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『はい』
「堀塚です。道端君に会いに来たんですけど」
言って気付いたけど、道端の下の名前知らないや。道端に会いに来たって、この家の人たち全員道端だよ。
インターフォン出た人道端じゃなかった。どっかで聞いたことある気がするけど、どこだったかな~。代わりに返信した人かも。道端の家族だからちゃんと挨拶しないと。
玄関の前で咳払いする。状況が状況だけに友だちの家でも身が引き締まる。新入社員の入社初日を思い出すな~。あの日靴下右と左違うやつ履いてっちゃって一日中恥ずかしかった。靴とスーツで見えないし、紺と黒だからぱっと見分からないけど恥ずかしかった。
「はいはい。いらっしゃい、満《みつる》のお友だちね」
「おじゃまします!」
道端満って言うんだ。満君か……慣れないからやっぱ道端だな。
ていうか、お母さん優しそう。そして小さい。小さいな。百五十くらいなのでは?
「いらっしゃ」
「こっちこそ急にごめんね。あ、これ、ヘルメット借りたお礼、ちょっとした物だけどよかったら」
お母さんの後ろから道端が来た。本気で道端の家だった。道端が前に出たらお母さんの全てが見えなくなった。親子ってこんなに似ないものなのか。
「まあまあ、いいのに。ごめんなさいね、ありがとう」
「あり、がと」
お菓子を受け取った道端がお母さんに渡すと、お母さんもお礼を言ってくれた。後でお茶菓子として出してくれるらしい。
玄関入ったところや廊下は俺の家と大差なくて安心した。虎の毛皮とか置いてあったら逃げてたかもしれない。そういう人は和風の家ってイメージだけど。
お母さんも近所でパートしてそうな親しみある感じで変な緊張が解けてきた。ようやく友だちの家としてお邪魔できる。
「部屋」
道端が二階のドアを開ける。ここが部屋か~、どんな部屋だろ……!?!?
「座って」
座ってって言ってもらったけど、どこに座れば、というか、座るところしかないというか、何も無いぞ!
辛うじて机と椅子、鞄があるだけで、机の上の教科書類以外物体が存在しない。ベッドが無いのは布団派なんだろうけど、本棚すら無いのはどうかと。食べる用のローテーブルも座布団も無い。モデルルームの十分の一くらいしか物が無い。人が住む場所か?
ミニマリストってやつかな。にしても物が無い。ミニマリストでももうちょっとあると思う。ミニマリストの部屋見たことないけど。
「失礼します」
どこに座れば正しいのか分からなくて、ど真ん中に座ってみる。その向かいに道端が座ったので恐らく正解。正解って何。
そういやヘルメット返しに来たんだった。さっさと渡しちゃおう。
「有難う御座いました。役に立ったよ」
こくり。
満足気に頷かれた。助手なのか司令官なのか定かではないけど、道端が楽しいならいいや。俺も良いことあったし。
「ねえ、この部屋綺麗っていうか何も無いよね。普段どうしてんの?」
ダメだった。我慢できなかったわ。だって生活感マイナスなんだもん。男子高校生だよ? 足の踏み場もないくらいな汚部屋の方がまだ現実味ある。ゴーレムなんか? 人間じゃなくてレム端だったのか?
「ある」
「物が?」
こくり。
そう言って道端がクローゼットを指差した。なるほど、俺が来たからクローゼットに仕舞ったとか? 全部?
「普段は部屋に物置いてるの?」
ふるふる。
首を振られた。おお、否定の仕草初めて見た。新しい行動覚えたロボットみたいでちょっと感動した。大型犬にも見える。道端って体格良いのにマスコット感あるよね。
「物、あると、ぶつかる」
「ぶつかる? でもここまで広くしなくても……ああ! 体大きいから!」
こくり。
「うんうんそっかあ。背が高い方が良いと思ってたけど、高いは高いで大変なことあるんだね」
「ぶつかると、痛い」
「うんうん」
タンスに小指とかね。分かる。道端って繊細そうだもん。じゃあ、趣味の物とかも全部クローゼットか。どういうのが好きか気になるけど、勝手に開けられないしな。開けたらただの失礼な人間だ。
コンコン。
「満、お菓子持ってきたよ」
お母さんが持ってきてくれたんだ。にしては、声が違うような。そうだ、インターフォンの人がこんな声だった。他の家族か。
「…………!」
「どうしたの?」
道端の顔が強張った。
ドアを見てる。ドア開けるのを戸惑ってる? つまり、ドアの外には道端が会いたくない相手がいるってこと?
家族だと思って開けたら誰もいなくてそこには水たまりが……ホラー脳がまだ機能してる! でも、自分の家である道端が怖がるって相当なのでは。道端が開けないなら開けない方がいいか。
「開けるよ~~~~ん!」
あっちから開けたぁ!!!
ドバァン! と開いたドアから金色の巨体が突っ込んでくる。
お菓子がお盆ごと舞う。道端ナイスキャッチ! そして巨体が俺を目掛けて――!
