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それから
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その後は思っていたよりもすんなりと話が進んだ。
洗脳を解除された人々は、うっすらだけど洗脳されていたときの記憶を覚えていたらしい。
つまり、それはイザベラ姫が魔女だったということも覚えているということで。
私たちはまず神官長のライオネル様のところに行き、イザベラ様の身柄を確保してくれるように頼んだ。
「セリーナ、マイア……それに君は今朝の……本当にありがとう。すまなかった、セリーナ。苦労をかけてしまって……」
イザベラ様を眠らせてからすぐにライオネル様の執務室に向かったのだけど、そのたった十分程度の間にライオネル様は状況を把握していたみたいだった。
ライオネル様はすぐイザベラ様の身柄を預かると言ってくれた。代償がなんだったのかも神官たちが探ってくれるらしい。
マイアおばあちゃんとライオネル様は陛下に話を通しておくから、もう休むようにと言ってくれた。
いつも寝る時刻よりすっかり遅い時間で、いくら仮眠をとっていたとはいえ眠気はすごかった。
正気に戻った神官たちがやってくる。
ルシウスさんにお礼を言おうと思ったけれど、ルシウスさんは神官たちがやってきたのを見て、そのまま私たちの方に一礼して歩き去ろうとしていた。
「ちょ、ちょっとルシウスさん! お礼くらい言わせてください!」
ルシウスさんはびっくりした様子で肩を跳ねさせ、振り向く。
「いや、そんなお礼なんて言われるほどのことは……それより、事態も解決したのですしあまり僕が近くにいない方がよろしいかと」
「言われるほどのことですよ! もう、貴方が助けてくれなかったらこうやって事件が解決することはなかったかもしれないんですよ? そもそも、私死んでたかもしれませんし」
もう、まったくどうしてこんなにルシウスさんったら自分の扱いが雑なのかしら。
「ルシウスさん。私、このままお別れしたくないです。貴方のこともっと知りたい。貴方は、どうですか?」
(って、うわあどうしよう。そもそも同世代の人とそんなに喋る機会ないし……友達になりたいとか言っていいの? なんだか変な発言してない?!)
謎の高揚感からか、ついなにかを口走ってしまう。顔が赤くなっているのが自分でもわかってしまう。
「それは、その……僕はずっとセリーナ様に感謝していました。お守りしたいとも。許していただけるのなら、これからもお側で仕えさせていただけませんか?」
礼拝堂で助けてくれた時、薔薇園に向かうとき手を差し出してくれた時。そのときのようなまっすぐとした瞳だった。
「側にいて、くれるんですか?」
「セ、セリーナ様さえよろしければですが」
「本当ですか?! 嬉しいです! お友達になってください!」
「と、友達ですか? セリーナ様とって、恐れ多いのですが……」
「ルシウスさんは恩人ですもの!」
ルシウスさんはなんだか事件が終わったのでさようなら、って感じで二度と顔を見れなくなるかもしれない雰囲気があったから、また会えるようになりそうなことがただ嬉しかった。
にこにこ笑う私に、マイアおばあちゃんが釘を差した。
「はしゃぐのはいいですけど、そろそろお休みなさい。ルシウスさんもよ。貴方たちが一番疲れているはずなんだから」
「は、はーい」
マイアおばあちゃんは怒ったら実は怖い。そしてその場は解散し、ようやく私は長い一日を終えた。
それからのこと。
陛下のことだけど、処刑を撤回することになったという報せが来た。
陛下のことは今も昔もよくわからない。マイアおばあちゃんは
「あの子にもいろいろあったのかもしれないわ」
と言っていたけれど……深く聞かない方がよさそうだった。
イザベラ様の代償は寿命だったらしい。あと一年も寿命がないらしく、病に臥せっているという扱いで離れの塔で生活をしているそうだ。
正直、寿命を削ってまで魔女になって、私を陥れようとしたイザベラ様の気持ちは今もわからない。
「わからなくてもいいんだと思います。セリーナとあの方は全く別の存在なんですから。わからないことだってありますよ」
ルシウスはそう言っていた。今でもたまに、イザベラ様の力を封印したときのことを夢に見るけど、いつか忘れられるようになるのかな。
