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私は転生した
新たな装具
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――やばいやばいやばいやばい。語彙力死ぬくらいにやばい。未来の犯人(仮)と出かけることになっちゃった。準備整うわけなぁい! 瞑想50000000時間欲しい!
自室で一人きり胡威風は寝台の上でごろごろ転がった。準備といえども、法術師である胡威風に重厚な鎧は必要無く、清めた漢服を身に着けるだけだ。白と青のこれが死装束に思えてくる。
「はぁ……こんなイベントいらない……あ、もしかしてこれって、原作序盤の東軍が外での演習中に起きたアクシデントに繋がるとか」
状況は異なるが、演習中濃霧に見舞われ、たまたま近くにいた陳雷と一緒に魔族と対峙した事件があった。場所も東の端で、知らずの内にイベントを発生させてしまったらしい。原作の胡威風はというと、陳雷を置き去りに自分だけ空へ飛び上がり様子を窺うだけだったが。最後は、大怪我を負った陳雷に実力不足だと罵りながら、剣一振りで相手を倒して終わった。胡威風は震えた。
このイベントと今回の二人での旅が同じものだとすると、魔族と出会うということだ。まだレベル52の胡威風が。実力不足なのは今の胡威風の方である。
「何かないか。清洗以外にお守りが欲しい。俺を助けるお守り……」
引き出しという引き出しを探し、どうにか護符を見つけ、服の中に詰め込んだ。そして鏡台の上に、清洗と同じ装飾の装具を発見した。
「おお……ッこれは!」
原作の胡威風は主人公ではなかったのであまり詳しくないが、この装具は覚えていた。
「突殺だ! 格好良い!」
さっそく右手に嵌める。これ装具は腕輪と指輪から成っており、その二つが鎖で繋がれている。胡威風の意思で中指にある指輪から毒針が出し入れ出来、刺されると解毒剤が無い限り致命傷を与えることが出来る。毒より強大な力を持つ者の場合はこの限りではないが、魔王や幹部クラスに出会わなければそこは気にしなくていい。接近戦になった時に持ってこいの武器だ。
「すげぇ、いざとなったらこれを使おう」
胡威風はきょろきょろ辺りを見回し、人差し指と中指を真っすぐ伸ばし、突殺に念じた。
「突殺!」
瞬間、鋭い針が空を突き刺した。
「おおおおおお!」
誰もいないのにハイタッチしたくなった。
必殺技を出したヒーローの気分だ。しかも、長さも自由自在で、短いと数センチ、一番長く念じると一メートル程まで伸びた。無駄に出しては戻しを繰り返す。
「これパンチする振りして刺すことも出来る。暗器みたい」
新しい玩具を与えられた子どものようにはしゃいでいた胡威風が、ふと立ち止まる。額に手を当てる。
「落ち着け俺。確かに格好良いし接近戦での勝利に希望は持てたけど、その前に死んじゃうかもしれないんだからな。あ~~~~空からレベル降ってきたらいいのに」
降ってくるわけもなく、三徹の面持ちで来た道を戻る。
「……東の門てどこだ」
自分で指示しておいて場所が分からなかった。まだ地理を把握していないことを忘れていた。泣きたい。
「とりあえずさっき陳雷と別れたところまで戻ろう」
きっと迷子はこんな気分なのだろう。心細くて、自分自身がちっぽけに思えてくる。かといって誰かに「東の門どこですか」など聞けるわけもない。
「そうだ!」
腰に差している清洗を触る。法術師は剣で空が飛べたはずだ。法術師レベルがまだ低くても少し飛ぶくらいは出来るだろう。胡威風は廊下から見えていた中庭に出て、姿勢を正した。
「よぉし……こほん。清洗」
すると、清洗が勝手に鞘から抜け、胡威風の前でふわふわと浮いた。変な悲鳴が出るのを抑えながら軽くその場で飛ぶと、体が軽く浮き上がり清洗の上へ乗った。
「え、すげ、飛んでる、え、え」
そのまま数メートル上へ上がった清洗が道案内するかの如く前へ進む。すぐに豪奢な門が見えた。あれが東の門だろう。目立つ前に門の裏手で剣から降りる。
「剣で飛べるとかチート過ぎ。清洗ちゃんありがとぉぉ」
