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プロローグ
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「空ってどんな色?」って思う人は少ないかも。
空なんてみんな嫌という程見てるからね。
こんな質問すると皆の頭の上に「は?」って言う文字が浮き出るぐらいの表情になる人多いと思う。
まぁ、それは目が見える人の場合なんだけどね。
私、磨波城夕は5歳の時に視力を完全に失った。
つまり盲目ってやつ。
もともと生まれた時からひどい弱視だと医者から伝えられていたため両親も覚悟していたらしい。
5歳って物心着いてきた頃なんだけど正直親の顔も分からないんだよね。
朝起きたら「おはよう」って声はするけど、どんな表情なのか、何をしているのか、分からないことは沢山。
自分の最も大切な部分が一つ無いと他の部分がより発達するって言うのは案外正解かもしれない。
家族も盲目の私のことを大変だとか不自由だとか思うことはなく平々凡々な幸せ家族なこともあり私は小学生になるまでの月日が流れるのをすごく早く感じた。
そして今あっという間に小学生6年生。小学校は普通の小学校に通っている。
学校に到着しいつも思うこと、盲学校はもっとこう下駄箱とかにも工夫があるのかな?毎日ここで手間取ってしまうんだよね。仕方ないことなんだけど。
下駄箱に点字で印してくれているのは一つだけだから見つけやすいんだけど…そこにたどり着くまでにすごく時間がかかっちゃう。
やっとの思いで見つけ上靴を履き廊下を歩いていると「おはよう!夕!!」と後ろから可愛い元気な声が聞こえた。古河夏弥。私の良き理解者であり大切な友人だ。あだ名はなっちゃん。
「おはよう!なっちゃん!」と振り返って挨拶を返すと太陽みたいな笑顔でニコニコしている。そして2人並んで廊下を歩くのが毎日の光景である。
教室に着くなり勢いよく扉を開けて「みんなーー!!!おはよー!!!」と言ってなっちゃんは相手が挨拶を返す前に輪に入り盛り上がっている声が聞こえる。
その光景を聴いている私にクラス委員長の大崎さんが「おはよう!夕ちゃん!今日もなっちゃんは元気いっぱいだね!挨拶返す前にもう皆と休み時間何して遊ぶかについて話してるよ」と少々呆れ声だ。なっちゃんは誰とでも分け隔てなく接してくれる。
目が見えなくて日常生活で迷惑をかけることが多い私の事も常に気をかけてくれクラスの様子を教えてくれる。そんななっちゃんに私は憧れていた。
私もなっちゃんみたいに面白くて優しくて頼りになれる存在になれたらないいなって。
そんなことをぼーっと考えていると「ドン」っと何かにぶつかり尻もちをついてしまった。
「ごめんなさい!大丈夫??どこか痛くない?」と私が焦って聞くと「いや、俺そっちではないけど…大丈夫。
磨波城こそ大丈夫?」と言って手を取って立たせてくれた。
あっ…逆向いて話していたのかと分かり少し焦った。
(夕)「大丈夫。私は何ともないよ。ありがとう。」
(羽月)「…そっか。なら良かった。」
少し間が空きガタンと椅子に座った音が鳴った。
彼は羽月浩太郎。
無口であまり声を聞いたことはない。委員会が図書委員で一緒なことを除いてはどんな子なのか分からない。そんなことをふと考えているとなっちゃんが電光石火の勢いで飛んできてくれ
(夏弥)「今のびっくりしたね~!本当に大丈夫?」と聞いてくれたので「大丈夫だよ。…羽月くんて優しい人だね。」
(夏弥)「夕…あんた羽月の顔が見えたらびっくりするよ…羽月ってめっちゃ目付き悪いよ!ちょっと私でも近寄り難い感じのオーラ出てるし…」なっちゃんのオドオドした声なんて珍しい。
羽月くん相当強面な顔してるんだなって想像してみると…「ぷっ…」と吹き出してしまった。「え!?そこでどうして笑うのよ!?えぇーーー!?」っとなっちゃんは困惑気味に頭をくしゃくしゃかいている音を聞きながらさっきのことを思い出していた。
