貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

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第五章

自由なある日の出来事

「わあ、素敵。太陽が真上だ」

 眠くなったら寝て、起きたくなったら起きてみたら、昼になっていた。罪悪感は無い。

 十二時間寝た気がする。頭がすっきりしていて、一人暮らし初日のような爽快感だ。

 今日の予定は無い。明日の予定も無い。なんて素敵な未来だろう。天国はここにあった。

「ガウガウ」
「おはよう、チョコ」

 魔力を分けると、チョコが部屋の中でスキップした。チョコにもこの空気の軽さが分かるらしい。窓の外を見れば、快晴だ。

「今日は一日のんびりしよう」

 魔法石も魔石一個分全部作り終えた。畑の様子を見た後は外で日光浴をしてもいいし、散歩をしてもいい。なんなら一日中寝てもいい。

「何も無いって何でもできるってことだから、無限の自由でいいね」

 さっそく昼食を食べ、服を着替えて庭に出る。相変わらず畑は質の良い野菜が育っている。その時、テレビ電話が鳴った。

「はい、リルです」
『リル、息災か』
「はい」
『そうか! もらった野菜は有難く頂いたぞ。とても美味だった。また無くなったら連絡する』
「承知しました」

 言いたいことだけ言ってルッツが電話を切る。野菜の感想を言うためだけに電話をしてくれたらしい。こちらこそ有難い。

 自分が作ったものが誰かの喜びになるのは、予想より嬉しいものだった。野菜を育てるのはいくらでもできるので、これからも続けたい。なんなら、王宮魔法士より王宮野菜届出人になりたい。

「ルッツ様には届けてるから、すでになってるかも」

 野菜届出人という役職はないが、そういう気持ちであげよう。のんびり暮らしているリルにはぴったりの職だ。

「さて、水やりしたらやることなくなった。スライムの観察でもして、そろそろ冬に向けての準備をしようか」

 穏やかな気候のここでこれから来る季節を冬と呼んでいいものか微妙なところだが、夏よりは寒くなるので着るものは厚手にしなければならない。

「準備って言っても上着を何着か出せばいいから楽だよね。日本みたいにマイナスにならないし」

 その分、冬に出来る作物は王都では流通しない。北の方に行けばあるが、あまり南の方まで入荷しないと聞いた。リルがそういうものを量産することは可能だが、さすがに王都の分ともなると荷が重く、きっといつか倒れてしまう。現在のルッツに渡している程度が相応だろう。

 少し肌寒くなってきた山を散歩していると、チョコがリルの横を離れて草むらの匂いを嗅ぎだした。リルもそちらに歩いて様子を窺う。

「ギャウッ」
「チョコ、どうし──」
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