悪役令嬢の面の皮~目が覚めたらケモ耳旦那さまに股がっていた件

豆丸

文字の大きさ
25 / 74

閨のあとで①

しおりを挟む
 
 次に目を覚ますと大きな枕を2つしっかりと抱きかかえ寝ていた。 
 旦那さまはもう隣にはいない。今日は第一王子の命令で王城に行くと言っていたっけ。差し込む日差しは既に斜めで夕刻に近かった。
  
 ええっ!!もうこんな時間ですか~?閨で疲れていたとはいえ今日の予定が台無しです。 

 今日はミミさんとファーストシューズの仮縫いをする予定だったのに、不甲斐ないママでごめんよ~。来週の誕生日までには何とか形にしたい。不器用な私には時間が足りない!早く作り始めないと! 

 重くて怠い体。まるで全身筋肉痛、色んな場所が悲鳴をあげている。ひいひい言いながらなんとか上半身を起こした。バタバタと部屋の外が騒がしくなり、ドアがバァンと開いた。

「奥様!大丈夫かよ!」 
「奥様失礼します。湯浴みの準備もお食事の準備も出来ています」 
「ミャウミャウ~」 
「奥様、シリウス様がご心配されておいでです」
 案の定、ノックをしないスージーさんを先頭にリンスさんとシリウスくんを抱えたミミさんが慌ただしく入室してきた。 

「ど、どうしたんですか?皆さん??」
 三人とも私を見ると、みるみるうちに顔を歪めた。シリウスくんはミミさんの腕からピョンと飛ぶと、綺麗に膝の上に着地しゴロゴロ喉を鳴らし手の甲にすり寄り、撫でてと訴えてる。うふっ、かわいい。小さな耳と耳の間をナデナデする。い、痛い。しまった手首も痛かった。シリウスくんに心配をかけたくなくて唸る声を飲み込んだ。
 
「……ひでぇぜシオン隊長!普通の閨が嬉しいからって、獣人と違って体力のない人間奥様をここまで抱き潰すなんて!しかも、しこたまマーキングされてるぜ」鼻を両手で押さえ、スージーさんが呻く。 

 え?そんなに精子臭いですか?確かにたくさん中に出されましたけど。  

「奥様っ。獣人の男性は盛ると一晩中続くなど、執拗で鬱陶しいときがございます。 
 そんなときは一度、蹴飛ばし……こほんっ。旦那様の要望に全てお答えしなくてもよいのです。獣人と人、男と女で体力が異なるのですから……私から旦那様によーくお話しておきますので。体が回復するよう、今すぐ滋養強壮のお薬をお持ちいたします」 
 厳しい顔のリンスさんは踵を返すと部屋から出ていった。 

「ううっ、お痛わしい限りです……本当に頑張りましたね奥様っ」ミミさんはハンカチで目頭をそっと押さえた。  

 大げさだな三人とも、気絶しても中に出されてたみたいだけど、旦那さまに激しく求められて嬉しかった。それにエッチ気持ちよかったし、旦那さまの筋肉に触われて私は大満足です!

 どうやら………執拗で鬱陶しく激しい閨をこなした私は三人に同情されるほど、ぼろ雑巾と化していた。 
  
 トイレに行こうとベッドから立とうとした。けれど、生まれたての子鹿のごとく足がガクガクして力が入らない。スージーさんとリンスさんの肩を借り、ずりずり引き摺られるようにしてトイレに連れていかれた。途中ですれ違った侍女、召使いさんたちの同情の視線が痛い。 
 いざトイレに座れば、痺れて排尿している感覚がない。擦れた中と股関節が痛い。まだ中に埋め込まれているような違和感がある。お腹から、ボタボタと壊れた蛇口のように止めどなく閨の残滓が零れ落ちた。 
 
 ひええーっ、私のおまんこ馬鹿になってる~っ。 

 半泣きになりながら、リンスさんに説明し当て布を貰った。それを股間に装着し、なんとかトイレを終わらせた。 
 トイレの前で待機していたリンスさんが、それはそれは怖い顔で「……旦那様」と呟いていたのが印象的だった。

 
 部屋に戻り、食事となったけど腕が上がらないし、怠くて食欲はない。リンスさんが持って来てくれた苦い薬草の滋養強壮のお薬をなんとか飲む。 
  
 家令のシャーリングさんも一度私の様子を見に来た。「ほっほっ、奥様。見事に抱き潰されましたな?旦那様も若い雄です。今まで我慢しておられた分、押さえが効かなかったのでしょう。 
 若い夫婦にはよくあることですから旦那様を許してあげてください」と、余計な発言をしてリンスさんとミミさんに睨まれていた。
 