私が尻もちをついて羽月くんが手を掴んで立たせてくれた時、手汗をかいてブルブル震えていた。
それには私もびっくりしちゃったけど。
だって普段の羽月くんは…なんて言うか…クール?シャイ?って言う感じで物怖じしないどっしりと構えているイメージで。
皆は分からなくていつもの羽月くんと思っていたみたいだけど目が見えない私には他のところが人より感覚が研ぎ澄まされているので分かってしまうんだよね。
なのに顔が強面で今も澄まして座っているんだと考えるとついつい笑っちゃう。
本当はとっても緊張していて頑張って立たせてくれたのにね。
羽月くんは口下手で不器用なんだなって。
羽月くんとはあまり喋る機会とかないからクラスの友達の意外な一面?が知れて嬉しくなった。
◆❖◇◇❖◆
授業が始まるとみんなは教科書、ノート、筆箱などを出し始めるが私は教科書と携帯用点字盤を用意する。
携帯用点字盤は板と点字を打つ道具が1つになっていて持ち運び便利だからだ。
ちなみに点字は右から左に打つんだけど読む場合は点字と逆の並びで打つんだけど…それが結構難しくて1年生の頃からやってるけど未だに間違えて打ってしまうからノートとか見返すとん?なにこれ?って言う言葉並びになっている事が多々ある。
そんな時は右隣のなっちゃんか左隣の大崎さんに聴いている。
2人にはいつも助けられてばっかりで本当に有難く思っている。
2人のおかげでクラスで授業に参加できると言っても過言ではない。
当たり前かもしれない日常がとっても幸せに感じてニヤけてしまう。
(夏弥)「ねぇ…なんで笑ってるの?何かいい事でもあった??」と興味津々に聞いてくるなっちゃん。
(夕)「何も無いよっ。ただこの瞬間がなんか幸せだなぁって」と答えるとなっちゃんは「退屈な授業受けているのが!?」とさぞ不思議そうな声を出している。
そして
(先生)「こら!そこ!なにこそこそ話している!…また古河と磨波城かぁ…まったくお前らの場合こそこそ話しているではなく普通に聞こえているからな!」と先生に怒られるのである。
(夏弥)「ごめんなさい!先生。今からちゃんと聞くからそんな眉間にシワ寄らさず…ね?」
(先生)「お前らが話をするから俺の眉間にシワが寄るんだ。」とこれにはなっちゃんもあちゃーっと言う声で静かになった。
私はそれが面白くて可笑しくていつも笑ってしまう。
◆❖◇◇❖◆
授業があっという間に終わり放課後私は図書委員の仕事があったためなっちゃんと別れ図書室に向かった。
ガラガラと扉を開けると羽月くんが返却された本を棚に戻しているところだった。図書委員の仕事は他の委員会と違って週に1度ある。
(夕)「遅くなってごめんね。」
(羽月)「大丈夫。俺も今さっき来たところだから。」そう言って黙々と棚に本を整理している音が聞こえる。
私は目が見えない。
他の委員会はその…動くことが多いので図書委員が最適だということになり図書委員をしている。
ちなみになっちゃんは体育委員だ。
私は本を返しに来る人の対応をし羽月くんが本を整理してくれるのである。
そして整理が終わると受付の椅子に座るのである。今日の羽月くんはなんていうか…こう…いつも静かなんだけど…落ち着きがない?って感じた。
(夕)「あの…羽月くん…その…今日の朝はごめんね…私が通路塞いじゃってたから」
(羽月)「磨波城のせいじゃないよ。俺がぼーっとしてたから。」
(夕)「そ、そっか…それならお互い様だね…。」
(羽月)「うん。」
(羽月・夕)「…」
きっ気まずい!!それが心の本音である。うぅ…ここから何話そうかな…。好きな物は何?将来の夢は?もうすぐ中学生だけど何部に入るか決めた?うーーーーん…
(羽月)「磨波城はさ。」
(夕)「え!?あ!うん!なに?」
