旅の果てに、終焉を臨む 〜転生した竜と孤独な魔女の異世界旅行記〜

ラム猫

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第1章 魔女と仲間達

第6話 竜、目標が決まる

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「基礎になるのは、火、水、風、自然、治癒の五つの属性だよ」
「なるほど。魔法の適正みたいなものはあるの?」
「似たようなことはあるよ。魔法陣は人によって書きやすいものもあれば書きにくいものもあるしね」

 私は説明しながら地面にそれぞれの基礎魔法陣を書いていく。リュビアが興味深そうにそれらを覗き込む。

「この基礎魔法陣を覚えたら、基礎の魔法は使えるようになるんだね。使ってみようかな!」

 リュビアが楽しそうに魔法陣を空中に書き始める。すでにコツを掴んだらしく、基礎の魔法は問題なく使えるようだ。私は彼女を見守りながら、肉が満遍なく焼けるように調整しておく。

「全部使えたよ! 魔法って面白いね。もっと魔法を学びたいな」
「ちゃんと教えてあげるから、慌てないでね。自分の魔力と向き合わないと、魔力切れで倒れてしまうから。そうだ、命にも関わることだから、魔力切れについても説明しておこう。魔力切れは、身体の中の魔力が枯渇する状態を言う。魔力が枯渇すると、めまいや頭痛、幻覚といった症状が出てくる。その状態で魔力を消費し続けると、意識を失う。一般には意識を失うだけなんだけど、全ての魔力を失うと、人は死んでしまうんだ。だから、自分の魔力とちゃんと向き合う必要がある」

 私が目を覚ました時の魔力の状態はかなり悪かった。魔力切れを起こしていた。今は徐々に回復しているので問題はないが、気を付けないとね。

「へー。魔力は便利なだけじゃないんだね。魔法の練習のし過ぎはよくないってことだ」

 リュビアはうなずいている。彼女に同意しながら、私は肉の様子を確認する。

「色々話している間に、肉が焼けたね」
「いい匂いがするよ! この匂いにつられて魔物がやって来ることはない?」

 リュビアが嬉しそうに尾を振りながら尋ねる。私は肉を手に取りながら答える。

「魔物が反応する匂いは主に血だよ。血の匂いには敏感だ。それ以外の匂いにも反応はするけど、わざわざ襲いに来ることはほとんどない」

 凶暴な魔物であれば人の気配を察知すると襲いに来ることもあるから、確実に来ないという保証はないが、リュビアを不安にさせるようなことはわざわざ言う必要はないだろう。ここ周辺にはそこまで凶暴な魔物はいないことは魔力探知で把握している。

「そうなんだ! じゃあ気にせず食べられるね。いっただっきまーす!」

 私が差し出した肉にリュビアはかぶりつく。リュビアの手は小さいので棒を持って肉を食べることはできない。なので私が差し出す必要があるのだ。

 リュビアが豪快にかぶりついているのを見て、私も一口肉を食べる。

「おいしい! めっちゃおいしい! 生肉とは比べ物にならないよ!」
「うん、確かにおいしい。ちゃんと焼けているね」
「街に行ったら、調味料とか料理道具を調達しようよ! そしたらもっとおいしいご飯が食べられるようになる」

 おいしいおいしいと言いながらリュビアが食べている。私は基本食には無頓着だけど、食べるならおいしいほうがいい。リュビアの言うように料理道具を集めるのも悪くないかもしれない。

 しばらく夢中で食べていると、気になったことがあったのか、リュビアは食べていたものを飲み込み、私を見た。

「ラーシェリアは料理得意なの?」
「得意というほど得意ではないよ。一般的な料理は作れるくらい。リュビアはどう?」
「わたしは……料理の本を読むのは好きだったけど、作ったことはないかな。おいしいものは作れないかもしれないけど、ラーシェリアと一緒に料理がしたい」

 リュビアが前世の話をする時は少し悲しそうな顔をする。過去の話を聞くのはできるだけ避けたほうがいいのかもしれない。私もあまり過去の話を聞かれたくはない。

「今のリュビアじゃ難しいかもしれないよ? まずは人型になる方法を探してみようか。人型になれたら、料理以外にも沢山できることが増えるよ」
「うん。そうだね! わたしの第一の目標は、人型になること!」

 リュビアが気合を入れるように大きく息を吐くと、勢いよく肉を食べ始めた。私はその様子に思わず笑みを浮かべ、肉を口に含んだ。

「はー。お腹いっぱいになったよ。満足満足」

 リュビアがお腹をさすりながら言う。私は肉を二切れ食べたが、それ以外はリュビアが全て平らげた。焼いた分が無駄にならなくてよかった。

「ラーシェリアは二つだけで足りたの?」
「十分だよ。私は普段からあまり食べないからね」

 使用した棒は焚火に放り込んで燃やしておいた。冒険では人がいたという痕跡は残さない方がいいとされているため、一応。そして焚火を消す。日は完全に沈んでいるので、火が消えたことで辺りは闇に包まれた。

「もうこんなに暗くなってたんだ」

 リュビアに同意しながら、私は指先に火を灯す。夜を過ごす場所を決めないといけない。

「リュビアは眠くない?」
「んー。ちょっと眠いかも。どこで寝るの? この辺じゃ危険じゃない?」
「案としては、木の上かそこら辺で寝るか、だね。どちらにしても、防御壁を張るから安心してほしい」

 木の上で過ごす魔物もいるけど、それよりは地上を歩く魔物の方が多い。この辺りの木は大きく枝も太いので、私が乗っても枝が折れることはないだろう。魔力を垂れ流しにして魔物に襲われないかを試したかったが、リュビアがいるので安全第一にしておきたい。

「木の上で寝たい! 楽しそうだもの」
「じゃあ、上まで行こうか」

 私は立ち上がって、飛行魔法を発動させる。そのまま安定しそうな枝を確認し、腰掛ける。リュビアが私の膝の上に乗ってきたので、小さな頭をそっと撫でてみた。鱗の独特な感触が伝わってくる。

「おやすみ、リュビア。安心して眠ってね」
「ありがとう。おやすみ、ラーシェリア」

 リュビアはそう言って体を丸め、しばらくもぞもぞとしっくりくる姿勢を確認しているようだったが、すぐに安定した寝息が聞こえてきた。それを確認して、私が座っている木が丸々安全圏になるように防御魔法を広範囲に発動する。

 背もたれがないまま一晩を過ごすのはかなりきついので、風魔法の応用で背もたれのようなものをつくり出した。リュビアが穏やかに眠れることを願いながら、私は静かに目を瞑った。
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