貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

文字の大きさ
78 / 89
第四章

解決

 まだ何か言いたそうなカラットと別れ、一人帰路に就く。

「大人しくしてくれてありがとね」
「キャウ」

 鞄から顔を出したチョコは小さな小さなコウの干し肉をくわえていた。おやつに入れておいたものだ。チョコを撫でていたリルの笑顔が固まる。

「あれ、兄様に私が王宮に行くこともあるって伝えたっけ?」

 王都を振り返る。当然彼はいない。

 先ほど、カラットは王宮に来た時はと言っていた。記憶が確かならば、王都のそばに住んでいるとしか話していない。山に住んでいることも、王族と関わりがあることも何も言っていないはず。それなのに彼は。

「ええ……どうしよう。兄様、私のことを知らなかったのに、どういうこと……?」

 理由を聞いてみたいが、もう一度彼だけに会うことは難しいだろう。連絡方法もない。非常に気になるものの、ここは下手に動かない方がいい。

 今日一日、いろいろなことがあった。のんびり散策から五年振りの兄妹の再会まで。ひとまず、ノーバー家のことは解決した。父は一切興味が無いらしいので、兄の言動はともかく、今後ノーバー家に関しては悩まずに済むだろう。

「ノーバー家に戻れとか言われなくてよかった」

 一番の懸念はそこだった。今さら戻ったところで何もすることはない。もしかしたら良いところに嫁げと言われるかもしれないが。家のことで振り回されるのは嫌だ。自分の未来は自分で決める。

「あー、よかった!」

 一人でも家族に味方がいてよかった。理解者が、友がいてよかった。リルはようやく自由になれた気がした。

 辺りはすっかり暗い。リルは夕食を食べていないことを思い出した。チョコは鞄の中で食べていたので問題ない。腹をさすりながら急ぎ足で帰宅する。

 家に着き、今日は豪勢な食事にした。久々のステーキだ。外出続きのチョコはすでに横になっている。リルも今すぐ眠りにつきたい。ステーキを頬張り、ゆっくり入浴し、ふかふかのベッドに寝転がった。

「しあわせ」

 目を瞑ってみるが、普段三秒で寝られるはずなのに今日は妙に頭が冴えている。今日一日の出来事が目まぐるしすぎて脳がパンクしているのだろうか。

「まあいいや。眠くなったら寝よう。とりあえず、ノーバー家はひとまず解決。魔石の謎も理解した。これで、明日からようやくゆっくりできるかな」

 カラットたちと遭遇してから、いつ感知器が鳴るのか気が気ではなかった。しかも、結果がどうなるか想像もつかなかったため、ストレスは相当だったに違いない。しかし、それも気にしなくてよくなった今、リルは今後が楽しみで仕方なくなった。
感想 9

あなたにおすすめの小説

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。  発端は彼女の父親が行方不明となり、叔父である父の弟が公爵邸に乗り込んで来たこと。  何故か叔父一家が公爵家の資産に手を付け散財するが、祖父に相談してもコロネに任せると言って、手を貸してくれないのだ。  そもそも父の行方不明の原因は、出奔中の母を探す為だった。その母には出奔の理由があって…………。  残された次期後継者のコロネは、借金返済の為に事業を始めるのだ。  小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

愛さないと言われた妻、侍女と出て行く

菜花
ファンタジー
お前を愛することはないと夫に言われたコレットは、その日のうちに侍女のイネスと屋敷を出て行った。カクヨム様でも投稿しています。

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

いらない子のようなので、出ていきます。さようなら♪

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 魔力がないと決めつけられ、乳母アズメロウと共に彼女の嫁ぎ先に捨てられたラミュレン。だが乳母の夫は、想像以上の嫌な奴だった。  乳母の息子であるリュミアンもまた、実母のことを知らず、父とその愛人のいる冷たい家庭で生きていた。  そんなに邪魔なら、お望み通りに消えましょう。   (小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています)