【急募】バッドエンド

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距離ゼロ

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「逃げて……」
「……ヒンッッ」

 誰!? 今耳元で逃げてっつったの誰!?

「だ、誰かの声、したよね」
「ね~。怖ぁい」
「マジで? 聞いてなかった」

 なんでそんな平気なんだよ二人とも。恐怖感情死んでるやないかい。俺は一秒たりとも怖くない時がないっていうのに。

 ちょん。

──ぅわぁああああああ何か手に触ったぁあああああ!!!

 もうすでに膀胱危険なんだが!? 三歳児みたいに泣きわめきたいんですが!!

 暗闇をいいことに、我慢することなく無言で泣いている。多分、ドラマみたいに泣いている。いや、実際はブサイクでぐちゃぐちゃかもしれないけど。

 よーし、目、つぶろ。

 そう思って二秒、さっそく壁に激突した。

「おいい、堀塚今ぶつかった? ギャグ? 体張るじゃぁん!」
「うるさ。よそ見してただけだし」

 ダメだ。さすがに視界ゼロじゃ無理。でも怖いのも無理。妥協案として薄目で行くことにした。すっごい近眼の人みたい。

「あの、堀塚君」
「なに!?」

 声が上擦っちゃった!

「もうちょっとくっついててもいい? 暗くて進みにくいから」
「うううん、いいよ」

 うんなのかううんなのかよく分からない返事しちゃった。だって急展開ぶっこんでくるから。

「俺も! 俺もくっつく! 三人固まっていこ」
「そうだね~」
「いいよ」

 確かに暗いけど、たまに照明があるから近くにいればはぐれないって程じゃない。でもくっついてくれるなら一人よりずっと良い。俺は涙をそっと拭った。

「…………ッ」
「うわッなんか通った!」
「びっくり~」

 でも怖いものは怖かった。

──ぅひょあお!

 服を軽く引っ張られて心の中で悲鳴を上げる。隣には由奈がいるはずなのにと思ったら、由奈が服をつまんでいた。おい犯人!

 小さな怒りが通り過ぎると、今度は照れが押し寄せてきた。曲がりなりにも好意を寄せている相手からそんなことされたら勘違いしちゃうでしょ!

「ちょっとだけだから、いい?」

 何その科白。いや、由奈も怖いからってことなんだろうけども。けども。こんなん言われたらさぁ。

「いいよ」

 って言うしかないじゃん。

 円先輩いないから役得してしまった。いいよ。どんどん引っ張って。どうせ安物の服だから伸びたって構わない。掴まれたのが手じゃないところが友だちの距離って感じだけど、それもなんかくすぐったい。

 え。青春しちゃってる。マジだ。高校生みたい。高校生だよ。勘弁して。もしかしたら叶うんじゃないかって思っちゃう。

「一緒に行こ」

 ヒィィィン! ちょいちょいで耳元怖がらせてくる奴誰だよ! 誰もいないよ! どっかの壁にマイク仕込まれてるのか!?

「ねぇ……」
「出た!」

──ひぎゃああああああ!!!!!!!!

 ついに後ろから体が焼け爛れた女生徒が走ってきた。走ってきた!? 幽霊って走るの!? 三人で走り出す。全力で走る。由奈結構足速いね! そして女生徒も速いぃぃぃ!

 教室に逃げ込めば新たな生徒がうろついてるし、女生徒がいなくなってから廊下出て進んでも常に呻き声が聞こえるし、俺のキャパは既に限界を超え、由奈の手をつい握ってしまった。

 やっべ!

 でも振りほどかれなかった。もういいや。このまま行ってもらおう。だって怖いんだよ!

「私が視えるの……?」
「……ィンッ」

 薄目なのに視界に入ってくるぅぅ視線合わせてないのに怖いぃぃこの状況で楽しんでる間田と由奈も怖いぃぃ!!

「わっ幽霊出てきてないのに声したね」
「ね! 凝ってんね!」

 きゃっきゃすな!

 俺はもう全身爆発寸前だった。
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