(羽月)「目が見えなくて辛くなったことないの?」これは驚いた。まさかいつも無口な羽月くんが話しかけてきた事さえも貴重なのに質問なんて。あんぐり口を開けていると
(羽月)「ぷっ!なんだその顔。」と言ってケラケラ笑っている。
いやぁそりゃびっくりして口もあんぐり開いちゃうよ!と心の中で思い笑われたことに不貞腐れていると
(羽月)「ごめんごめん…さっきの話に戻るけど。」(夕)「あっ、目が見えないのが辛くないかってやつ?」
(羽月)「そうそう。俺さ初めて今年1年お前と委員会やってるけどその…お前はやっぱ謝ることが多いように感じるんだよな。
目が見えない分皆に迷惑かけているからって感じがすげぇ伝わってくる。」
(夕)「あーー…確かに羽月くんの読みは当たってるよ。本当に申し訳なく思うときもあるんだ。でも私には普通の学校に通えていることが奇跡でなっちゃんや大崎さん…羽月くん達クラスの皆に私は支えられている。こんな私でも挫けそうになる時はあるんだよ?例えば今日の授業の写しミスとか…授業中話しちゃって数学の先生に注意されたこととか?」
(羽月)「それは古河が話しかけたからだろ?」
(夕)「まぁそうなんだけど。」
(羽月)「あの時の古河の慌てようは傑作だったけどな。それなっちゃんが聴いたら顔真っ赤にして怒るだろうな。」
(羽月・夕)「ぷっ…あははは!」
(羽月)「俺、磨波城とこんなに話したの初めてかもな。」
(夕)「うん。そうだね。私も羽月くんとこんなに話したのは初めてだよ。」
(羽月)「俺さ…5歳の頃から空手やってるんだ。兄貴がやってて…それで始めたんだけど…正直今スランプでさ。勝てていた試合も勝てなくて…楽しかったはずなんだけど全然楽しくなくて。」
(夕)「羽月くん空手やってるんだね!凄い!」キラキラした目で私は前のめりになりながら羽月くんに言った。
(羽月)「お…おう…ありがと。」
その時羽月くんの顔が真っ赤になっていたことを私は知らない。
(夕)「辞めたくなったことはあるの?」
(羽月)「ここ最近は毎日。何をやっても上手くいかない気がして。昨日も空手のこと考えていたら磨波城にぶつかっちゃって…」
(夕)「なるほど…そうだったんだ。うーーーーん…もし私が目が見えていたら。」
(羽月)「うん。」
(夕)「今みたいに苦労はしてないかもしれないね。でも、私は目が見えないことを悔やんだりはしてないんだ。逆に目が見えないことで気づけることや感じることがある。目が見えていたらこうやって羽月くんの悩みも聞けなかったかもしれない。それって凄く素敵なことじゃない?皆には無いものを私は持ってると思ってるの。だから今羽月くんは苦しいかもしれないけど違う見方をしてみても良いかも。自分の気持ちと向き合うと前向きになると思う。」
(羽月)「…」
(夕)「ご…ごめん!偉そうなこと言っちゃって。」
(羽月)「いや…磨波城に話して良かった。ありがとう。」その時、顔は分からないけど羽月くんの「ありがとう」にドキドキした。
羽月くんの声は力強く嬉しそうであった。図書委員の仕事も終わり下校準備をしていると
(羽月)「磨波城。」
(夕)「ん?なに?」
(羽月)「俺もう少し空手頑張ってみようと思う。」
(夕)「うん!頑張って!羽月くんならきっときっと大丈夫!」
(羽月)「おう!じゃまた明日!」
(夕)「また明日!」こうして私たちの会話は終わった。
◆❖◇◇❖◆
そして季節は冬。
(夕)いつもと変わらない帰宅時「ただいまー…ん??パパ?ママ?どうしたの?」
(父)「夕…ちょっとこっちに来なさい。」
(母)「…」(夕)「う…うん。どうしたの?」嫌な音がする。
そんな言葉が1番思いつく。
シーンとして両親どちらも緊張しているのが伝わってくる。
こっちまで緊張してきて言葉を待っていると「…っと考えている。」
(夕)「え?ごめんなさい。聞こえなかった。もう1回言って?」
