王弟閣下を庇って吸血鬼になった私~吸血すると体が疼くなんて聞いてません!

豆丸

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④呪解

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「僕は考え過ぎていました!呪いを解く方法は簡単なことだったんですよ」 
 目の下にくまをつくり、げっそりと頬のこけたマルガトが叫んだ。  
 
「回りくどいことは必要ない。早く教えろ」
 テオが一睨みすると、哀れなマルガトは小さな皿をオルハに差し出した。 
  
 皿の上には金色のニンニクがこてんと鎮座していた。 

「………私にはだだのニンニクにしか見えませんが?」 
「俺にもだ」  
 呆然と立ち尽くすオルハとテオに、マルガトが鼻息荒く説明した。 
 
「ただのニンニクではありません!聖水とエリクサーに漬け込み、聖なる種火でコトコト10日間も煮込んだ!聖ニンニクです!これなら吸血鬼の呪いを解くことができます!」
 見た目は心許ないが、マルガトの努力と寝不足の結晶をありがたく受け取った。 

  
 用意された客室に移動し、テオが心配そうに見守る中、金色に輝くニンニクを咀嚼し嚥下した。もちろん美味しくはなかった。 
  
 体に何の変化もない、次の一欠片を口に放り込み噛むと、ポロリと牙が抜け落ち床に転がった。牙はじゅっと音をたてて蒸発した。呪いが解けたのだ。 
 
「閣下呪いが解けました。これで吸血しなくても大丈夫になりましたよ。今までありがとうございました」
 呪いはあっけなく終わった。寂しいけどもう疼く体で触れあうことはない。 

「ああ、終わるのを待っていた。やっとオルハを俺のモノにできる」 
 
「閣下お待ち下さい、あっ!」
 
「待てないっ!もう十分すぎるほど待った」 
 テオはオルハをソファーに押し倒し、覆い被さった。そして、噛み付くようにキスをした。 
 吸血はしてきたがキスは初めてだった。荒々しい口づけに歯と歯がぶつかりカチカチ音が鳴った。不器用過ぎる武骨な口づけにオルハは驚く。どうやら閣下のファーストキスを頂いたようだ。 

 ぶちゅりとぶちゅりと拙いキスを続けながら、手は器用にドレスをまさぐり脱がせていく。やわやわと胸に触れ、ピンと立ち上がる先を捏ねてコスコス擦る。 
 あわいを指で刺激すれば中が歓喜に震えうごめいた。敏感な芽をこねくりまわされ、とぷりとぷりと蜜が流れた。テオの指をしどどに濡らす。 
 
「いつもより、濡れているな?」
 
「嘘ですっ!あっ、んんっ!吸血していないのに、はぁん。こんなに体が疼くなんて、どうしてっ?」 
 おかしい、吸血していないのに、体が疼きが収まらない。熱は溜まるばかり。飢餓感は増すばかりで。 

 テオはもどかしく服を脱ぎ捨てると、甘く滴る蜜口に陰茎の先を擦りつけた。お互いの体液が溶けるように混じる。ぐりりと硬い先を入り口に押し付けた。 

「それは、吸血関係なく。俺が欲しいと言うことだろう?」

「あっ、あっ!そんなことって」 
 テオの陰茎がミチミチと狭い処女孔を割り開いていく。内臓を押しやる鈍い痛みを逃そうと浅く息を吐いた。くっと目を瞑れば、瞼に浮かぶのは前世の旦那の顔ではなかった。 
「だ、大丈夫か?ゆっくり息を吐け」
 今、目の前でいとおしそうにオルハを気遣うテオの顔だった。 
 嘘なんで?涙で歪む視界の中、前世の旦那の顔とテオの顔が重なった。 
  
 ああ、そういうことなんだ。ストンと彼女は理解した。 
 
「くっ、吸血は関係ないんだ!俺はオルハが好きだ!だから抱きたいっ!」  
 テオは、だらだらと汗をかきながら真っ赤な顔で穿ちたい衝動に耐えた。オルハが馴染むまで、殊更時間をかけてゆっくり自身を沈めていった。軋むように入り口が広がり純潔の印が流れた。
 
「ーーんっ。あ、あっ」  
 大きくのけ反ると遂にテオを根元まで受け入れた。全身の毛穴が総毛立ち、きゅうきゅうと陰茎を締めつけた。待っていたと襞が甘く吸いつき。

「くうっ、これは、凄いな。中が熱く動いている……気持ちいい。はぁ。長く持たない」壮絶な苦痛に耐えるような快楽に、途切れ途切れに息を吐く。
 
「う、動いて、はっ、下さい」  
 中が苦しく入り口がじんじんする。 
 でも、欲しかったモノに貫かれて嘘のように飢餓感が消失した。きっとずっと欲しくて飢えていた。
 
「いいのか?動くぞ」 
「はい、閣下の好きにしてください」 
  
 遠慮なく下から穿たれ揺さぶられて、何処かに飛ばないようにオルハは必死にテオにしがみつき、ただただ甘く啼いた。中に温かい飛沫を何度も浴びせられた。何度も中を痙攣させ、甘く絶頂した。 
  
 テオは愛しいオルハとの交わりで初めて明言し難い官能を知った。 
 一度でも、味わったらけっして忘れられない。手放せない。オルハの言葉をいいことに、体位を変え、角度を変え何度も何度もねちっこく交わったのだった。

 オルハが目覚めたのは次の日の夕刻だった。テオにより動けない体を甲斐甲斐しく世話をされ、次の客人が来るからと離宮に連れ込まれた。お姫様抱っこの姿で家令、使用人に婚約者として紹介され、羞恥に気を失いそうだ。
 婚約者の独り暮らしは危険だと、その日のうちに引っ越しを敢行された。まあ、大した荷物なかったが。
 仕事を辞めろとは言われなかった。文官の仕事には一緒に離宮から通った。
 全力で囲い込まれても、悪い気がしないのはオルハもテオに惚れているからだろう。 

 まさか……この半年後、異例の速さでテオと結婚することになるとは思わなかったが。 
  

 将軍テオ・サイファテス・ダンドール。魔鏡と初めて平和条約を結んだ歴史に名を残した英雄。彼は、たいへんな愛妻家で有名だった。 
 子供は男の子ばかり三人、彼らは協力しあいテオ亡き後も魔鏡との平和条約を守り続けた。
  
 
 
(終わり)  


 happyHalloween! 
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