「ヘルメットの君ィ!!」
――なんか見たことある人来たぁぁぁぁ!
「堀塚です。道端君に会いに来たんですけど」
言って気付いたけど、道端の下の名前知らないや。道端に会いに来たって、この家の人たち全員道端だよ。
インターフォン出た人道端じゃなかった。どっかで聞いたことある気がするけど、どこだったかな~。代わりに返信した人かも。道端の家族だからちゃんと挨拶しないと。
玄関の前で咳払いする。状況が状況だけに友だちの家でも身が引き締まる。新入社員の入社初日を思い出すな~。あの日靴下右と左違うやつ履いてっちゃって一日中恥ずかしかった。靴とスーツで見えないし、紺と黒だからぱっと見分からないけど恥ずかしかった。
「はいはい。いらっしゃい、満《みつる》のお友だちね」
「おじゃまします!」
道端満って言うんだ。満君か……慣れないからやっぱ道端だな。
ていうか、お母さん優しそう。そして小さい。小さいな。百五十くらいなのでは?
「いらっしゃ」
「こっちこそ急にごめんね。あ、これ、ヘルメット借りたお礼、ちょっとした物だけどよかったら」
お母さんの後ろから道端が来た。本気で道端の家だった。道端が前に出たらお母さんの全てが見えなくなった。親子ってこんなに似ないものなのか。
「まあまあ、いいのに。ごめんなさいね、ありがとう」
「あり、がと」
お菓子を受け取った道端がお母さんに渡すと、お母さんもお礼を言ってくれた。後でお茶菓子として出してくれるらしい。
玄関入ったところや廊下は俺の家と大差なくて安心した。虎の毛皮とか置いてあったら逃げてたかもしれない。そういう人は和風の家ってイメージだけど。
お母さんも近所でパートしてそうな親しみある感じで変な緊張が解けてきた。ようやく友だちの家としてお邪魔できる。
「部屋」
道端が二階のドアを開ける。ここが部屋か~、どんな部屋だろ……!?!?
「座って」
座ってって言ってもらったけど、どこに座れば、というか、座るところしかないというか、何も無いぞ!
辛うじて机と椅子、鞄があるだけで、机の上の教科書類以外物体が存在しない。ベッドが無いのは布団派なんだろうけど、本棚すら無いのはどうかと。食べる用のローテーブルも座布団も無い。モデルルームの十分の一くらいしか物が無い。人が住む場所か?
ミニマリストってやつかな。にしても物が無い。ミニマリストでももうちょっとあると思う。ミニマリストの部屋見たことないけど。
「失礼します」
どこに座れば正しいのか分からなくて、ど真ん中に座ってみる。その向かいに道端が座ったので恐らく正解。正解って何。
そういやヘルメット返しに来たんだった。さっさと渡しちゃおう。
「有難う御座いました。役に立ったよ」
こくり。
満足気に頷かれた。助手なのか司令官なのか定かではないけど、道端が楽しいならいいや。俺も良いことあったし。
「ねえ、この部屋綺麗っていうか何も無いよね。普段どうしてんの?」
ダメだった。我慢できなかったわ。だって生活感マイナスなんだもん。男子高校生だよ? 足の踏み場もないくらいな汚部屋の方がまだ現実味ある。ゴーレムなんか? 人間じゃなくてレム端だったのか?
「ある」
「物が?」
こくり。
そう言って道端がクローゼットを指差した。なるほど、俺が来たからクローゼットに仕舞ったとか? 全部?
「普段は部屋に物置いてるの?」
ふるふる。
首を振られた。おお、否定の仕草初めて見た。新しい行動覚えたロボットみたいでちょっと感動した。大型犬にも見える。道端って体格良いのにマスコット感あるよね。
「物、あると、ぶつかる」
「ぶつかる? でもここまで広くしなくても……ああ! 体大きいから!」
こくり。
「うんうんそっかあ。背が高い方が良いと思ってたけど、高いは高いで大変なことあるんだね」
「ぶつかると、痛い」
「うんうん」
タンスに小指とかね。分かる。道端って繊細そうだもん。じゃあ、趣味の物とかも全部クローゼットか。どういうのが好きか気になるけど、勝手に開けられないしな。開けたらただの失礼な人間だ。
コンコン。
「満、お菓子持ってきたよ」
お母さんが持ってきてくれたんだ。にしては、声が違うような。そうだ、インターフォンの人がこんな声だった。他の家族か。
「…………!」
「どうしたの?」
道端の顔が強張った。
ドアを見てる。ドア開けるのを戸惑ってる? つまり、ドアの外には道端が会いたくない相手がいるってこと?
家族だと思って開けたら誰もいなくてそこには水たまりが……ホラー脳がまだ機能してる! でも、自分の家である道端が怖がるって相当なのでは。道端が開けないなら開けない方がいいか。
「開けるよ~~~~ん!」
あっちから開けたぁ!!!
ドバァン! と開いたドアから金色の巨体が突っ込んでくる。
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――なんか見たことある人来たぁぁぁぁ!
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