(父)「夕…お前は中学から盲学校への進学に決めた。」それはまさに青天の霹靂であった。
空なんてみんな嫌という程見てるからね。
こんな質問すると皆の頭の上に「は?」って言う文字が浮き出るぐらいの表情になる人多いと思う。
まぁ、それは目が見える人の場合なんだけどね。
私、磨波城夕は5歳の時に視力を完全に失った。
つまり盲目ってやつ。
もともと生まれた時からひどい弱視だと医者から伝えられていたため両親も覚悟していたらしい。
5歳って物心着いてきた頃なんだけど正直親の顔も分からないんだよね。
朝起きたら「おはよう」って声はするけど、どんな表情なのか、何をしているのか、分からないことは沢山。
自分の最も大切な部分が一つ無いと他の部分がより発達するって言うのは案外正解かもしれない。
家族も盲目の私のことを大変だとか不自由だとか思うことはなく平々凡々な幸せ家族なこともあり私は小学生になるまでの月日が流れるのをすごく早く感じた。
そして今あっという間に小学生6年生。小学校は普通の小学校に通っている。
学校に到着しいつも思うこと、盲学校はもっとこう下駄箱とかにも工夫があるのかな?毎日ここで手間取ってしまうんだよね。仕方ないことなんだけど。
下駄箱に点字で印してくれているのは一つだけだから見つけやすいんだけど…そこにたどり着くまでにすごく時間がかかっちゃう。
やっとの思いで見つけ上靴を履き廊下を歩いていると「おはよう!夕!!」と後ろから可愛い元気な声が聞こえた。古河夏弥。私の良き理解者であり大切な友人だ。あだ名はなっちゃん。
「おはよう!なっちゃん!」と振り返って挨拶を返すと太陽みたいな笑顔でニコニコしている。そして2人並んで廊下を歩くのが毎日の光景である。
教室に着くなり勢いよく扉を開けて「みんなーー!!!おはよー!!!」と言ってなっちゃんは相手が挨拶を返す前に輪に入り盛り上がっている声が聞こえる。
その光景を聴いている私にクラス委員長の大崎さんが「おはよう!夕ちゃん!今日もなっちゃんは元気いっぱいだね!挨拶返す前にもう皆と休み時間何して遊ぶかについて話してるよ」と少々呆れ声だ。なっちゃんは誰とでも分け隔てなく接してくれる。
目が見えなくて日常生活で迷惑をかけることが多い私の事も常に気をかけてくれクラスの様子を教えてくれる。そんななっちゃんに私は憧れていた。
私もなっちゃんみたいに面白くて優しくて頼りになれる存在になれたらないいなって。
そんなことをぼーっと考えていると「ドン」っと何かにぶつかり尻もちをついてしまった。
「ごめんなさい!大丈夫??どこか痛くない?」と私が焦って聞くと「いや、俺そっちではないけど…大丈夫。
磨波城こそ大丈夫?」と言って手を取って立たせてくれた。
あっ…逆向いて話していたのかと分かり少し焦った。
(夕)「大丈夫。私は何ともないよ。ありがとう。」
(羽月)「…そっか。なら良かった。」
少し間が空きガタンと椅子に座った音が鳴った。
彼は羽月浩太郎。
無口であまり声を聞いたことはない。委員会が図書委員で一緒なことを除いてはどんな子なのか分からない。そんなことをふと考えているとなっちゃんが電光石火の勢いで飛んできてくれ
(夏弥)「今のびっくりしたね~!本当に大丈夫?」と聞いてくれたので「大丈夫だよ。…羽月くんて優しい人だね。」
(夏弥)「夕…あんた羽月の顔が見えたらびっくりするよ…羽月ってめっちゃ目付き悪いよ!ちょっと私でも近寄り難い感じのオーラ出てるし…」なっちゃんのオドオドした声なんて珍しい。
羽月くん相当強面な顔してるんだなって想像してみると…「ぷっ…」と吹き出してしまった。「え!?そこでどうして笑うのよ!?えぇーーー!?」っとなっちゃんは困惑気味に頭をくしゃくしゃかいている音を聞きながらさっきのことを思い出していた。
私が尻もちをついて羽月くんが手を掴んで立たせてくれた時、手汗をかいてブルブル震えていた。
