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とりあえず協力者が出来ました!
しおりを挟む「なんだよっ!その笑顔はアタシのマネかい?」
スージーさんは、ぶはっと吹き出すと私に逆質問した。
「今さら、シオン隊長の好みを知ってどうするんだい?」
「旦那さまと相思相愛のラブラブになろうかと」
そう、相思相愛になって好みのケモ耳旦那を心の赴くままに愛でたい!
「ら、ラブラブ?!……おい、シャーリングっ、奥さま頭でもカチ割ったのか?どうかしてるぜ」
小声でシャーリングさんに確認してるけど、丸聞こえですよー。
「ほっほっ……頭は打っていません。ただ中身が変わって記憶が無いそうで」
長い髭を触りシャーリングさんが答える。
「はあっ、それさっきも聞いたからよ……まあ、良いや。面白しろそうだし協力するよ」
「ありがとうスージーさん!」
私が嬉しくて彼女の手を取ると、「奥さまが、獣人のアタシに触るなんて本当に別人かよ?いや、作戦なのか」スージーさんは驚き目を白黒させた。
「で、シオン隊長の好みのタイプなんだか……」
「うん!うん!」
私は期待に大きく頷いた。
「アタシは知らない!」
「ええ~っ!!期待させといてそれはないんじゃ~っ!!」
がくりと項垂れているとシャーリングさんが私に話し掛けた。
「シオン様の父上様と母君様はとても仲睦まじい獣人夫婦でした。年の離れた妹君も生まれ家族四人、仲がたいへん宜しくご自分も、そのような家庭を築きたいと仰っていましたので、家族思いの女性がタイプかと思いますよ」
「うはははっ!我が子を投げ飛ばそうとした、
奥さまと真逆だな」
スージーさんは私を指差しながらお腹を抱えて笑った。
いくらなんでも奥さまに失礼なんじゃあ。
私がムッとしていると、「彼女は騎士団上がりなので礼儀しらずで申し訳ありません」と、なぜかシャーリングさんが謝罪してくれた。
騎士団上がりのスージーさんが私の侍女なのにはちゃんとした理由があった。
結婚当初は公爵家から紹介された人間の侍女がいたんだけど、もれなく旦那様にハニートラップを仕掛けたり、奥さんである私を勝手に公爵家に連れ出そうとしたりしたそうな。
あげくの果てには息子のシリウスくんが産まれると暗殺未遂を起こした。それ以降、人間の侍女を雇わず、当時騎士団で旦那さまの部下だったスージーさんに侍女件護衛を任せているんだってさ。
自分の孫を殺そうとするなんて、血も涙もない。公爵家恐るべし。
「でも、旦那さまの暗殺ならわかるけど、なんでハニートラップ??」
「シオン様は魔物のスタンピードから王都を救った英雄、獣人騎士団隊長です。正面から挑むなど無謀な命知らずはいないでしょう。まだ、ハニートラップの方が可能性が高いと踏んだようです」
「可能性高いの、奥さんがいるのに!?」
私というものがありながら酷い~っ。
「まあ、愛のない結婚だしな」
「うぐっ」
スージーさん痛いところを付いてきてる!地味にダメージを受ける私を見て殊更楽しそうにシャーリングさんは笑った。
「ほっほっほっ、奥さまご安心を。そんなつまらない誘惑にシオン様は引っ掛かりませんよ」
「本当に!」
「ええ、奥さま意外の女性に手を出した時点で、離縁となる制約ですから」
「え?制約なんてあるの?」
「はい、奥さまの実家の公爵家が王に抗議し、なおかつ公爵夫人の御生家の隣国まで巻き込んで作らせた結婚制約書をお忘れですか?」
忘れるもなにも、私は知らないし。
でも、そこはかとなく責めるようなシャーリングさんの視線が痛い。今後の生活のために内容を知っておいた方がいいと思う。恐る恐る私はシャーリングさんに内容を尋ねた。
うん!シャーリングさんが責める気持ちわかるわ。結婚制約書は旦那さまに不利な内容でしたよ。
まず、旦那さまが浮気したら即離縁に対して、ヴィヴィアンさんは浮気し放題。もし人間の子供が出来たら公爵家で引き取る。獣人だったら公爵家の敷居は跨がせない。
でも、お姉さんプライド高いし真面目そうだから浮気はしなかったと思うよ。
閨は月に一度、決められた日にヴィヴィアンの体調の優れた時のみ行う。その際、獣人と交わるヴィヴィアンの苦痛、恐怖を取り除くため彼女に閨の主導権を握らせること。彼女の嫌がる行為を無理強いさせない。閨後に必ず医者の診察を行い、心身の確認を行う。
なるほど、お姉さんは主導権を握るために旦那さまの手足を拘束して口にタオルを突っ込んでいたわけなんだ。
決して旦那さまが望んだわけではないんだ。旦那さまがそういう性癖じゃないなら、毎回閨は苦痛だったろう。男としてのプライドとか矜持を踏みにじる行為だろうし。
後は、十分な資産を与えよとか、子が3年以上出来ないと離縁させるとあった。
獣人と人間は子が出来にくいから公爵も待てば離縁出来ると踏んでたようだけど、なんと初夜の一回の交わりでシリウスくんを授かってしまった!ちなみに、初夜も拘束されたそう。
凄いよ旦那さま、命中確率100%~っ!
その後……身籠ってから一度も閨はなく。
そろそろ産後2年というところで、王命で再び子作りを開始することになったんだって。
公爵家は反発したけど、優秀な英雄の血を残すことは国家利益に繋がると王に睨まれ黙ったそうな。
「良かった~!私、旦那さまに拘束、目隠しプレイの性癖があるのかと思ってました」
旦那さまが心から望むなら藪かさではないけど。
「シオン様にそんな性癖はありません!」
きっぱりとシャーリングさんに言われた。
「そうですよね!
私、せっかく旦那さまとエッチするなら!お互い思い合って、気持ちいいのが良いですし。ツンデレ旦那さまをヨシヨシ甘やかしエッチで蕩けさせたら最高じゃぁないですか~!」
「おい、シャーリングっ。これ本当に奥さまか?本当に中身別人なんじゃあ……」
妄想にふける私の横でこそこそとスージさんがシャーリングさんに耳打ちしてる。
「寧ろ別人の方が良好な関係が築けるかもしれませんね。
……奥さまが旦那さまのお好みの女性になりたいのでしたら、このシャーリング全力で協力させて頂きますよ」シャーリングさんが胸に手を当てて頭を下げた。
こうして私はスージーさんとシャーリングさんの協力を得ることが出来たのだ。
目指せ家族思いの女性っ!!
まあ、シャーリングさんには別の思惑もあったようで……私がそれを知るのは少し経ってからのことだった。
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