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再挑戦
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二人で仮眠を取り、陽が高くなった頃のそのそと起き出した。
土間の掃除をしようといらない布きれを取ろうとしたが、いつもの癖で右腕を伸ばしてしまいその場で固まった。
「俺がやる」
勘助が立ち上がって言った。
「でも、お前は目が」
「よく見えなくても、拭くくらいはできるよ」
勘助は服の裾を巻き上げてから土間に下り、端から順に拭いて回った。汚れた場所も汚れていない場所も、隅々まで拭いた。半次郎はそれだけで涙が出そうだった。
「すごく綺麗になった。ありがとう」
「やった」
半次郎が声をかけると、勘助は肩で息をしながら満面の笑みで振り返った。
「俺、役に立ってる?」
「ああ、俺よりずっと」
「もっと沢山できるよ」
「そりゃ楽しみだ」
勘助を水瓶に案内し、二人して手を洗う。その後はさっそく仕込みに入った。
「一から作り直しだ。勘助、沢山手伝ってもらうことになるけど、大丈夫か?」
「まかせて」
腰に手を当て、自信ありげに笑う。半次郎もつられて笑った。
「それじゃあ、赤えんどうを剥いてもらおうかな」
半次郎は勘助に剥き方を教えた。コツさえ掴めれば、よく見えずとも簡単に剥けるようになった。
水が入った鍋は二人で協力して運んだ。
材料を煮るのはさすがに半次郎が行った。勘助は自分の出番が来ないかと傍をうろうろした。
「よし、味見をしてくれ」
「いいよ!」
赤えんどう、餅と続いて、肝心の黒蜜の味見になった。
ミツが作ってくれた思い出の黒蜜はもう無い。それに合わせて作っていた黒蜜も底をついている。頼りは勘助の舌だけだ。
壺に残された少しの黒蜜を舐めてから、勘助は今出来上がったばかりの黒蜜を味見した。
「あとほんの少しだけ甘くした方がいい」
「分かった」
微調整をして、一度火を止める。冷やしてからまた味見をして、元の黒蜜と同じ味になっているか確かめた。
「改良した蜜が無事だっただけでもよかった。もしこれも駄目だったら、勘助の腹がはち切れるところだった」
休憩中、黒蜜が入っていた壺を見つめながら半次郎が呟いた。
あの壺には黒蜜以外にも、二人の思い出が詰まっていた。
「勘助。今日も世話になった。俺はしばらくぽんこつだから、どうか当日まで宜しく頼む」
座っていた半次郎が勘助の方を向き、がばりと頭を下げた。
「大丈夫。俺はいつだって半次郎の傍にいるよ」
すると、半次郎が勘助の肩に手を回して言った。
「助かるぜ、相棒」
四日後、運命の日が来た。
半次郎の右腕はまだ治っていない。傷はほとんど塞がったが、動かすとまだ痛かった。服の下は手拭いで巻いてあり、料理をすることもままならなかった。
しかし、彼には頼もしい相棒がいる。
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「あとほんの少しだけ甘くした方がいい」
「分かった」
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すると、半次郎が勘助の肩に手を回して言った。
「助かるぜ、相棒」
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しかし、彼には頼もしい相棒がいる。
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