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3 ひと皮むけて
二度目の焼き肉
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研修最終日と同じお店。焼き肉だ。
寮食は、食中毒を起こしてはいけない、大人数が一度に食べられるように用意できなければいけない、栄養バランスに気をつけなくてはいけない、などなど、たくさんの制約があって、生の肉を焼いてアツアツのまま食べる焼き肉は、出すことが難しい。
だから、焼き肉がとにかく、嬉しい。
研修最終日と同じメンバー。本当は廣瀬先生とも行きたかったけれど、寮監が2人とも不在になるわけにはいかない。そのかわり、わたしの分もしっかり食べてきて、と送り出してくれた。
「ここって、焼き野菜にピーマン入ってないですよね」
平井先生が意外なところに気がつく。
「ばか。抜いてもらってんだ」
なぜか小さい声で鈴木先生が言ってるけど、まる聞こえです。
「ピーマンは、僕が食べられないので、いつも抜いてもらうんです。このお店はかわりに、しいたけ足してくれます」
「アレルギーですか?」
「いいえ。ただの好き嫌いです」
勝手に水谷先生は完璧な人だと思っていたのに、まさか、食べ物の好き嫌いがあったなんて。初めて知る事実に言葉を失うほど驚く。
「水谷ちゃんの場合は、好き嫌いというよりむしろトラウマだから」
鈴木先生のは、フォローか?
「子どものころ、ピーマン嫌いだったんです。で、僕が何か悪いことをすると、祖母がおかず全部にピーマンを入れるというお仕置きを編み出しまして」
「虐待」
「虐待ではなくて、懲戒権の行使です。泣きながらピーマン丸飲みして、ごめんなさいを言い続けた結果、大人になった今でもピーマン見ると鳥肌が立つ体になってしまいました」
意外。先生がお祖母さんに叱られているところなんて、まるで想像できない。
「それより。水谷ちゃん、聞いたよ。高野に文句言ってくれたんだって?」
なんの話?
「文句を言ったのではなくて、高野くんを叱ったんです」
え?何なに?
「里見さん、あのね。こないだ、僕が授業盛り上げ過ぎて、隣の教室までうるさかったって、高野さんに叱られたの」
「へー。そんなことがあったんですか」
「それでな、そのときに、高野が、生徒と同レベルの低俗なギャグでも言ってたんだろう、と発言したそうだ」
それはひどい。酷すぎて声が出ない。
「本当は平井くんの間に入って、高野くんを叱りつけたかったのですが、出遅れてしまって。平井くん、申し訳ない」
「いやいやいや」
「で、俺が平井と出て行ってから、ガツンと言ってくれたそうだ」
「生徒も平井くんも低俗だと言ったも同然ですから。そのように生徒や同僚を見ているなんて、白雪の教師失格です。ここはきちんと指導しておくべきだと思いましたので、叱っておきました」
なんか、とても意外。こんな、熱いところが水谷先生にあるなんて。
「だからか。俺、高野先生に謝りに行ったとき、説教の続き覚悟してたんですよ。なのに、『僕の方こそ、教師としてあるまじき行動だった、反省している。すまなかった』って逆に謝られて。結構びっくりだったんですよね」
「高野くんも、根っから生徒をバカにしているわけではないですし、反省してくれたのなら、良かったです」
ニッコリ笑って、ほら焼けましたよ、と肉をわたしのお皿に入れてくれる。アツアツを食べる。うん。おいしい!
「それにしても。今日の2人の授業はメチャクチャ良かったな」
鈴木先生がそう言いながら、平井先生の頭をグリグリ撫で回す。
「わあ、もう、やめてくださいよ」
といいながら、平井先生もどこか嬉しそうだ。
「まあ、会議で里見ちゃんが手を挙げたときにはたまげたけどな」
「はい。もう心臓止まるかと思いましたよ」
え。そんなに驚くことですか?