それで、肝心のルシウスのことなんだけど……。
ルシウスは、あの後マイアおばあちゃんとかライオネル様、それから魔術の塔の魔術師長とも話し合った結果、宮廷魔術師をメインとしながら、たまに私の聖女の仕事に付き添ってくれることになった。
例えば、今日みたいな孤児院への訪問とか。
「はい、では今日は聖歌のお勉強をしましょうか」
私が孤児院の広間に集まった子供たちに話しかける。この孤児院は今日初めて訪問したところだ。
そして、ルシウスは隅でうつむいている男の子に話しかけていた。真っ赤な髪を持った子だ。
この国では、闇属性や赤の忌み色への嫌悪が根強い。教会の環境でさえそうだ。
というより、むしろ私という聖女の前に闇属性使いや忌み色持ちを出すわけにはいかないとかいう暗黙のルールがあったらしく……。
長い間教会で育った私は闇属性への風当たりがそんなに強かったことを知りもしなかった。
だから、事件のごたごたが落ち着いた後、私はそういった偏見を払拭するのも教会の仕事として提案した。
教会内での偏見も根強かったんだけど……イザベラ様の件でのルシウスの活躍があったおかげで、最近では教会内部での偏見は薄れつつある。
最近はこうしてルシウスや神官たちと一緒に孤児院に訪問して聖歌とかお祈りを教えるのが主な仕事だった。
ルシウスが隅に居た少年と歩いてくる。
「聖女様、あいつ悪い奴だよ! 悪魔なんだって」
私の目の前にいた元気そうな少女が、ルシウスと手を繋いでいる少年を指さした。
(よく見る光景といえど、やっぱりちょっと悲しくなるわね……)
「ううん。そんなことないわ。あの子は君たちと同じいい子よ?」
「えーうそだー」
「嘘なんてつかないわ。そうだ、歌の前にこういうお話はどうかしら……」
ルシウスは不安そうな少年に笑いかける。
そうして私は一つの童話を語り始めた。
あの事件の前と後では、いろんなものが変わって……今メインで務めている聖女は私一人になってしまった。
忙しくないわけではないけど、きっと前よりもこの日々が楽しい。
話が終わり、ルシウスの隣の少年も、目の前の女の子も拍手してくれる。
私はそっとルシウスと目を合わせ、笑った。
ルシウス。あの日、私を助けてくれてありがとう━━
洗脳を解除された人々は、うっすらだけど洗脳されていたときの記憶を覚えていたらしい。
つまり、それはイザベラ姫が魔女だったということも覚えているということで。
私たちはまず神官長のライオネル様のところに行き、イザベラ様の身柄を確保してくれるように頼んだ。
「セリーナ、マイア……それに君は今朝の……本当にありがとう。すまなかった、セリーナ。苦労をかけてしまって……」
イザベラ様を眠らせてからすぐにライオネル様の執務室に向かったのだけど、そのたった十分程度の間にライオネル様は状況を把握していたみたいだった。
ライオネル様はすぐイザベラ様の身柄を預かると言ってくれた。代償がなんだったのかも神官たちが探ってくれるらしい。
マイアおばあちゃんとライオネル様は陛下に話を通しておくから、もう休むようにと言ってくれた。
いつも寝る時刻よりすっかり遅い時間で、いくら仮眠をとっていたとはいえ眠気はすごかった。
正気に戻った神官たちがやってくる。
ルシウスさんにお礼を言おうと思ったけれど、ルシウスさんは神官たちがやってきたのを見て、そのまま私たちの方に一礼して歩き去ろうとしていた。
「ちょ、ちょっとルシウスさん! お礼くらい言わせてください!」
ルシウスさんはびっくりした様子で肩を跳ねさせ、振り向く。
「いや、そんなお礼なんて言われるほどのことは……それより、事態も解決したのですしあまり僕が近くにいない方がよろしいかと」
「言われるほどのことですよ! もう、貴方が助けてくれなかったらこうやって事件が解決することはなかったかもしれないんですよ? そもそも、私死んでたかもしれませんし」
もう、まったくどうしてこんなにルシウスさんったら自分の扱いが雑なのかしら。
「ルシウスさん。私、このままお別れしたくないです。貴方のこともっと知りたい。貴方は、どうですか?」
(って、うわあどうしよう。そもそも同世代の人とそんなに喋る機会ないし……友達になりたいとか言っていいの? なんだか変な発言してない?!)
