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第一話 幼い頃の約束
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春の陽光が王城の庭いっぱいに降り注ぎ、色とりどりの花々が甘い香りを漂わせている。少年は、きらきらとした瞳で、隣に立つ愛らしい少女を見つめていた。少女の金色の髪は、風にそよそよと揺れている。
「ねえ、セフィ」
少年は少し照れたように、でも真剣な声で言った。
「大きくなったら、結婚しよう。セフィを、お嫁さんにしたい」
少女はぱちくりと目を瞬かせ、その小さな顔を赤らめた。
「お嫁さん……?」
「うん そうだよ。ずっと一緒にいたいんだ。結婚したらずっと傍にいられるし、毎日一緒に遊べるよ!それに……」
少年は言葉を探すように、指先で地面をつつきながら続けた。
「それに、君の笑顔が一番好きだから!」
少女は、その言葉に心を奪われたように、少年の顔を見つめ返した。そして、少しはにかみながら答えた。
「うん! 大きくなったら、シルさまと結婚する!」
二人は見つめ合い、小さな手と手をぎゅっと握りしめた。その幼い約束は、未来への希望に満ちた輝きを放っていた。
周りで遊んでいた小鳥たちのさえずりが、まるで二人の小さな誓いを祝福しているように響いた。
◇ ◇
「英雄シルヴァード様、万歳!」
「我が国の英雄様!」
王都の大通りは、歓喜に沸く人々で埋め尽くされていた。色鮮やかな旗がはためき、通りには花びらが惜しみなく撒かれている。
その中心を、幾多の戦いを勝利に導いた英雄が、白馬に跨ってゆっくりと進んでいた。
絹糸のように滑らかな黒髪は、額にかかるように優しく流れ、彼の穏やかな表情を縁取っている。
切れ長な彼の瞳は、血の色を思わせるほど鮮やかな赤色をしているが、その眼差しは常に優しさに満ちており、まるで温かい炎のように人を包み込んでいると錯覚するほどだ。
沿道からは「英雄様!」と叫ぶ声、涙を流しながら手を振る人々、そして歓喜の歌が湧き上がり、その声援はまるで巨大な波のように彼を包み込む。
彼はその声に応えるように、穏やかな笑みを浮かべ、時折片手を上げて応えていた。その姿は、まばゆいばかりの希望そのものだった。
(ああ……なんて、美しいのでしょう)
沿道の人々の一人であったわたし——セレフィアは、英雄の姿を見て思わず息をついた。
戦争を勝利へと導いた英雄シルヴァード様。前線で戦い、数で圧倒的に不利な状況だった戦場で、たった一人で敵の主力部隊を撃破し、敵の司令官を討ち取った。ヴァリアント王国を勝利に導いた英雄で、その容姿の美しさも相まって、『紅の聖騎士』と呼ばれている。
「英雄様、万歳!」
「はあ、なんてかっこいいの……」
「聖女様と英雄様が並ぶと、まるで絵画のようね」
「聖女様、万歳!」
英雄を讃える声が相次ぐ中、そういった呟やきが聞こえてきた。わたしはその声につられるようにそちらに目を向ける。
いつの間にか馬から降りた英雄様は、隣に可憐な少女を連れている。柔らかな金髪は黄金の糸のように輝き、光を受けてきらめいており、桜の花びらのように淡い桃色の瞳を持つ美少女だ。
彼女はリーリア。戦場で傷ついた兵士たちを癒してきた聖女だ。歴代の中で、一番の治療魔法の使い手と言われている。
確かに、二人が並んでいる姿は絵画の一場面のようだ。英雄と聖女、これ以上ないほどのモチーフだろう。
とてもお似合いの二人。死線を乗り越えた二人は、深い絆で結ばれているのだろう。
(きっと……彼は、わたしとの約束なんて、覚えていないのでしょうね)
まだ幼かったわたしとシルヴァード様が交わした、子供らしい約束。
わたしだけがずっと、引きずっている。
「ねえ、セフィ」
少年は少し照れたように、でも真剣な声で言った。
「大きくなったら、結婚しよう。セフィを、お嫁さんにしたい」
少女はぱちくりと目を瞬かせ、その小さな顔を赤らめた。
「お嫁さん……?」
「うん そうだよ。ずっと一緒にいたいんだ。結婚したらずっと傍にいられるし、毎日一緒に遊べるよ!それに……」
少年は言葉を探すように、指先で地面をつつきながら続けた。
「それに、君の笑顔が一番好きだから!」
少女は、その言葉に心を奪われたように、少年の顔を見つめ返した。そして、少しはにかみながら答えた。
「うん! 大きくなったら、シルさまと結婚する!」
二人は見つめ合い、小さな手と手をぎゅっと握りしめた。その幼い約束は、未来への希望に満ちた輝きを放っていた。
周りで遊んでいた小鳥たちのさえずりが、まるで二人の小さな誓いを祝福しているように響いた。
◇ ◇
「英雄シルヴァード様、万歳!」
「我が国の英雄様!」
王都の大通りは、歓喜に沸く人々で埋め尽くされていた。色鮮やかな旗がはためき、通りには花びらが惜しみなく撒かれている。
その中心を、幾多の戦いを勝利に導いた英雄が、白馬に跨ってゆっくりと進んでいた。
絹糸のように滑らかな黒髪は、額にかかるように優しく流れ、彼の穏やかな表情を縁取っている。
切れ長な彼の瞳は、血の色を思わせるほど鮮やかな赤色をしているが、その眼差しは常に優しさに満ちており、まるで温かい炎のように人を包み込んでいると錯覚するほどだ。
沿道からは「英雄様!」と叫ぶ声、涙を流しながら手を振る人々、そして歓喜の歌が湧き上がり、その声援はまるで巨大な波のように彼を包み込む。
彼はその声に応えるように、穏やかな笑みを浮かべ、時折片手を上げて応えていた。その姿は、まばゆいばかりの希望そのものだった。
(ああ……なんて、美しいのでしょう)
沿道の人々の一人であったわたし——セレフィアは、英雄の姿を見て思わず息をついた。
戦争を勝利へと導いた英雄シルヴァード様。前線で戦い、数で圧倒的に不利な状況だった戦場で、たった一人で敵の主力部隊を撃破し、敵の司令官を討ち取った。ヴァリアント王国を勝利に導いた英雄で、その容姿の美しさも相まって、『紅の聖騎士』と呼ばれている。
「英雄様、万歳!」
「はあ、なんてかっこいいの……」
「聖女様と英雄様が並ぶと、まるで絵画のようね」
「聖女様、万歳!」
英雄を讃える声が相次ぐ中、そういった呟やきが聞こえてきた。わたしはその声につられるようにそちらに目を向ける。
いつの間にか馬から降りた英雄様は、隣に可憐な少女を連れている。柔らかな金髪は黄金の糸のように輝き、光を受けてきらめいており、桜の花びらのように淡い桃色の瞳を持つ美少女だ。
彼女はリーリア。戦場で傷ついた兵士たちを癒してきた聖女だ。歴代の中で、一番の治療魔法の使い手と言われている。
確かに、二人が並んでいる姿は絵画の一場面のようだ。英雄と聖女、これ以上ないほどのモチーフだろう。
とてもお似合いの二人。死線を乗り越えた二人は、深い絆で結ばれているのだろう。
(きっと……彼は、わたしとの約束なんて、覚えていないのでしょうね)
まだ幼かったわたしとシルヴァード様が交わした、子供らしい約束。
わたしだけがずっと、引きずっている。
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