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第9話 英雄様は女嫌い……?
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「わ、わたしが傍にいたらいいのですか? リーリアじゃなくて?」
「どうしてリーリアが出てくるの?」
シルヴァード様は首を傾げてそう言った。その笑みには、「こいつは何を言っているのだろう」という色が滲んでいる気がする。
「セレフィアに膝枕してもらいたい」
「ひ、ひざまくらですか?」
彼は立ち上がって、わたしの手を取った。彼に手を引かれて立ち上がると、温かい感触に包まれた。
(……シルヴァード様に、抱きしめられている)
そう脳が判断した瞬間、顔に熱が集まった。どうして彼は、わたしにこんなことを……。
「セレフィアは抱き心地がいいね。ずっと抱きしめていたい」
戦場から帰ってきた兵士の中には、人肌に触れることを嫌がる人もいる。シルヴァード様はその点、大丈夫ということなのだろうか。彼に抱きしめられたことが衝撃すぎて、逆に冷静になってきた。
「シルヴァード様……。こういったことは、あまり……」
「だめ? でも、こうしていると、とても落ち着く。もしかしたら、僕も正常に戻るかも」
そう言われると、だめだと言いづらい。しかし、わたしたちは未婚の男女だ。この治療室は外から誰にも見られることはないが、万が一扉が開けられてこの場面を見られてしまう可能性を考えると、あまりよろしくない。
シルヴァード様にはたくさんの婚約の打診が来ているだろうし、妙な噂の波風を立てるわけにはいかない。
「僕がこうやって女性に触れて大丈夫だったのは、セレフィアが初めてだよ」
「女性が苦手なのですか?」
「うん。匂いがきついし、僕を見る目が嫌い。殺意はないけど、殺意の方がましだと思えるくらい」
シルヴァード様は女性嫌い、という新しい情報を得ることができた。それなら最初から女であるわたしが相手をしない方が良かったのではないかと思ったが、彼の言葉から、わたしのことは大丈夫だということなのだろう。わたしは女として見られていないのか、もしくは別の理由があるのか。
彼はわたしの肩にぐりぐりと頭を擦りつけている。まるで犬のような仕草だ。微笑ましく感じ、思わず彼の頭を撫でてしまった。
すると、彼はばっと顔を上げて、わたしの手を掴んだ。
「申し訳ありません!」
しまった。勝手に体に触れてしまうことは、良くないことだった。わたしは謝罪しながら彼から離れようとするが、片手を腰に回されていて動けない。
「申し訳ありません、急に触ってしまって」
「……違う、驚いただけだから。嫌だったとかじゃない。嫌じゃないから、もっと触ってほしい」
シルヴァード様はにこりと笑みを浮かべ、わたしの手を掴んだままわたしの体を更に引き寄せた。彼と密着してしまい、全身が熱を帯びる。
手が解放されて少し安心していたら、急に頭に手が乗せられた。びくり、と体を揺らしてしまうが、彼は全く気にしていないようだ。
「セレフィアの髪はふわふわで、気持ちが良い」
「は、恥ずかしいです……」
「セレフィアの顔、真っ赤。ふふ、かわいい」
(か、かわいい……!?)
