【急募】バッドエンド

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ヒーローにヒーローはいない

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「だから、最初は満をヒーローにしようと思ったのさ!」
「いきなり方向転換した!」

 結構な被害者がここにいた。まさか道端がそんな目に遭っていたとは同情する。俺みたいに不可抗力でなったわけじゃなくて、無理矢理やらされたんでしょ。

──道端ッッ。

 ぶるぶる……。

 被害者は静かに震えていた。見ているのもツライ。兄貴に無理強いされたのに今でも仲良さげにいるなんて、道端は百九十の天使なのかもしれない。ゴーレムより生まれし天使。

「俺、上手く、できなかった」
「あれは僕に責任がある。満は何も悪いことはない。やりたくなかったのに、やらせてしまい申し訳なかった」
「だい、じょぶ」

 円先輩も過ちを認めているみたい。何か失敗しても今立ち直れているなら平気そうだな。

「しかし、何故だったんだろう。中学の時、満は不良を成敗するヒーローをしたんだが、いつの間にか番長などと呼ばれてしまってね。余計に不良が集まってしまい、なくなくヒーローを辞めたんだよ」

――上坂のバカでかい番長って道端のことだったんかい!!

「どうしてなんだろうなぁ。強すぎるのが敗因かもしれない」
「…………」

 本人には言えないけど、多分見た目だろうなぁ。百九十の強面が拳振り上げて歩いてきたらヒーローじゃなくて鬼かと思う。こんなにイイコなのに。でも、俺も最初は怖そうって思ってたもんな。中身を知らなかったら、前回の人生みたいにすれ違ったまま卒業したかもしれない。友だちになれて本当によかった。

「だから、満も蓮君がヒーローをしてくれてとても喜んでいるんだ」

 こくこく。

「そう言われると照れちゃいます」
「照れなくていい。胸を張っていい。僕たちはずっと応援しているから!」
「有難う御座います」

「ではさっそく額に入れたこのサインは玄関横にでも」
「飾らないでぇぇぇぇ!!!」

 半泣きで訴えて、サインはどうにか円先輩の部屋に飾ることになった。友だち来たらビビると思うよ。聞いたことのない名前をただただ書いたサインをご丁寧に飾ってる部屋なんて。漢字で「堀塚蓮」って書いただけだからね。字、下手だし。

 こんなことなら前もってボールペン字講座でも習っておくんだった。サインを書く日が今後一生来ないといいな。






「なぁ、昨日オンラインにならなかったけどどうしたん? 俺暇だったよ~」
「忘れてた。ごめん」

 昨日が怒涛過ぎてゲームどころじゃなかった。もししていてもオール負けだったと思う。ゲームって頭使うから。そうでなくてもこいつ強いし。勉強の時間全部ゲームに当ててるって言ってた。十五歳でそれは大分攻めてる。

「ちょっと忙しくて」
「なんで? 女子? 女子なのぉ? ぼっち同盟じゃなかったのかよ」
「違うって」

 ぼっち同盟は勝手に間田が言ってるだけで俺は入っていない。

「違うならなんだよ~」
「部活」
「なに、帰宅部じゃなかったん? 何部?」
「ボランティア部」
「ボランティア!? そんな部あったっけ?」

 俺も昨日初めて聞いた。部活紹介でもされなかった。

「ボランティアに興味あるなんて知らなかった」
「俺も知らなかった。知り合いの付き合いで入ったから」
「ああ、そういう。女子じゃねぇよな?」

 すぐ女子女子言うな、こいつ。女子とゲーム以外に何かないのか。でもその二つだけで十分楽しそうだから俺が口出すことないな。彼女いないけど。

「道端のお兄さん」
「オッケー俺の出番は無い。この話は終わりにしよう」

 道端の名前が出た瞬間、間田はスンとした顔で感情を失くした。道端はトイレに行っていてここにはいない。この二人、会話したことなくてまだかなりの距離があるんだよね。道端は間田のことなんとも思ってないけど、間田側が怖がってる。俺が軽い感じで話しかけてるの見てるのに。思い込みって手強い。

「蓮君、おはよう。入部届を持ってきたから書いてくれないかい」
「お早う御座います。分かりました」

 突然横にいてびっくりした。忍者か。ヒーローよりは向いてそうだけど、五十メートル女児より遅いから無理だった。
 朝から入部届を集めてさっそく提出するらしい。でも全員書いてもあと一人足りない。

「え、山川!」
「何!?」

 顔を上げてきょろきょろする。クラス以外の人は円先輩しかいない。おどかさないでよ、由奈がいると思ったじゃん。

「堀塚! この山川って人、一年生?」
「え、うん。一年生だけど」

 ヤッバ。円先輩が持ってた由奈の入部届が見えたみたい。うおお、なんだか由奈が入部することになってからちょっとずつ嫌な方向に向かっていってるような。

「女子じゃん」
「どうしたんだい? 由奈君と知り合いかな?」
「あの、そうじゃないんですけど、俺も入りたいです。ボランティア部!」
「安直!」

 マジかよ! なんで間田まで入っちゃうんだ。由奈と仲良くなりたいだけで名前しか知らない部に入ろうとする行動力は認めるけど。も~~~~今日塾だから、そこで全てから解放されて勉強に集中しよ。

「本当かい! よかった、あと一人必要だったんだ! 普段はあまり活動しないし名前だけ書いてくれればいいから」
「オッケーでぇす!」

 ノリの良い二人により間田の入部が一分で決まった。オイ。

 内輪で五人、しかも由奈関連ばっかり……。

 助けて俺だけのヒーロー!
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