【急募】バッドエンド

文字の大きさ
34 / 81

道端宅

しおりを挟む
「やった」
「何が?」
「なんでもない! 俺も応援するね!」

 どこの誰だか分からない幼馴染さん。全力で由奈と結婚ルートへ走り切ってくださいね!

「私たち名前すら知らないのに? でも、有難う御座います。なかなか人に言えないことだから、応援してくれるって言われてすごい勇気出た」

 愛想よくして笑顔を見せれば十人中九人は振り向いてくれそうなお人形さんでも恋愛で悩むことってあるんだなあ。逆によく知りもしない相手だから、こういうこと言ってくれたのかもしれない。元恋人に恋愛相談されるって不思議な感じ。

「じゃあこれで」
「うん」

 ラテをゴミ箱に入れ、今度こそ別れる。小さく手を振るのも可愛くて守ってあげたくなる。昔の俺ならきゅんきゅんきてた。幼馴染よ、早く由奈の魅力に気付くんだ。由奈の可愛さは俺が保証する。ただし、未来どんなストーカー彼女になるかはお楽しみということで。

――もういないよな。

 辺りを見回して誰もいないことを確認してヘルメットを外す。ようやく視界が広くなった。

 一人になって顔が緩む。ダルンダルンだ。




「俺……自由だ―――――――ッッ!!!」




 ついに来た。

 人生何度目だ、四度目だっけ? 何度目でもいいや。とにかく俺が運命的な出会いをしない限り、由奈は幼馴染と結婚する。多分。

 どうしよう。
 そわそわする。

 お小遣いぱーっと使っちゃう?
 誰かと遊んじゃう?

 二十四時間オンライン男呼ぼっかな。ゲーセンで騒ぐのも楽しそう。

「あ、ヘルメット」

 右手が不自由だと思ったらヘルメット持ったままだった。学校に持っていって由奈に会ったらバレてしまう。

 仕方ない、間田じゃなくて道端に会いに行こう。

「えーと、道端道端」

 初めてLIMEする。既読スルーされないかな。道端って学校でスマホ使ってるの見たことない。既読はおろか未読スルーかもしれない。ツライ。

『堀塚です。ヘルメット返したいんだけど、今どこにいる?』
『家にいるよ! 住所送るね!』

 十秒で想像の五十倍フレンドリーな返信が着た。

 スマホを裏返したりして観察する。異常無し。

 トーク画面を見る。道端と表示されている。異常無し。

 え、これ道端? 乗っ取られてない? 本人?

 住所が送られてくる。親切に外観の写真も一緒。表札は道端だから、本人なのか。え!?

 行っても大丈夫かな……でも最初に言い出したの俺だし……。まあ、とりあえず行ってみるか。どうせ俺の家の近くだし。実際の家見て違いそうだったら逃げよう。もしくはバイクあったらヘルメット置いてくるか。

「分かった。家族が返信したんだ」

 電車に乗って思いついた。多分そうだ。機械系苦手な道端の代わりに送ってくれたんだ。じゃあ、家族と一緒か。ちょっと身構えちゃう。お兄さんだったりして。そしたらお礼言わないと。

――お土産買わなきゃ!

 お礼言うならお土産必要だよね。お土産じゃない、お礼の品か。まあいいや、これちょっとした物ですけどよかったら~~~って適当に言えばいい。

「あ」

 財布を確認する。今、大人じゃなかった。二千円しか入ってない。この中からお礼か~……買わな、買う。買うぞ俺は!

 駅構内にあるテナントで悩んで悩んで八百円のクッキーにした。残りは千二百円。痛い出費だけど必要経費だ。これのおかげで正体がバレずに済んだし、何より由奈と俺じゃない誰かとの結婚ルートを導き出すことができた。道端大明神様だ。

 俺の最寄りから一駅過ぎて降りる。チャリで来たことはあるけど電車では初めて。アプリでルート調べたら駅から結構近かった。駅前商店街からすぐじゃん。便利。いいなぁ。

「…………って、ここ?」

 外観の写真と見比べる。確かに合ってる。合ってるけど、写真は玄関と壁がちょっとしか写ってないから分からなかった。すっっっごい豪邸じゃん。

 さっきとは違う意味で入りにくい。表札的に道端家なんだろうけど、本当にこの中に道端がいるのか。体格に合わせてこんな風になっちゃったのかな。何千万で買える家じゃないでしょ。

 はっきり言って帰りたい。でもヘルメットを返すまでは帰れない。意を決してインターフォンを鳴らした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...