貴方に抱かれると、死んでしまうので。

ラム猫

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考査

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 聖教会で倒れたフィーリアは、屋敷に帰った後に熱を出して三日間寝込んだ。一日中傍で看病をしようとしたヴィセリオを何とか学園に送るというちょっとした攻防があったが、フィーリアの体調は完全に回復した。
 何日かぶりの学園は、近く行われる考査に向け、生徒達の緊張感が高まっていた。

「フィーリア様。体調が回復したようで、良かったです」
「お兄様から聞きました。レティシア様がわたしを助けてくださったのですか? ありがとうございます」

 教室に入ると、真っ先にレティシアがフィーリアに話しかけた。フィーリアの快調した様子を見て、彼女は安堵の息を吐いて微笑む。フィーリアもつられ、微笑みを浮かべた。
 ヴィセリオから聞いた話では、フィーリアは呪力に似た力に襲われて体調を悪くしたようだ。レティシアが浄化してくれたおかげで、大事には至らなかったらしい。
 呪力……ルーンオードのあの禍々しい力は、呪力が関係しているのだろうか。意識がはっきりとした時から、フィーリアの頭の中はこのことでいっぱいだ。
 レティシアと喋りながらフィーリアは席に座る。後からやって来たアレクシアからも、体調を気遣う声がかけられた。
 ちなみに、フィーリアが寝込んでいた間に、レティシアとアレクシアは別の友達を獲得したらしい。それが、ソフィア・マリヴェル、ルディの妹である。

「ルディ様には兄がいつもお世話になっております」
「いえ、こちらこそ。ヴィセリオ様には感謝してもしきれません」

 ルディと同じ黒髪で、橙色の瞳を持つソフィアは人見知りなのか、目を伏せがちでフィーリアに頭を下げた。フィーリアが優しい微笑みを浮かべていると、彼女は安心したのか、小さく笑った。



 数日休んでいたものの、授業にはついていくことができた。放課、フィーリアは教科書を閉じてゆっくりと息を吐いた。

「皆さん。考査に向けた勉強は、進んでいますか?」

 アレクシアに話しかけられ、フィーリアは彼女に目を向ける。

「わたくしは、まだあまり……。最近は豊作祈願のお仕事が忙しく、勉強に時間が取れないのです」

 レティシアは恥ずかしそうに手を体の前で合わせる。聖女である彼女は、教会でも重要な職に就いている。そんな彼女が勉強に時間がとれないのは当然のことだろう。

「わ、わたしもまだ全然……」

 ソフィアの言葉に賛同し、フィーリアは顎を引いた。

「わたしも、復習は行っていますが、考査に向けた勉強はまだ進んでいません」

 いくら卒業レベルの知識を持っているとはいえ、その折々の考査で簡単に基準点をとれるとは限らない。そのため、ちゃんと勉強をする必要はあるのだ。
 侯爵家にもなると、基準点以上はとらないと面目が立たない。ちなみに、基準点の半分以下の点数を取ると、呼び出しを受けて補習が行われる。補習を受けるなんて、もっての外だ。
 苦笑いを浮かべたフィーリアを見て、アレクシアはゆっくりと目を細めた。

「良かったら一緒にお勉強会をしませんか? わたくし、皆さんと一緒に勉強をしたいです」

 アレクシアの言葉に、フィーリアとレティシア、ソフィアは顔を見合わせ、微笑んで頷いた。

「わたくしもお勉強会をしたいです!」
「それでしたら、お兄様もお呼びしますか? お兄様なら、何でも教えてくださいますよ」

 ヴィセリオは考査の毎に学園トップの成績をとっている。家で彼が勉強をしている姿を見たことはないが、フィーリアの見えないところで勉強をしているのだろうか。ただ、フィーリアが問題で悩んでいる時には、必ず彼が分かりやすく教えてくれる。
 フィーリアの提案に、三人は目を輝かせて頷いた。アレクシアに関しては、よく見ないと気が付かない程の変化であったが。

「是非、お願いしたいです。ヴィセリオ様からご教授いただけるなんて、光栄ですから」
「わたしも、兄様に来てくださらないか聞いてみます」
「ヴィセリオ様がいらっしゃるのであれば、ルーンも誘ってみましょうか」

 レティシアの言葉に、フィーリアは笑顔が強張らないように努めた。未だ、フィーリアが気を失う寸前に聞いた彼の言葉が、彼女の耳元に残っている。
 しかし、ここで拒否するのも不審に思われてしまいそうなので、フィーリアは微笑みを浮かべながら賛同した。
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