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逃の章
第4話 6月6日(逃亡生活四日目)
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「ねえ蘭ちゃん、結婚しようよー」
「嫌です」
「なんでよーいいじゃん、お願い」
「嫌です」
馬の走らせながら必死に成利を口説く信長のわき腹を成利は強くつまむ。
「痛い、痛い。ごめんって」
成利は断ってはいるものの意外と満更でもないようであるが・・・
世話係の役割からか一線を敷いていたのかもしれない。
「蘭ちゃん、茶屋があるよ。少し休憩しようよ」
「そうですね、少しお腹も空きましたし」
信長と成利は茶屋に立ち寄り、しばし休憩する事になった。
「ふうー疲れたね。おっちゃーん、団子と茶頂戴!」
信長はイスに腰掛けると大きな声で言った。
「あいよー」
店の奥から店主の声が聞こえた。
しばらくして二人の元へ茶屋の娘が団子とお茶を届ける。
お茶をすすりほっと一息ついた信長は少し小声で話しだした。
「蘭ちゃん」
「なんでしょう?」
「そろそろ名前変えた方が良くない?」
さすがに人前で信長と成利ではまずいのではと信長が言う。
「そうですね。では、私の名前も考えて頂けるとありがたいです」
「うーん」
信長は頭を抱え込み悩む。
「じゃー蘭ちゃんは雅子で、俺は信成でどう?」
「森雅子と織田信成ですね・・・却下です」
「えーなんでよ!」
「世間から叩かれそうです!」
「あっ、そう」
悩む事一時間・・・
「ダメだねー全然出てこない。蘭ちゃん考えてよ」
「私がですか?」
二人してあれやこれやと自分の名前を考えるが、
なかなか良い名が浮かばない。
そんな折、近くの男達の話声が二人の耳に届く。
「お前知ってるか?信長がおっ死《ち》んだ話」
「ああ、知ってるも何も今や町中その話ばかりだよ」
「羽柴秀吉が明智の首狙ってるんだろ!」
「そうそう、毛利と和解して京都に戻るんだってさ」
「秀吉は次の天下取るために明智の首が必要なんだろ」
「へえーでも、生きてるんだろ信長は・・・」
「おー!なんだか、逃げのびているらしいぞ」
その話を聞いて信長は成利に目一杯《めいっぱい》顔を近付け言う。
「蘭ちゃん生きてるって・・ブッ!」
あまりの顔の近さに驚き頬を赤くした成利は、咄嗟に信長の頬に右ストレートを叩きこんだ。
「近すぎです!」
「ごめん、ごめん」
と、信長は手を合わせ謝った。
史実上において6月2日の本能寺の変直後、明智軍は信長の遺体を捜索するも、
最後まで見つからなかったとされている。
そのため、各方面では信長が逃げ延びているのではと噂が流れた。
そして数日後に羽柴秀吉もまた、各国が明智に味方するのを防ぐため
信長存命のニセ手紙を各地へ送ったとされている。
「いや、それは単に噂に過ぎません。落ち着いてください、
ここに私達がいる事はバレていないので大丈夫です」
と、成利は落ち着くように信長に話した。
「ああ、ごめん!もしかしたら影ちゃん(信長の影武者)も
無事逃げれたのかなって思ったら興奮しちゃって・・・」
「そうでございましたか・・・信長様は本当に優しい。影様も生きてらっしゃると良いですね」
信長の時折見せる優しさに心を射られる成利。
「私はこれからもこの方にお仕えしたい」と、
密かに思う成利であった。
休息終えた二人は再び馬に跨ると、近江国を目指しまた走り出す。
「そういえば蘭ちゃん、名前決まらなかったね」
「あっ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6月4日に羽柴秀吉と毛利軍との和解が成立。
秀吉は急いで京都に戻ったとされています。
そして、並々ならぬ早さで、6月6日(7日との説もあり)には
秀吉の拠城である『姫路城』に到着しています。
「嫌です」
「なんでよーいいじゃん、お願い」
「嫌です」
馬の走らせながら必死に成利を口説く信長のわき腹を成利は強くつまむ。
「痛い、痛い。ごめんって」
成利は断ってはいるものの意外と満更でもないようであるが・・・
世話係の役割からか一線を敷いていたのかもしれない。
「蘭ちゃん、茶屋があるよ。少し休憩しようよ」
「そうですね、少しお腹も空きましたし」
信長と成利は茶屋に立ち寄り、しばし休憩する事になった。
「ふうー疲れたね。おっちゃーん、団子と茶頂戴!」
信長はイスに腰掛けると大きな声で言った。
「あいよー」
店の奥から店主の声が聞こえた。
しばらくして二人の元へ茶屋の娘が団子とお茶を届ける。
お茶をすすりほっと一息ついた信長は少し小声で話しだした。
「蘭ちゃん」
「なんでしょう?」
「そろそろ名前変えた方が良くない?」
さすがに人前で信長と成利ではまずいのではと信長が言う。
「そうですね。では、私の名前も考えて頂けるとありがたいです」
「うーん」
信長は頭を抱え込み悩む。
「じゃー蘭ちゃんは雅子で、俺は信成でどう?」
「森雅子と織田信成ですね・・・却下です」
「えーなんでよ!」
「世間から叩かれそうです!」
「あっ、そう」
悩む事一時間・・・
「ダメだねー全然出てこない。蘭ちゃん考えてよ」
「私がですか?」
二人してあれやこれやと自分の名前を考えるが、
なかなか良い名が浮かばない。
そんな折、近くの男達の話声が二人の耳に届く。
「お前知ってるか?信長がおっ死《ち》んだ話」
「ああ、知ってるも何も今や町中その話ばかりだよ」
「羽柴秀吉が明智の首狙ってるんだろ!」
「そうそう、毛利と和解して京都に戻るんだってさ」
「秀吉は次の天下取るために明智の首が必要なんだろ」
「へえーでも、生きてるんだろ信長は・・・」
「おー!なんだか、逃げのびているらしいぞ」
その話を聞いて信長は成利に目一杯《めいっぱい》顔を近付け言う。
「蘭ちゃん生きてるって・・ブッ!」
あまりの顔の近さに驚き頬を赤くした成利は、咄嗟に信長の頬に右ストレートを叩きこんだ。
「近すぎです!」
「ごめん、ごめん」
と、信長は手を合わせ謝った。
史実上において6月2日の本能寺の変直後、明智軍は信長の遺体を捜索するも、
最後まで見つからなかったとされている。
そのため、各方面では信長が逃げ延びているのではと噂が流れた。
そして数日後に羽柴秀吉もまた、各国が明智に味方するのを防ぐため
信長存命のニセ手紙を各地へ送ったとされている。
「いや、それは単に噂に過ぎません。落ち着いてください、
ここに私達がいる事はバレていないので大丈夫です」
と、成利は落ち着くように信長に話した。
「ああ、ごめん!もしかしたら影ちゃん(信長の影武者)も
無事逃げれたのかなって思ったら興奮しちゃって・・・」
「そうでございましたか・・・信長様は本当に優しい。影様も生きてらっしゃると良いですね」
信長の時折見せる優しさに心を射られる成利。
「私はこれからもこの方にお仕えしたい」と、
密かに思う成利であった。
休息終えた二人は再び馬に跨ると、近江国を目指しまた走り出す。
「そういえば蘭ちゃん、名前決まらなかったね」
「あっ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6月4日に羽柴秀吉と毛利軍との和解が成立。
秀吉は急いで京都に戻ったとされています。
そして、並々ならぬ早さで、6月6日(7日との説もあり)には
秀吉の拠城である『姫路城』に到着しています。
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