「まあ、大体ボコボコに叱られて何か言う元気が残ってる人なんかいないのが普通だからな」
「そうですね。2人は、本当に授業がうまくなりましたね」
授業がうまくなりましたね。今の言葉、録音したかったー。
お肉もいっぱい食べて、いつものように、8時ぴったりにお開きにする。ここから、水谷先生と二人きりだ。
「水谷先生、特訓してくださってありがとうございました」
「あ、それなんですけど。しばらく特訓続けてみませんか」
「えっ?」
「あ、もううんざり?」
「廣瀬先生に閉門当番ずっと変わってもらってるので、そこをどうしようかと」
「そうでしたね。じゃ、閉門当番ない週に、というのは」
「それでお願いします」
「なんで?って聞かないんですか?」
なんで、とは?わからなくて、立ち止まって水谷先生の顔を見る。
「僕の指導がなくても、もう出来るのに、という反論を待っていたのですが」
「この特訓で、わたしがまだまだだってことが本当によくわかったので、先生の御迷惑でなければ、ずっとお願いしたい、です」
「じゃ、続けましょう」
「はい」
一週間おきだけど、特訓の時間は水谷先生を独占できる。指導は泣くほどこわいけど。
寮食は、食中毒を起こしてはいけない、大人数が一度に食べられるように用意できなければいけない、栄養バランスに気をつけなくてはいけない、などなど、たくさんの制約があって、生の肉を焼いてアツアツのまま食べる焼き肉は、出すことが難しい。
だから、焼き肉がとにかく、嬉しい。
研修最終日と同じメンバー。本当は廣瀬先生とも行きたかったけれど、寮監が2人とも不在になるわけにはいかない。そのかわり、わたしの分もしっかり食べてきて、と送り出してくれた。
「ここって、焼き野菜にピーマン入ってないですよね」
平井先生が意外なところに気がつく。
「ばか。抜いてもらってんだ」
なぜか小さい声で鈴木先生が言ってるけど、まる聞こえです。
「ピーマンは、僕が食べられないので、いつも抜いてもらうんです。このお店はかわりに、しいたけ足してくれます」
「アレルギーですか?」
「いいえ。ただの好き嫌いです」
勝手に水谷先生は完璧な人だと思っていたのに、まさか、食べ物の好き嫌いがあったなんて。初めて知る事実に言葉を失うほど驚く。
「水谷ちゃんの場合は、好き嫌いというよりむしろトラウマだから」
鈴木先生のは、フォローか?
「子どものころ、ピーマン嫌いだったんです。で、僕が何か悪いことをすると、祖母がおかず全部にピーマンを入れるというお仕置きを編み出しまして」
「虐待」
「虐待ではなくて、懲戒権の行使です。泣きながらピーマン丸飲みして、ごめんなさいを言い続けた結果、大人になった今でもピーマン見ると鳥肌が立つ体になってしまいました」
意外。先生がお祖母さんに叱られているところなんて、まるで想像できない。
「それより。水谷ちゃん、聞いたよ。高野に文句言ってくれたんだって?」
なんの話?
「文句を言ったのではなくて、高野くんを叱ったんです」
え?何なに?
「里見さん、あのね。こないだ、僕が授業盛り上げ過ぎて、隣の教室までうるさかったって、高野さんに叱られたの」
「へー。そんなことがあったんですか」
「それでな、そのときに、高野が、生徒と同レベルの低俗なギャグでも言ってたんだろう、と発言したそうだ」
それはひどい。酷すぎて声が出ない。
「本当は平井くんの間に入って、高野くんを叱りつけたかったのですが、出遅れてしまって。平井くん、申し訳ない」
「いやいやいや」
「で、俺が平井と出て行ってから、ガツンと言ってくれたそうだ」
「生徒も平井くんも低俗だと言ったも同然ですから。そのように生徒や同僚を見ているなんて、白雪の教師失格です。ここはきちんと指導しておくべきだと思いましたので、叱っておきました」
なんか、とても意外。こんな、熱いところが水谷先生にあるなんて。
「だからか。俺、高野先生に謝りに行ったとき、説教の続き覚悟してたんですよ。なのに、『僕の方こそ、教師としてあるまじき行動だった、反省している。すまなかった』って逆に謝られて。結構びっくりだったんですよね」
「高野くんも、根っから生徒をバカにしているわけではないですし、反省してくれたのなら、良かったです」
ニッコリ笑って、ほら焼けましたよ、と肉をわたしのお皿に入れてくれる。アツアツを食べる。うん。おいしい!
「それにしても。今日の2人の授業はメチャクチャ良かったな」
鈴木先生がそう言いながら、平井先生の頭をグリグリ撫で回す。
「わあ、もう、やめてくださいよ」
といいながら、平井先生もどこか嬉しそうだ。
「まあ、会議で里見ちゃんが手を挙げたときにはたまげたけどな」
「はい。もう心臓止まるかと思いましたよ」
え。そんなに驚くことですか?
「まあ、大体ボコボコに叱られて何か言う元気が残ってる人なんかいないのが普通だからな」
「そうですね。2人は、本当に授業がうまくなりましたね」
授業がうまくなりましたね。今の言葉、録音したかったー。
お肉もいっぱい食べて、いつものように、8時ぴったりにお開きにする。ここから、水谷先生と二人きりだ。
「水谷先生、特訓してくださってありがとうございました」
「あ、それなんですけど。しばらく特訓続けてみませんか」
「えっ?」
「あ、もううんざり?」
「廣瀬先生に閉門当番ずっと変わってもらってるので、そこをどうしようかと」
「そうでしたね。じゃ、閉門当番ない週に、というのは」
「それでお願いします」
「なんで?って聞かないんですか?」
なんで、とは?わからなくて、立ち止まって水谷先生の顔を見る。
「僕の指導がなくても、もう出来るのに、という反論を待っていたのですが」
「この特訓で、わたしがまだまだだってことが本当によくわかったので、先生の御迷惑でなければ、ずっとお願いしたい、です」
「じゃ、続けましょう」
「はい」
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