顔を覗き込まれ、わたしは手で自分の顔を隠すことしかできない。すごく情けない顔をしているだろう。こんなことをされたら、誰だって真っ赤になると思う。シルヴァード様の低音の声が体に響いて、わたしの脳が破壊されてしまうそうだ。
「シルヴァード様! お戯れはこのくらいにしましょう。ひ、膝枕ですよね、分かりました。それであなたが眠ることができるというのであれば、喜んで協力します」
患者が治療者に依存する、ということはよくあることだ。シルヴァード様の行動も、それが原因だろう。
わたしの言葉に、シルヴァード様は少しだけむっとした顔をしたが、すぐに離れてくれた。
「膝枕、してくれるんだ。やった」
彼は嬉しそうに笑っている。それを見ていると、これが正解だったと思えた。
「どうしてリーリアが出てくるの?」
シルヴァード様は首を傾げてそう言った。その笑みには、「こいつは何を言っているのだろう」という色が滲んでいる気がする。
「セレフィアに膝枕してもらいたい」
「ひ、ひざまくらですか?」
彼は立ち上がって、わたしの手を取った。彼に手を引かれて立ち上がると、温かい感触に包まれた。
(……シルヴァード様に、抱きしめられている)
そう脳が判断した瞬間、顔に熱が集まった。どうして彼は、わたしにこんなことを……。
「セレフィアは抱き心地がいいね。ずっと抱きしめていたい」
戦場から帰ってきた兵士の中には、人肌に触れることを嫌がる人もいる。シルヴァード様はその点、大丈夫ということなのだろうか。彼に抱きしめられたことが衝撃すぎて、逆に冷静になってきた。
「シルヴァード様……。こういったことは、あまり……」
「だめ? でも、こうしていると、とても落ち着く。もしかしたら、僕も正常に戻るかも」
そう言われると、だめだと言いづらい。しかし、わたしたちは未婚の男女だ。この治療室は外から誰にも見られることはないが、万が一扉が開けられてこの場面を見られてしまう可能性を考えると、あまりよろしくない。
シルヴァード様にはたくさんの婚約の打診が来ているだろうし、妙な噂の波風を立てるわけにはいかない。
「僕がこうやって女性に触れて大丈夫だったのは、セレフィアが初めてだよ」
「女性が苦手なのですか?」
「うん。匂いがきついし、僕を見る目が嫌い。殺意はないけど、殺意の方がましだと思えるくらい」
シルヴァード様は女性嫌い、という新しい情報を得ることができた。それなら最初から女であるわたしが相手をしない方が良かったのではないかと思ったが、彼の言葉から、わたしのことは大丈夫だということなのだろう。わたしは女として見られていないのか、もしくは別の理由があるのか。
彼はわたしの肩にぐりぐりと頭を擦りつけている。まるで犬のような仕草だ。微笑ましく感じ、思わず彼の頭を撫でてしまった。
すると、彼はばっと顔を上げて、わたしの手を掴んだ。
「申し訳ありません!」
しまった。勝手に体に触れてしまうことは、良くないことだった。わたしは謝罪しながら彼から離れようとするが、片手を腰に回されていて動けない。
「申し訳ありません、急に触ってしまって」
「……違う、驚いただけだから。嫌だったとかじゃない。嫌じゃないから、もっと触ってほしい」
シルヴァード様はにこりと笑みを浮かべ、わたしの手を掴んだままわたしの体を更に引き寄せた。彼と密着してしまい、全身が熱を帯びる。
手が解放されて少し安心していたら、急に頭に手が乗せられた。びくり、と体を揺らしてしまうが、彼は全く気にしていないようだ。
「セレフィアの髪はふわふわで、気持ちが良い」
「は、恥ずかしいです……」
「セレフィアの顔、真っ赤。ふふ、かわいい」
(か、かわいい……!?)
顔を覗き込まれ、わたしは手で自分の顔を隠すことしかできない。すごく情けない顔をしているだろう。こんなことをされたら、誰だって真っ赤になると思う。シルヴァード様の低音の声が体に響いて、わたしの脳が破壊されてしまうそうだ。
「シルヴァード様! お戯れはこのくらいにしましょう。ひ、膝枕ですよね、分かりました。それであなたが眠ることができるというのであれば、喜んで協力します」
患者が治療者に依存する、ということはよくあることだ。シルヴァード様の行動も、それが原因だろう。
わたしの言葉に、シルヴァード様は少しだけむっとした顔をしたが、すぐに離れてくれた。
「膝枕、してくれるんだ。やった」
彼は嬉しそうに笑っている。それを見ていると、これが正解だったと思えた。
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