それには私もびっくりしちゃったけど。
だって普段の羽月くんは…なんて言うか…クール?シャイ?って言う感じで物怖じしないどっしりと構えているイメージで。
皆は分からなくていつもの羽月くんと思っていたみたいだけど目が見えない私には他のところが人より感覚が研ぎ澄まされているので分かってしまうんだよね。
なのに顔が強面で今も澄まして座っているんだと考えるとついつい笑っちゃう。
本当はとっても緊張していて頑張って立たせてくれたのにね。
羽月くんは口下手で不器用なんだなって。
羽月くんとはあまり喋る機会とかないからクラスの友達の意外な一面?が知れて嬉しくなった。
◆❖◇◇❖◆
授業が始まるとみんなは教科書、ノート、筆箱などを出し始めるが私は教科書と携帯用点字盤を用意する。
携帯用点字盤は板と点字を打つ道具が1つになっていて持ち運び便利だからだ。
ちなみに点字は右から左に打つんだけど読む場合は点字と逆の並びで打つんだけど…それが結構難しくて1年生の頃からやってるけど未だに間違えて打ってしまうからノートとか見返すとん?なにこれ?って言う言葉並びになっている事が多々ある。
そんな時は右隣のなっちゃんか左隣の大崎さんに聴いている。
2人にはいつも助けられてばっかりで本当に有難く思っている。
2人のおかげでクラスで授業に参加できると言っても過言ではない。
当たり前かもしれない日常がとっても幸せに感じてニヤけてしまう。
(夏弥)「ねぇ…なんで笑ってるの?何かいい事でもあった??」と興味津々に聞いてくるなっちゃん。
(夕)「何も無いよっ。ただこの瞬間がなんか幸せだなぁって」と答えるとなっちゃんは「退屈な授業受けているのが!?」とさぞ不思議そうな声を出している。
そして
(先生)「こら!そこ!なにこそこそ話している!…また古河と磨波城かぁ…まったくお前らの場合こそこそ話しているではなく普通に聞こえているからな!」と先生に怒られるのである。
(夏弥)「ごめんなさい!先生。今からちゃんと聞くからそんな眉間にシワ寄らさず…ね?」
(先生)「お前らが話をするから俺の眉間にシワが寄るんだ。」とこれにはなっちゃんもあちゃーっと言う声で静かになった。
私はそれが面白くて可笑しくていつも笑ってしまう。
◆❖◇◇❖◆
授業があっという間に終わり放課後私は図書委員の仕事があったためなっちゃんと別れ図書室に向かった。
ガラガラと扉を開けると羽月くんが返却された本を棚に戻しているところだった。図書委員の仕事は他の委員会と違って週に1度ある。
(夕)「遅くなってごめんね。」
(羽月)「大丈夫。俺も今さっき来たところだから。」そう言って黙々と棚に本を整理している音が聞こえる。
私は目が見えない。
他の委員会はその…動くことが多いので図書委員が最適だということになり図書委員をしている。
ちなみになっちゃんは体育委員だ。
私は本を返しに来る人の対応をし羽月くんが本を整理してくれるのである。
そして整理が終わると受付の椅子に座るのである。今日の羽月くんはなんていうか…こう…いつも静かなんだけど…落ち着きがない?って感じた。
(夕)「あの…羽月くん…その…今日の朝はごめんね…私が通路塞いじゃってたから」
(羽月)「磨波城のせいじゃないよ。俺がぼーっとしてたから。」
(夕)「そ、そっか…それならお互い様だね…。」
(羽月)「うん。」
(羽月・夕)「…」
きっ気まずい!!それが心の本音である。うぅ…ここから何話そうかな…。好きな物は何?将来の夢は?もうすぐ中学生だけど何部に入るか決めた?うーーーーん…
(羽月)「磨波城はさ。」
(夕)「え!?あ!うん!なに?」
(羽月)「目が見えなくて辛くなったことないの?」これは驚いた。まさかいつも無口な羽月くんが話しかけてきた事さえも貴重なのに質問なんて。あんぐり口を開けていると
(羽月)「ぷっ!なんだその顔。」と言ってケラケラ笑っている。