  
 少し体力が回復したので、ミミさんに今日予定のファーストシューズを作りをお願いしたけど、秒で断られた。 
 
「奥様……お体がお辛いのにシリウス様を思ってくださるのですね?ミミは嬉しく思います。でも今日は体を第一に労って下さい。また明日から作りましょう」ミミさんは私の両手を包むと菩薩のように微笑んだ。 

「そうだぜ、奥様無理すんなよ!」 
 スージーさんが援護すれば、リンスさんも大きく頷いた。 

 なんだろう……この三人に過保護にされているような気がする。こそばゆいが嬉しい。おとなしく甘えることにした。 
 湯浴みする気力も体力もないので、リンスさんに部屋で温かい布で拭いてもらった。さっぱりして気持ちいい。心地よさにうとうとして、ついまた寝てしまった。 

  
 おでこに触る冷たい感触。重い瞼を開けると、私を見下ろす澄んだアイスブルーの瞳と目が合った。 
 仕事から帰って来た旦那さまだった。
 騎士服から着替える前に様子を見に来てくれたみたい。精悍な旦那さまはため息が出るほど、カッコいい! 
「あ、旦那さまお帰りなさい。お迎え出来なくてすいません~」 
 せめて起き上がろうとしたけれど、怠い体はノロノロとしか動かない。 
「起きなくて結構です。体が少し熱いのでは?そのままで良いので聞いてください」
 旦那さまは私のおでこに手のひらを置いたまま、ばつが悪そうに話し始めた。 

「………ここに来る前、スージー、リンス、ミミにそれぞれ小言をもらいました………貴女に無理をさせるな、体を気遣えといわれました」  

「え?そうなんですか?」 
 リンスさんは旦那さまにお話すると言ってたけど、スージーさんにミミさんまで。 

「……貴女のことを毛嫌いしていたのに、大した心境の変化です」  

「えへへっ!三人が認めてくれたみたいで嬉しいです」 

「……認めるなんておこがましいです……前より幾らかはマシに成っただけです」 
 ふんと鼻で笑ういつもの塩対応。でも、私のおでこに置いた手は労るようで。 

「マシに成って嬉しいです」  
 へらりと笑う私。旦那さまはおでこから手を離すとくっと一度眉間の皺を深めた。そして、観念したように息を吐く。

「昨夜は……すいませんでした。貴女の体を考えず寝込むほど無理をさせた」 
 なんと旦那さまは私に頭を下げて謝った。猫耳が情けなくくたっている。か、可愛いんですけど。えーっと、いきなり謝られて混乱する。

「旦那さまっ!!どうしたんですか?頭を上げてください。謝らなくて大丈夫ですよ! 
 私もとってもきもちよかったし、大好きな旦那さまに深く求められて嬉しかったですから」 
 顔を上げてほしくて頬に触れる。旦那さまはその手を掴むと私を睨んだ。 
 
「貴女も悪いんですよ! 
 無防備に私に触れて、煽って、仕舞いにはめちゃくちゃにしてと、たくさん中に出して孕ませろなんて言うからです」  
 ぐっと睨んでいるのに全然怖くない。旦那さまの目蓋も頬も薔薇色に染まっていたから。

「……旦那さま?もしかして照れているんですか?」 
 からかうつもりはないのに驚いて声が大きくなる。 

「揶揄るのは止めて下さい………毎日毎日、呆れるほどしつこく好き好き好き好き言われたら……私でも思うところはあります」
  
 ……それって、もしかして。期待してもいいのかな?  

「……お、思うところって、なんですか?」  
 期待に高鳴る胸を押さえ、ドキドキしながら旦那さまの返事を待った。 

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

独身皇帝は秘書を独占して溺愛したい

狭山雪菜
恋愛
ナンシー・ヤンは、ヤン侯爵家の令嬢で、行き遅れとして皇帝の専属秘書官として働いていた。 ある時、秘書長に独身の皇帝の花嫁候補を作るようにと言われ、直接令嬢と話すために舞踏会へと出ると、何故か皇帝の怒りを買ってしまい…? この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

愛してないから、離婚しましょう 〜悪役令嬢の私が大嫌いとのことです〜

あさとよる
恋愛
親の命令で決められた結婚相手は、私のことが大嫌いだと豪語した美丈夫。勤め先が一緒の私達だけど、結婚したことを秘密にされ、以前よりも職場での当たりが増し、自宅では空気扱い。寝屋を共に過ごすことは皆無。そんな形式上だけの結婚なら、私は喜んで離婚してさしあげます。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子

ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。 (その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!) 期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。

処理中です...