私に番なんて必要ありません!~番嫌いと番命の長い夜

豆丸

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長い夜⑤

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「はあっ………酷い目に遭いました」 
 無駄に広い木で出来た浴室に浸かる。手足を伸ばし筋肉を解す。お湯が心地よく、疲れが癒される。 
 まるで天国―――そう、こいつさえ居なければ……。 

「アザレナ、体洗うぞ!」 
 
「結構です!約束通り一晩をともにしました。戯れはもう終わりです」 
 ルークの腕が私の腰に回される。その手のひらをつねり、きっと睨んだ。 

「は?お前は俺の番だ。戯れじゃない、本気交尾だってしただろう?」  

「何が、本気交尾ですか!色んな女とヤりまくるヤリチンのくせに!!」 

「た、確かに………俺は色んな女とヤってきたが、もう番じゃないと勃起しねぇ。それに本気交尾したのは、番のお前が初めてだ」

「はあ?それを信じろと?……番、番って五月蝿いんです。番は私にとって忌むべき呪いなんですよ」父母、弟の顔がよぎる。 

「呪いか……?お前ん家の話は聞いた。不幸だと思う……だからな、俺と一緒に呪いじゃなくて、祝福にしねえか?」 

「……祝福ですか?」 

「ああ!女神に誓う!俺はこの先お前しか抱かねえし、絶対に大切にする!」私を抱きしめ、力強くルークは宣言した。 
 
「……ルーク」 
 視界が滲むのはきっとゴミが入ったから。 

「……だからな……もう一回ヤらせてくれ!!!」

「お断りします!!!」 

 
  
 ◇◇◇
  

 仕事の合間。中庭の芝生の木陰に座り、至福の休憩タイム。好物のミントアイスを頬張る。爽やかな味が口に広がる。 
  
 晩夏の空気は生ぬるく冷たいアイスがどんどん溶けていく…。 
 本当は快適な食堂で食べたいんですが……私は、大きくため息をついた。 
 
「アザレナ!探したぜ、今日はここで休憩か?」犬耳をぴょこぴょこ、しっぽをブンブンさせ、元凶のルークが私の隣に座る。 
 
 無駄にめざとい男。 
……交わった日からルークは、暇さえあれば私を探し、共に過ごそうとする。周りにアザレナは俺の番と公言し、ハッキリ言って鬱陶しい。 

「ルーク、私は一人で休憩したいのですが」 私が睨んでもルークは、嬉しそう。 

「邪険にするなよ!報告があるんだ。 
おっ……もったいねぇなアイス、とけてきてるぜ」ルークは、私の手首を掴むと溶けたアイスをペロッと舐めとった。

「な、舐めないでください!!な、何の報告ですか?」ルークの舌ざわりに交わりの日を思い出し、顔が赤くなる。

「ああ!教会に俺の書類が受理された!!」 
  
「ルーク………私を……俺の番と言ったくせに……信じろと言ったくせに、結局番解除の書類を提出したのですか?」 
 自分の声が冷たくなる、目の前が暗い。 
私は、番を認めないと言いながら、祝福と言ったルークのことを心の奥底で信じていたらしい。馬鹿みたい……悔しい。でも、泣きたくなくて唇を噛んで下を向く。
 
「はあ?俺が番解除なんてするわけ、ねーだろ?俺が出したのはこれだ!!」 
 
 ルークは、私の目の前に一枚の紙を差し出した。そこには、教会はアザレナとルークの婚姻を認め祝福します――と、書かれていた。 

 
end 

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