謎の高揚感からか、ついなにかを口走ってしまう。顔が赤くなっているのが自分でもわかってしまう。
「それは、その……僕はずっとセリーナ様に感謝していました。お守りしたいとも。許していただけるのなら、これからもお側で仕えさせていただけませんか?」
礼拝堂で助けてくれた時、薔薇園に向かうとき手を差し出してくれた時。そのときのようなまっすぐとした瞳だった。
「側にいて、くれるんですか?」
「セ、セリーナ様さえよろしければですが」
「本当ですか?! 嬉しいです! お友達になってください!」
「と、友達ですか? セリーナ様とって、恐れ多いのですが……」
「ルシウスさんは恩人ですもの!」
ルシウスさんはなんだか事件が終わったのでさようなら、って感じで二度と顔を見れなくなるかもしれない雰囲気があったから、また会えるようになりそうなことがただ嬉しかった。
にこにこ笑う私に、マイアおばあちゃんが釘を差した。
「はしゃぐのはいいですけど、そろそろお休みなさい。ルシウスさんもよ。貴方たちが一番疲れているはずなんだから」
「は、はーい」
マイアおばあちゃんは怒ったら実は怖い。そしてその場は解散し、ようやく私は長い一日を終えた。
それからのこと。
陛下のことだけど、処刑を撤回することになったという報せが来た。
陛下のことは今も昔もよくわからない。マイアおばあちゃんは
「あの子にもいろいろあったのかもしれないわ」
と言っていたけれど……深く聞かない方がよさそうだった。
イザベラ様の代償は寿命だったらしい。あと一年も寿命がないらしく、病に臥せっているという扱いで離れの塔で生活をしているそうだ。
正直、寿命を削ってまで魔女になって、私を陥れようとしたイザベラ様の気持ちは今もわからない。
「わからなくてもいいんだと思います。セリーナとあの方は全く別の存在なんですから。わからないことだってありますよ」
ルシウスはそう言っていた。今でもたまに、イザベラ様の力を封印したときのことを夢に見るけど、いつか忘れられるようになるのかな。
それで、肝心のルシウスのことなんだけど……。
ルシウスは、あの後マイアおばあちゃんとかライオネル様、それから魔術の塔の魔術師長とも話し合った結果、宮廷魔術師をメインとしながら、たまに私の聖女の仕事に付き添ってくれることになった。
例えば、今日みたいな孤児院への訪問とか。
「はい、では今日は聖歌のお勉強をしましょうか」
私が孤児院の広間に集まった子供たちに話しかける。この孤児院は今日初めて訪問したところだ。
そして、ルシウスは隅でうつむいている男の子に話しかけていた。真っ赤な髪を持った子だ。
この国では、闇属性や赤の忌み色への嫌悪が根強い。教会の環境でさえそうだ。
というより、むしろ私という聖女の前に闇属性使いや忌み色持ちを出すわけにはいかないとかいう暗黙のルールがあったらしく……。
長い間教会で育った私は闇属性への風当たりがそんなに強かったことを知りもしなかった。
だから、事件のごたごたが落ち着いた後、私はそういった偏見を払拭するのも教会の仕事として提案した。
教会内での偏見も根強かったんだけど……イザベラ様の件でのルシウスの活躍があったおかげで、最近では教会内部での偏見は薄れつつある。
最近はこうしてルシウスや神官たちと一緒に孤児院に訪問して聖歌とかお祈りを教えるのが主な仕事だった。
ルシウスが隅に居た少年と歩いてくる。
「聖女様、あいつ悪い奴だよ! 悪魔なんだって」
私の目の前にいた元気そうな少女が、ルシウスと手を繋いでいる少年を指さした。
(よく見る光景といえど、やっぱりちょっと悲しくなるわね……)
「ううん。そんなことないわ。あの子は君たちと同じいい子よ?」
「えーうそだー」
「嘘なんてつかないわ。そうだ、歌の前にこういうお話はどうかしら……」
ルシウスは不安そうな少年に笑いかける。
そうして私は一つの童話を語り始めた。
あの事件の前と後では、いろんなものが変わって……今メインで務めている聖女は私一人になってしまった。
忙しくないわけではないけど、きっと前よりもこの日々が楽しい。
話が終わり、ルシウスの隣の少年も、目の前の女の子も拍手してくれる。
私はそっとルシウスと目を合わせ、笑った。
ルシウス。あの日、私を助けてくれてありがとう━━
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