【急募】バッドエンド

文字の大きさ
18 / 81

再びの包丁

しおりを挟む
『新婦のお色直しが終わりました』
「はッ」

 由奈の方を見る。空席だ。お色直し行ってたんだ、気付かなかった。再登場する由奈を温かい拍手で出迎える。うん。可愛い。若いからまともだった時期を思い出す。やべ、涙出そう。決して嬉し涙じゃない。

「どう?」
「赤だ。可愛いね」
「ありがと」

 感想が「赤だ」って幼児に負ける語彙力を発揮してしまった。それでも笑ってくれる由奈はやはり可愛いし良い人なのかもしれない。それにきっとこのドレスも式の準備で見たよね。その上で「赤だ」はなかったわ。ごめん。堀塚蓮、三歳です。

 由奈はヤンデレ通り越して単なる犯罪者だけど俺も大概だった。よくこんな俺のこと好きって言ってくれるなぁ……これが包丁出さずストーカーもせずサプライズで結婚式ぶっこんでこない子だったら好きでいたかも。全然高望みじゃないだろ、これ。全部犯罪だもんね。

 会社に電撃訪問された時のことを思い出していたら、つつがなく式が終了していた。おめでとう、由奈。残念、俺。

 両親やスタッフさんとのやりとりの後、二人して式場の外に出た。

「二次会行こ」
「うん」

――来た!!!

 今回の俺は前回とは違う。三歳児だって学ぶ。

 由奈と会話していたら、時間通りに例の爆音が聞こえてきた。

 来た来た来た~~~~ッ。

「蓮君?」
「何?」

 冷静な顔で暴走車が通る前に道路から敷地内に戻る。振り向くと、驚く由奈の顔があった。

「今の車危なかったね。もっと早く道路出てたら轢かれてたかも」
「まさかぁ。でも確かに危なかったね」

 ふう……とりあえず最初の難関はクリアした。三度目になれば車を避けるくらい朝飯前だ。次は入り口横の地下への――ってあれ。入り口横両端に柵が出来てる。こんなの前回無かったぞ!?

 あったらそもそも落ちなかったし。なんでだ。俺が落ちた後の未来なら分かるけど、この時点であるのはおかしい気がする。しかも、今は落下事故より四年前なのに。

 俺がループしている中でこんなところにまで影響してるのか? それだったら、公共の場で変なことしたら大変だ。いや、でもなぁ。単純にスタッフの誰かが気付いただけかも。柵が無いって明らかに事故誘発案件だから。現に事故起きたから。

 さすがに大学での行動だけでここまで変わらないだろ。じゃあ、すでにここで誰かが事故に遭ったのかな。瑕疵物件じゃん。

 まあ、これで二件目も自動的に回避したわけだ。万歳万歳。違う!

 死なないと過去に戻れないんだった! しまった!

 し……死んでみる……?

 でも、確実に戻れるかどうかは保障されていない。わざと死んで、万が一戻れなかったらどうする? というか意識無いままだから、成功したかどうかも分からないまま完全なる無に還るわけか。

――ツ、ツライ……!

 さすがにそこまで冒険できない。過去に戻る手段が死ぬってヤバ過ぎでしょ。マンガではもっと簡単な感じだったよ。死ぬって無謀にも程がある。その上わざと死んだ場合はまだ分からないし。

 止めとくか!

 うん。とりあえず死ぬのはよそう。今後のことはおいおい考えるとして、まずは平穏に今日を終わろう。

 すごい疲れた。包丁直後に結婚だもんな。心臓がいくつあっても飛び出しちゃう。

「うわぁぁぁぁ!」
「なんだ!?」

 急にどこからか大声が飛び込んできた。
 人通りの少ない静かな場所だからとても目立つ。しかも切羽詰まったような、焦っているような。

「誰だ?」

 式場の外なので余興の声でもない。こんな絶叫が余興の一部だったら怖い。
 声のした方を眺める。頼りない髪の毛を振り乱したおっさんが包丁を持ちながらこっちに走ってきていた。

「あああああ! 逃げろ!」
「きゃあああああ!」

 なんでここに来てまで包丁がぁ!

 そして人がいない所で通り魔ってどういう思考回路なんだ! 人が多い場所でもやっちゃいけないけど! 犯罪ッダメッ絶対!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

処理中です...