いやぁそりゃびっくりして口もあんぐり開いちゃうよ!と心の中で思い笑われたことに不貞腐れていると
(羽月)「ごめんごめん…さっきの話に戻るけど。」(夕)「あっ、目が見えないのが辛くないかってやつ?」
(羽月)「そうそう。俺さ初めて今年1年お前と委員会やってるけどその…お前はやっぱ謝ることが多いように感じるんだよな。
目が見えない分皆に迷惑かけているからって感じがすげぇ伝わってくる。」
(夕)「あーー…確かに羽月くんの読みは当たってるよ。本当に申し訳なく思うときもあるんだ。でも私には普通の学校に通えていることが奇跡でなっちゃんや大崎さん…羽月くん達クラスの皆に私は支えられている。こんな私でも挫けそうになる時はあるんだよ?例えば今日の授業の写しミスとか…授業中話しちゃって数学の先生に注意されたこととか?」
(羽月)「それは古河が話しかけたからだろ?」
(夕)「まぁそうなんだけど。」
(羽月)「あの時の古河の慌てようは傑作だったけどな。それなっちゃんが聴いたら顔真っ赤にして怒るだろうな。」
(羽月・夕)「ぷっ…あははは!」
(羽月)「俺、磨波城とこんなに話したの初めてかもな。」
(夕)「うん。そうだね。私も羽月くんとこんなに話したのは初めてだよ。」
(羽月)「俺さ…5歳の頃から空手やってるんだ。兄貴がやってて…それで始めたんだけど…正直今スランプでさ。勝てていた試合も勝てなくて…楽しかったはずなんだけど全然楽しくなくて。」
(夕)「羽月くん空手やってるんだね!凄い!」キラキラした目で私は前のめりになりながら羽月くんに言った。
(羽月)「お…おう…ありがと。」
その時羽月くんの顔が真っ赤になっていたことを私は知らない。
(夕)「辞めたくなったことはあるの?」
(羽月)「ここ最近は毎日。何をやっても上手くいかない気がして。昨日も空手のこと考えていたら磨波城にぶつかっちゃって…」
(夕)「なるほど…そうだったんだ。うーーーーん…もし私が目が見えていたら。」
(羽月)「うん。」
(夕)「今みたいに苦労はしてないかもしれないね。でも、私は目が見えないことを悔やんだりはしてないんだ。逆に目が見えないことで気づけることや感じることがある。目が見えていたらこうやって羽月くんの悩みも聞けなかったかもしれない。それって凄く素敵なことじゃない?皆には無いものを私は持ってると思ってるの。だから今羽月くんは苦しいかもしれないけど違う見方をしてみても良いかも。自分の気持ちと向き合うと前向きになると思う。」
(羽月)「…」
(夕)「ご…ごめん!偉そうなこと言っちゃって。」
(羽月)「いや…磨波城に話して良かった。ありがとう。」その時、顔は分からないけど羽月くんの「ありがとう」にドキドキした。
羽月くんの声は力強く嬉しそうであった。図書委員の仕事も終わり下校準備をしていると
(羽月)「磨波城。」
(夕)「ん?なに?」
(羽月)「俺もう少し空手頑張ってみようと思う。」
(夕)「うん!頑張って!羽月くんならきっときっと大丈夫!」
(羽月)「おう!じゃまた明日!」
(夕)「また明日!」こうして私たちの会話は終わった。
◆❖◇◇❖◆
そして季節は冬。
(夕)いつもと変わらない帰宅時「ただいまー…ん??パパ?ママ?どうしたの?」
(父)「夕…ちょっとこっちに来なさい。」
(母)「…」(夕)「う…うん。どうしたの?」嫌な音がする。
そんな言葉が1番思いつく。
シーンとして両親どちらも緊張しているのが伝わってくる。
こっちまで緊張してきて言葉を待っていると「…っと考えている。」
(夕)「え?ごめんなさい。聞こえなかった。もう1回言って?」
(父)「夕…お前は中学から盲学校への進学に決めた。」それはまさに青天の霹靂であった。
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