思わず清洗を優しく抱きしめ、柄の部分を頬ずりする。清洗は素早く鞘へ収まった。
「逃げることないのに。とりあえず恥かかなくて済んでよかった」
自室で一人きり胡威風は寝台の上でごろごろ転がった。準備といえども、法術師である胡威風に重厚な鎧は必要無く、清めた漢服を身に着けるだけだ。白と青のこれが死装束に思えてくる。
「はぁ……こんなイベントいらない……あ、もしかしてこれって、原作序盤の東軍が外での演習中に起きたアクシデントに繋がるとか」
状況は異なるが、演習中濃霧に見舞われ、たまたま近くにいた陳雷と一緒に魔族と対峙した事件があった。場所も東の端で、知らずの内にイベントを発生させてしまったらしい。原作の胡威風はというと、陳雷を置き去りに自分だけ空へ飛び上がり様子を窺うだけだったが。最後は、大怪我を負った陳雷に実力不足だと罵りながら、剣一振りで相手を倒して終わった。胡威風は震えた。
このイベントと今回の二人での旅が同じものだとすると、魔族と出会うということだ。まだレベル52の胡威風が。実力不足なのは今の胡威風の方である。
「何かないか。清洗以外にお守りが欲しい。俺を助けるお守り……」
引き出しという引き出しを探し、どうにか護符を見つけ、服の中に詰め込んだ。そして鏡台の上に、清洗と同じ装飾の装具を発見した。
「おお……ッこれは!」
原作の胡威風は主人公ではなかったのであまり詳しくないが、この装具は覚えていた。
「突殺だ! 格好良い!」
さっそく右手に嵌める。これ装具は腕輪と指輪から成っており、その二つが鎖で繋がれている。胡威風の意思で中指にある指輪から毒針が出し入れ出来、刺されると解毒剤が無い限り致命傷を与えることが出来る。毒より強大な力を持つ者の場合はこの限りではないが、魔王や幹部クラスに出会わなければそこは気にしなくていい。接近戦になった時に持ってこいの武器だ。
「すげぇ、いざとなったらこれを使おう」
胡威風はきょろきょろ辺りを見回し、人差し指と中指を真っすぐ伸ばし、突殺に念じた。
「突殺!」
瞬間、鋭い針が空を突き刺した。
「おおおおおお!」
誰もいないのにハイタッチしたくなった。
必殺技を出したヒーローの気分だ。しかも、長さも自由自在で、短いと数センチ、一番長く念じると一メートル程まで伸びた。無駄に出しては戻しを繰り返す。
「これパンチする振りして刺すことも出来る。暗器みたい」
新しい玩具を与えられた子どものようにはしゃいでいた胡威風が、ふと立ち止まる。額に手を当てる。
「落ち着け俺。確かに格好良いし接近戦での勝利に希望は持てたけど、その前に死んじゃうかもしれないんだからな。あ~~~~空からレベル降ってきたらいいのに」
降ってくるわけもなく、三徹の面持ちで来た道を戻る。
「……東の門てどこだ」
自分で指示しておいて場所が分からなかった。まだ地理を把握していないことを忘れていた。泣きたい。
「とりあえずさっき陳雷と別れたところまで戻ろう」
きっと迷子はこんな気分なのだろう。心細くて、自分自身がちっぽけに思えてくる。かといって誰かに「東の門どこですか」など聞けるわけもない。
「そうだ!」
腰に差している清洗を触る。法術師は剣で空が飛べたはずだ。法術師レベルがまだ低くても少し飛ぶくらいは出来るだろう。胡威風は廊下から見えていた中庭に出て、姿勢を正した。
「よぉし……こほん。清洗」
すると、清洗が勝手に鞘から抜け、胡威風の前でふわふわと浮いた。変な悲鳴が出るのを抑えながら軽くその場で飛ぶと、体が軽く浮き上がり清洗の上へ乗った。
「え、すげ、飛んでる、え、え」
そのまま数メートル上へ上がった清洗が道案内するかの如く前へ進む。すぐに豪奢な門が見えた。あれが東の門だろう。目立つ前に門の裏手で剣から降りる。
「剣で飛べるとかチート過ぎ。清洗ちゃんありがとぉぉ」
思わず清洗を優しく抱きしめ、柄の部分を頬ずりする。清洗は素早く鞘へ収まった。
「逃げることないのに。とりあえず恥かかなくて済んでよかった」
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