたかも。全然高望みじゃないだろ、これ。全部犯罪だもんね。
会社に電撃訪問された時のことを思い出していたら、つつがなく式が終了していた。おめでとう、由奈。残念、俺。
両親やスタッフさんとのやりとりの後、二人して式場の外に出た。
「二次会行こ」
「うん」
――来た!!!
今回の俺は前回とは違う。三歳児だって学ぶ。
由奈と会話していたら、時間通りに例の爆音が聞こえてきた。
来た来た来た~~~~ッ。
「蓮君?」
「何?」
冷静な顔で暴走車が通る前に道路から敷地内に戻る。振り向くと、驚く由奈の顔があった。
「今の車危なかったね。もっと早く道路出てたら轢かれてたかも」
「まさかぁ。でも確かに危なかったね」
ふう……とりあえず最初の難関はクリアした。三度目になれば車を避けるくらい朝飯前だ。次は入り口横の地下への――ってあれ。入り口横両端に柵が出来てる。こんなの前回無かったぞ!?
あったらそもそも落ちなかったし。なんでだ。俺が落ちた後の未来なら分かるけど、この時点であるのはおかしい気がする。しかも、今は落下事故より四年前なのに。
俺がループしている中でこんなところにまで影響してるのか? それだったら、公共の場で変なことしたら大変だ。いや、でもなぁ。単純にスタッフの誰かが気付いただけかも。柵が無いって明らかに事故誘発案件だから。現に事故起きたから。
さすがに大学での行動だけでここまで変わらないだろ。じゃあ、すでにここで誰かが事故に遭ったのかな。瑕疵物件じゃん。
まあ、これで二件目も自動的に回避したわけだ。万歳万歳。違う!
死なないと過去に戻れないんだった! しまった!
し……死んでみる……?
でも、確実に戻れるかどうかは保障されていない。わざと死んで、万が一戻れなかったらどうする? というか意識無いままだから、成功したかどうかも分からないまま完全なる無に還るわけか。
――ツ、ツライ……!
さすがにそこまで冒険できない。過去に戻る手段が死ぬってヤバ過ぎでしょ。マンガではもっと簡単な感じだったよ。死ぬって無謀にも程がある。その上わざと死んだ場合はまだ分からないし。
止めとくか!
うん。とりあえず死ぬのはよそう。今後のことはおいおい考えるとして、まずは平穏に今日を終わろう。
すごい疲れた。包丁直後に結婚だもんな。心臓がいくつあっても飛び出しちゃう。
「うわぁぁぁぁ!」
「なんだ!?」
急にどこからか大声が飛び込んできた。
人通りの少ない静かな場所だからとても目立つ。しかも切羽詰まったような、焦っているような。
「誰だ?」
式場の外なので余興の声でもない。こんな絶叫が余興の一部だったら怖い。
声のした方を眺める。頼りない髪の毛を振り乱したおっさんが包丁を持ちながらこっちに走ってきていた。
「あああああ! 逃げろ!」
「きゃあああああ!」
なんでここに来てまで包丁がぁ!
そして人がいない所で通り魔ってどういう思考回路なんだ! 人が多い場所でもやっちゃいけないけど! 犯罪ッダメッ絶対!
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